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【Stephen Stills 2】(1971) 多様な音楽性に挑むスティルス絶頂期の2ndアルバム

私が住んでいる神奈川県の北東部は、東京都の多摩地域と繋がる丘陵地帯です。坂が多いかわりに高台からの景色は美しく、遥か西には大山、丹沢の山々の稜線が広がり、晴天なら富士山も目に出来ます。冬の早朝、日に照らされた山肌を眺めながら聴くスティーヴン・スティルスは実に雰囲気がピッタリ。私の2月の定番儀式なのです。

1曲目の "Change Partners" 。ワルツのリズムで歌われるアコースティック調ですが、サビで唐突に4拍子に切り替わる凝った作りがスティルスらしい。ジェリー・ガルシアが弾くスティール・ギターが何とも夢見心地です。曲から浮かぶイメージは雄大な自然。ダイナミックな展開も清々しくCSN&Yには無い大らかさがありますね〜。

本作はCSN&Y解散後に発表したスティーヴン・スティルスの2ndアルバム。1stからたった半年後にリリースされたノリにノッていた時期の作品です。Buffalo Springfield時代からソウル、ブルース、カントリー、ジャズ、ラテン…と様々なジャンルを自分の音楽に取り込んできた人物だけに、本作でも得意のブレンド感覚が十二分に発揮されています。

スティルスのソロ作品って、ハッキリ言って最初の2枚が抜きん出ていたと思います。この2枚は姉妹編のようなところがあり、独特の「内省的」な佇まいに私は惹き込まれるんですよね。ダイナミックな表現にもゴスペルフィーリングを用いたりと、荘厳と言えるような音作りも魅力となっています。
CSN&Yとは切り離したパーソナルな一面をみせた本作ですが、当初は20曲余りを録音して2枚組の構想もあったようです。その中にはマナサスで録音される楽曲もあったとか。当時のスティルスは間違いなくクリエイティブなピークを迎えていたのでしょう。


(アナログレコード探訪)
〜米国盤と「準米国盤」を聴き比べてみました〜

(左)米国盤、(右)日本盤のジャケット
表面のザラついた加工や画質などほぼ同じ。
紙は日本盤の方が上質です。
アトランティックの米国初期盤
マト H?A?/C
ワーナー・パイオニアの日本盤(見本盤)
日本盤の内周部 マトD/D

私が持っているのはご覧の2枚。ワーナー・パイオニアの日本盤は、内周部に米国スタンパーからプレスしたことを示す手書きの刻印が有りました。つまり「準米国盤」です。音は当然良いのですが、正規の米国盤と比べたらどうなのか?聴き比べてみました。
結果、私の耳では米国盤の勝ち。音の響きや抜けが違っていました。日本盤はやや詰まった印象です。マトリクスの若さも関係しているでしょうが、同じパターンで他の盤を比べてもやっぱり米国盤の方が良いのです。アナログって不思議、、。

リタ・クーリッジを想うのか。雨は降りしきる…。


Side-A
③ "Fishes and Scorpions"

静かな歌い出しから徐々に盛り上がるこの時期のスティルスらしい作品。中盤から差し込んでくるリードギターはエリック・クラプトン。ゲスト参加では冴えたソロを聴かせることで定評のあるクラプトン笑。ここではクリームを彷彿とさせるプレイに心躍ります。

④ "Sugar Babe"

本作で私が一番好きな曲です。スティルスがリタ・クーリッジに捧げたとも聞きますが、オルガン、ピアノで紡いでいくゴスペルライクな空気が神々しい。冷たくて崇高な佇まい……冬の朝に浸っていたい一曲です。

⑤ "Know You Got to Run"

ドブロギターに持ち替えて弾き語るブルース。険しい山岳地方で代々歌い継がれてきた伝承歌…と言ったら信じてしまいそうな原始的な響きです。しかしギターが上手い!

⑥ "Open Secret"

ゴスペル的な手法でダイナミックに迫る大作。バックのコーラスと相まって厳かな曲調はなかなか圧巻です。後半はラテンパーカッションのソロも登場してきて、この後のマナサスの伏線とも言える展開ですね。

Side-B
② "Singin' Call"

内省的な語り口がこれまた沁みるアコースティックナンバー。これも私大好きです。山あいの頂上で、スティルスがギターを弾きながら静かに歌い上げる…そんなイメージ。例えるなら本作のジャケットの見開き写真でしょうか↓。きっと大自然はスティルスの活力、創作意欲の源だったのでしょう。

③ "Ecology Song"

当時隆盛したシカゴ、BSTなどのブラスロックから影響を受けた一曲。本作でスティルスはメンフィスホーンズを起用して、大胆なブラスセクションのアレンジにも挑戦しています。彼のこうしたニュー・ロック的な感性は今ではちょっと古く聴こえるかもしれませんが…それでもカッコいい。

本作発表後、メンフィスホーンズを従えたソロツアーをおこなったスティルスは、その後クリス・ヒルマンと出会いマナサスを結成します。実力者らしく自信に満ち溢れ、ロックシーンを牽引していたこの時代のスティルスが一番輝いていたように思いますね。私が痺れる頃のスティルスです。

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