見出し画像

【Loggins and Messina】(1972) トロピカルな味わい西海岸ロックデュオ

今年の関東は桜の花が遅れたお陰で、春の訪れが昔に戻ったような気分を味わえました。やっぱり桜は4月が似合うなぁ、なんて思っていたらもう汗ばむ陽気。アメリカ西海岸のロックが聴きたくなってきました。

私がイーグルスやドゥービー・ブラザーズ等を聴き親しんだ後、次のステップで感銘を受けたのがこのロギンス&メッシーナでした。南風のようなサウンドにパキパキと鳴るギター、そして2人のボーカルハーモニーとすべてが完璧で爽快なのです。

先日も窓を全開、洗濯物を干して、ビールを一杯、いやサイダーを一本やりながら本作を聴いていたところです。

ロギンス&メッシーナは、カントリーロックバンドのPocoのメンバーだったジム・メッシーナと新人のケニー・ロギンスが結成したロックデュオです。
Pocoを脱退後、コロムビア・レコードのプロデューサーに転身したジムが、当時頭角を表していたソングライターのケニーを売り出す為に、プロデュース、演奏、曲提供まで行ったことがすべてのキッカケでした。
1stアルバム【Sittin' In】(72年)は、kenny Loggins with Jim Messina 名義でしたが、2人のプロモーション活動も好評だったことから正式なデュオとして始動。本作はロギンス&メッシーナとして発表した1作目です。

彼等のサウンドは、溌剌としたカントリーロックが基調ですが、そこだけに留まらない様々な要素が魅力です。演奏力も他の西海岸バンドと比べてプロっぽい。何より親しみ易いポップな楽曲が楽しいですね。
一応、デュオではあるものの、音楽的な方向性も含めて主導権を握っていたのはジムだったはずです。キャリアも実績も豊富なジムがBuffalo Springfield、Pocoを経て、さらなる音楽的展開を試したユニットだったと言えるかもしれません。


(アナログレコード探訪)

米国コロムビア・レコードの初期盤

本作の米国盤、非常に音が良いです。この辺りもジムの手腕だったのかも…。
1970年以降、コロムビア盤はレーベルデザインに変化がない為、初期盤かを判断するのに規格番号のプリフィクスを見る必要があります。本作の場合は「KC」が初期盤(70年代初頭はKCが多い)。

実は私、本作の「KC」初期盤を2枚持っていますが、ワケあって手放せません…。最初に買った盤は各面のマトリックスが「1A/1B」。A面はすこぶる良音なのにB面「1B」にノイズが乗るイマイチ盤でした。
仕方なく買ったもう1枚は「1E/1G」。これはB面がすこぶる良音なのにA面「1E」が音圧のない残念盤…。
以来、本作は2枚の音の良い面を聴くという厄介なことになってます…。

CBSソニー発売の7インチ盤の2枚。右の「愛する2人」はアルバムとは別ミックスでした。
貴重な盤は、カフェ清澄白河ginger.Tokyoの高山さんから格安で。(何でも揃ってます!感謝!!)


Side-A
①"Good Friend"

跳ねたファンキービートが意表を突きます。当時のブラックミュージックからの影響を色濃く感じるジムの自作。躍動感あるベースライン、クラヴィネットの音色が黒いフィーリングを醸します。トレードマークのパキパキと弾くテレキャスターも健在。ジムの本気度を窺わす一曲です。


③"Your Mama Don't Dance"

古いロックンロールやブギの楽しさを教えてくれるのもロギンス&メッシーナの魅力。
全米4位の最大ヒット曲、邦題「ママはダンスを踊らない」。ジムとケニーで歌うアメリカのオールドスクールな若者の日常を描いた歌詞が面白い。映画《アメリカン・グラフィティ》の世界ですね。


Side-B
①"Thinking of You"

こちらは南風を浴びるような西海岸ポップス。ジム作による本盤からの2ndシングル。彼等らしいポップで優しい雰囲気が音楽の
楽しさを伝えてくれます。

⑤"Lady of My Heart"

単独作品を3曲提供するケニー・ロギンスですが、1分44秒のこの小品にも才能の片鱗がキラリと光ります。甘いメロディを情感豊かに歌い上げる姿が実にムードあります。

⑥"Angry Eyes"

ジム、ケニー共作のロックらしいダイナミズムで迫る7分半の大曲。S.スティルスのマナサスにも通じるスケール感です。2人のボーカルハーモニーも素晴らしい。が、山場は中間部の各メンバーのソロパート。緊迫感が高まります。ラテン、アフロの要素も混じり合ったバンドの自由な即興性が他にはない味です。

本作は全米16位まで駆け上がる彼等の出世作になります。ケニー・ロギンスという才能を活かしながら、きっとジムにとってはここ一番の勝負作だったのでしょう。
長く裏方にも居たジム・メッシーナだからこそ創り得た、プロの西海岸サウンドだったように思います。

いいなと思ったら応援しよう!