【The Paul Butterfield Blues Band】(1965) ホワイト・モダン・ブルースの本格派登場!
1965年秋に発表されたポール・バターフィールド・ブルース・バンド(以下PBBB)のデビューアルバム。今聴いてもホトばしるようなブルース愛に満ちたシビれる作品ですね〜。
当時は英国ではブルースのカバーが盛んでしたが、本国米国ではブルースはまだ黒人がやる音楽というような時代。
そんな頃に、本場シカゴから白人中心の叩き上げが出てきたわけですから、相当な衝撃だったのではないでしょうか?!
デビュー前にはギターのマイク・ブルームフィールドがボブ・ディランの【追憶のハイウェイ61】のセッションに参加。
1965年夏のニューポート・フォーク・フェスティバルにバンドは出演。そしてディランが初めてエレキギターを抱えた伝説の同ステージにメンバー2人がバックを務めたりと、当時の彼らは話題性も充分。注目の的だったのでしょうね。
何とニューポートでの彼らの映像がありました!ステージを観たというマリア・マルダーらしき姿もあります。貴重ですね。
さて本作は発表までにちょっとした経緯がありました。
シカゴのクラブシーンで熱狂的な彼らに声を掛けたのが、エレクトラ・レコードの社長ジャック・ホルツマン。
エレクトラはそれまでフォーク中心でしたがエレクトリックバンド移行への第1号としてPBBBに白羽の矢が立ったようです。
1964年暮れに1回目のスタジオセッションを録音。しかしプロデューサーのポール・ロスチャイルドが納得いかずお蔵入り。
急遽ライブレコーディングを試みますが、これも失敗。
結局、翌年夏に2度目のスタジオ録音を行ない本作は完成に至ったとのことです。
ブルースの古典を取り上げつつも、バターフィールドのハープ、ブルームフィールドのリードギターをフューチャーした内容はまさしく新時代モダンブルースの音。
けどそれ以外の楽器は全て左スピーカーに纏められたステレオミックスなんですよね。
そんな時代とはいえエレクトラがこの2人を売り物にしようという意図が感じられます。
ちなみに1回目の録音はエレクトラが発表したコンピレーション盤【ホワッツ・シェイキン】(66年)の中で5曲聴くことができます。(1995年には【ロスト・エレクトラ・セッションズ】として拡張版で発表)
このコンピレーション盤は後年、むしろエリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッド、ジャック・ブルースが参加したパワー・ハウスなる即席バンドを収録した貴重盤として有名になりましたね。
(アナログレコード探訪)
〜マスターテープ10年説??〜
昔、中古輸入盤LPで買ったのですが、CD再発ブームで売ってしまい今でも後悔してます。
数年前に買い直しました。
米国盤の再発です。本作は1965年発売なので、6〜9年の後発盤となります。
初回盤レーベルがギタリスト(66年まで)。
以後ゴールド(66〜69年)、赤色BIG"E"(69〜70年)、蝶Wロゴ無し(70〜74年)、蝶Wロゴ有り(75〜79年)と変遷していきます。
これ音イイです。本作はこの蝶レーベルまでなら悪くないように思います。3桁と安価!
初期盤ほど音が良いのは当然ですが、そこはコンディションと金額次第ですね。
これ以降の80年代のエレクトラ再発盤は、60年代の作品(ドアーズ、ラブなど)が急激に音がショボくなってました。
磁気マスターテープは大体10年位で急に劣化するという話も聞きますから無理もないかもしれません。
〜なかなか良音の日本ビクター盤〜
米国蝶レーベルと同じくらいに思えたのが、こちら日本ビクター再発盤。
ボーカルの鮮度が落ちますが、スピーカーから音が広がっていく感じは蝶レーベル以上。帯無しだったので安かったです。
日本盤はその後、ワーナー・パイオニアに版権が移り「青春秘蔵盤」シリーズ(P-8605E)で75年頃に再発されてますが、私は未聴です。
2000年代にはSUNDAZED復刻のアナログ盤もありますがこれは酷かった。かなり音が潰れているんですよね。近年プレス盤というのはどうも怪しいです。
Side-A
① "Born in Chicago" (Nick Gravenites) 2:55
② "Shake Your Money-Maker"(Elmore James) 2:27
③ "Blues with a Feeling" (Walter Jacobs) 4:20
④ "Thank You Mr. Poobah" (Mike Bloomfield, Paul Butterfield, Mark Naftalin) 4:05
⑤ "I Got My Mojo Working" (Preston Foster) 3:30
⑥ "Mellow Down Easy" (Willie Dixon) 2:48
Side-B
① "Screamin'" (Mike Bloomfield) 4:30
② "Our Love Is Drifting" (Paul Butterfield, Elvin Bishop) 3:25
③ "Mystery Train"(Junior Parker, Sam Phillips) 2:45
④ "Last Night" (Walter Jacobs) 4:15
⑤ "Look Over Yonders Wall" (James Clark) 2:23
のっけ3曲の流れが好きなんですよね〜。
A-①はPBBBの代名詞のような曲。ブルースハープからして本場仕込みです。疾走するA-②はノリが最高!ブルームフィールドのスライドギターが攻撃的です(^^)
続くA-③はブルームフィールドのタメの効いたソロに呼応するバターフィールドのハープが秀逸。また本作はマーク・ナフタリンのオルガンがお洒落なアクセントですね。
途中で楽器の配線が拾ったようなノイズが左スピーカーで聴こえるのですがそんなライブ感にシビレます(^^)
A-⑤は黒人ドラムのサム・レイがボーカル。マディ・ウォーターズのバージョンに忠実に "ブルぅるぅぅ~、ワァーキン!"と唇を震わせて歌う辺りにブルースへの敬意を感じます。
何とも気風のいいサウンド。ピュアで勢いのあるホワイト・モダン・ブルースです〜!