【Velvet Underground and Nico】(1967) N.Y.アンダーグラウンドの退廃的な美学
少し前にNHKの映像の世紀で、チェコスロバキアの民主化への原動力にヴェルヴェット・アンダーグラウンドの作品が一役買ったという主旨の番組がありました。
ソビエトからの軍事侵攻に耐えながらも、チェコは1989年に悲願の民主化に成功するのですが、その立役者となったハヴェル大統領はかつて劇作家が職業で、米国での初上演の際ニューヨークのグリニッジビレッジで買ったヴェルヴェッツのレコードを聴いて衝撃だったそうです。
この世にこんな自由な芸術があるものかと西側文化にショックを受け、その後の民主化運動への起爆剤になったとか。
この民主化は後にビロード革命ともヴェルヴェット革命とも呼ばれたそうです。
番組の最後では、クリントン政権の時代に、ホワイトハウスへ招かれたハヴェル大統領を迎えたのが、何とルー・リード本人の生演奏だったというオチがあり、実際の映像も残っており、なかなか興味深いドキュメンタリーでした。
発売当時は3万枚しか売れなかったという本作【ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ】。
今ではバナナのジャケットと共にロックの名盤として超有名ですが、当初は殆ど評価されなかったようです。そんな私も昔初めて聴いた時はワケが解りませんでした💦
今でも得意というワケではないのですが、それでもこのアルバムの持つ退廃的な美しさには底知れぬものを感じます。
ルー・リードとジョン・ケイルの二人の才人が表現した暴力的な衝動と前衛的な世界。そこにニコの儚い美しさが加わって、ヨーロッパ的な美意識も垣間見える辺りが素敵です。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを見出したのは、ジャケットデザインも担当したアンディ・ウォーホル。自身が企画するイベントに出演させる一方、支援をする条件として元々4人だったバンドに、ドイツ人でモデルの女性ニコを強引に加入させたようです。
本作は1966年初夏には録音がほぼ済んでいたにも拘らずレコード会社との契約が難航。
ドラッグや同性愛を歌詞にした彼らの過激な音楽は当然理解されにくく、コロムビア・レコードを始め、アトランティック、エレクトラにもキッパリ断られます。
結果的にMGMレコードの傘下、ヴァーヴとの契約に漕ぎつけるのですが、ジャズの名門レーベルからの発売となったのはなかなか興味深い話です。
(アナログレコード探訪)
Side-A
①"Sunday Morning" (Reed,Cale) 2:53
②"I'm Waiting for the Man" (Reed) 4:37
③"Femme Fatale" (Reed) 2:35
④"Venus in Furs" (Reed) 5:07
⑤"Run Run Run" (Reed) 4:18
⑥"All Tomorrow's Parties" (Reed) 5:55
Side-B
① "Heroin" (Reed) 7:05
②"There She Goes Again" (Reed) 2:30
③"I'll Be Your Mirror" (Reed) 2:01
④"The Black Angel's Death Song" (Reed,Cale) 3:10
⑤"European Son" (Reed,Cale,Morrison,Tucker) 7:40
A-①"Sunday Morning"
チェレスタの音色が印象的な魅惑のポップ・ナンバー。本作にヒット性ある曲を要請されたリードとケイルが追加で書いて、最後に収録されたようです。ひたすら美しいですね。
確かにこの曲が冒頭にあるか無いかで、作品の印象がだいぶ変わってきます。
A-②"I'm Waiting for the Man"
リードのロックンロールな感性が丸出し!
D.ボウイもライブで取り上げたロッククラシックです。ガレージっぽいラフな演奏がカッコイイ!
A-③"Femme Fatale"
美しすぎる!A-①と並ぶリードの卓越したソングライティングを感じさせる名曲です(^^)
ボーカルはニコ。歌手としてはほぼ素人ですが、彼女の冷たい歌声はルックスと相まって何とも言えない破滅的な美しさが曲に宿ります。
A-⑥"All Tomorrow's Parties"
こちらもニコがボーカルの陶酔感ある一曲。少しラーガ風な旋律のリードギターに対してワンコードで繰り返すリズム楽器。ビートルズの"Tomorrow Never Knows"のような手法ですね。サイケな雰囲気に高揚してきます。
B-① "Heroin"
エレキギターとヴィオラをバックにルー・リードが弾き語る、本作でもB-④と共にかなり前衛的な一曲です。歌いまわしなどはディランからの影響も感じますね〜。
中盤から軋むようなジョン・ケイルの不協和音のヴィオラが耳をつんざくようで不気味!
フリーフォームな曲だけに、後のライブでもアレンジを変えながら頻繁に取り上げたリードの代表曲です。
後のルー・リードの退廃的な魅力もすでに発している本作。
毎日聴くのは私は正直キツいですが💦定形に囚われない姿勢からは、ロック黎明期のアンダーグラウンドならではの美意識を感じます。フリーキーな狂気がアートな1枚です。
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