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【Climbing!(勝利への登攀)】(1970)Mountain 知性と野性を孕んだ米国ハードロック
ブリティッシュハードロック程ではないにしろ、アメリカにも60年代末から70年代初頭に個性的なハードロックバンドが登場しています。マウンテンもそんなバンドの1つです。
映像、画像などで観ると巨漢のギタリスト、レズリー・ウェストの存在感はまさしくバンド名そのもの!
元々はクリームのプロデューサーだったフェリックス・パパラルディが、ローカルバンドにいたレズリー・ウェストに注目したところから関係が始まったようで、ソロアルバム【レズリー・ウェスト/マウンテン】(69年)をパパラルディがプロデュースした事がきっかけとなり意気投合、同名バンド結成へと繋がりました。
同年のウッドストックなど大舞台を経て、メンバーのラインナップも
・レズリー・ウェスト(ボーカル、ギター)
・フェリックス・パパラルディ(ボーカル、ベ ース)
・スティーヴ・ナイト(キーボード)
・コーキー・レイング(ドラム)
の4人が揃って1970年にアルバムデビュー。その1stアルバムが本作です。
マウンテンは当時の米国には珍しく、ハードロックにクラシック音楽の技法を取り入れたサウンドを聴かせるなど、なかなか知性を感じるロックバンドだったと思います。
本作でもエッジの立ったハードロックと、クラシカルな音楽性を掛け合わせた、混沌とした中にも優美さのあるサウンドを聴かせています。
・米国盤レコード
US盤。右下にあるwindfall とはマウンテンのジャケットによく見掛けますが、フェリックス・パパラルディが1969年に設立したレコード会社の名前です。
クレジットを見ると、米国コロムビア・ピクチャーの傘下で、配給はベル・レコード。
アートワーク、写真はパパラルディ夫人のゲイル・コリンズの作品です。
この方、マウンテンの一連のアートワークだけでなく、かなりの数の作詞も担当しており、マウンテンの陰の立役者でもあります。
一目見て判る美しい画風は、バンドの知性や様式美をビジュアルで訴えますが、後にパパラルディを銃殺(83年)した事を思うと、どこか暗い陰を感じて怖いものがあります。
アナログ盤の音ですが、マウンテンはどれもそんなに良くない気がします。
この時代のハードロックなのでクッキリした音ではないですが、中低域がドンッと出てくる太い塊のようで音は迫力充分です!
裏ジャケットにはパパラルディ、レズリー2人の写真。この頃はまだ仲良さそうです。
各曲クレジットもしっかりあります。
【Climbing!(勝利への登攀)】(1971)
A-①「Mississippi Queen」
②「Theme From an Imaginary Western」
③「Never In My Life」
④「Silver Paper」
B-①「For Yasgur's Farm」
②「To My Friend」
③「The Laird」
④「Sittin' On a Rainbow」
⑤「Boys In The Band」
A-①はシングルヒットしたマウンテンの代表曲。コーキー・レイングの叩くカウベルに続く野太いギターリフが印象に残ります。
♪みぃししっぴぃ くい〜ん!とレズリーのルックスさながらの豪快な歌とギターがカッコいいですね〜。
1970年のライブ映像がありました。やたらと勿体ぶったイントロですが、歌が始まるとレズリーもギア全開でパワフルです!
A-②は個人的に好きです。ジャック・ブルースとピーター・ブラウン作。
このコンビが書いたクリームの「ホワイト・ルーム」同様にクラシックの雰囲気を取り入れた優雅なメロディが印象的です。こういった路線はパパラルディが目標としていた所だったのでしょうね。
歪んだギターとオルガン、メロトロンが包み込む混沌としたサウンドが、何処か甘美なイメージを広げていきます。ジャック・ブルースのソロ作にも収録されてますが、このマウンテン版のボーカルはパパラルディ。
A-③は再びハードな曲へと、この序盤3曲の流れが完璧です。レズリーのエッジの立ったギターリフも決まりまくり!生きる山脈の如き雄叫びです!!
クレジットには複数の名前がありますが、こういった硬質なハードロック曲はレズリー主導で作られたのではないかと思います。ノリも良くカッコいい!
B-①はウッドストックの会場に使われた「ヤスガー氏の農場」をタイトルにしたウッドストック回想曲。ハードな中にもメロディックな要素があります。歌はパパラルディ。
B-②は何とレズリーが12弦アコギのみで聴かせるフォーキーなインスト。
まるでジミー・ペイジがツェッペリンの3枚目で弾きそうな英国っぽい佇まいにビックリ!こんなギターも弾くんですね〜。
続くB-③はその雰囲気を継いだ少しオリエンタルなアコースティック・ボーカル曲。
以後のマウンテンでこういったアプローチは無かっただけに貴重な2曲です。
B-⑤はマイナー調な歌い出しから転調、さらに展開して広がっていく知的さが伝わる1曲。このバンドが目指した理論派ハードロックという感じがして、次作のプログレ的な音作りへの予兆とも取れます。歌はパパラルディ。オルガンと歪んだギターの音のブレンドが混沌としてますが美しい響きです。
こうしてアルバムを聴いていると、やっぱりフェリックス・パパラルディ主導のバンドだったんでしょうね。
見かけではレズリー・ウェストの豪快なルックスに目を奪われますが、やはりプロデューサーです。
クリームでの経験を踏まえたパパラルディにとっては、レズリー・ウェストという才能を活用しながら新しい音作りをしていくことが狙いだったのでしょう。
これ以後パパラルディ色が強くなっていきますが、本作はこの2人の持ち味がバランスよく活かされた内容になってます。
楽曲のクオリティも高く、個人的にはマウンテンのスタジオ盤はこのデビュー作が1番良いんじゃないかなと思ってます。