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【Nightmares…and Other Tales from the Vinyl Jungle(悪夢とビニール・ジャングル)】(1974) J.Geils Band アトランティック期の傑作スタジオ盤

J.ガイルズ・バンドといえば広く知られているのは1982年のNo.1ヒット「堕ちた天使」。

彼らにとってキャリア史上最大のヒット作となり、80年代を代表する曲として、後に日本でもTV-CMに使われたので耳馴染みの方も多いかと思います。

しかしながら、彼らが真の意味で本領を発揮していたのは、何と言っても70年代のアトランティック時代。こればかりは譲れません。

黒人のブルース、R&Bを愛して止まない彼らが、それらカバーと男気溢れるオリジナル曲でロックシーンに真っ向勝負した時期です。

アトランティック時代には7枚のスタジオ作品を残していますが、その中でも私が最高傑作だと信じているのが本作、邦題「悪夢とビニール・ジャングル」です。

コアなファンの方には、寧ろ直球が売りだったデビュー間もない頃が人気ですが、優れた楽曲群と少々のギミックを使った本作こそが、彼らのスタジオ盤の傑作だと広くおススメしたいです。

米国アトランティック・レコードのUS盤です。彼らにとってスタジオ5作目(ライブ作品加えると6作目)。

何やらオカルトなイラストジャケットですが、タイトルの ‘’悪夢‘’ をイメージしたものかと思われます。

メンバーは、ボーカル、ギター、ブルースハープ、鍵盤、ベース、ドラムの6人組。
敬愛するマディ・ウォーターズなどのシカゴバンドブルースを意識した編成です。

ボストン出身で、後にデトロイトが活動の本拠地となり、ボーカルのピーター・ウルフのステージパフォーマンスと熱いバンド演奏で人気を集めていきました。

US盤レーベルは「ATLANTIC」のロゴが大きくあしらわれたタイプ。

J.ガイルズバンドの作品は、どれも中低域を強調したモッサリした音ですが、本作は割とバランスが良く、太い音が楽しめます。

それまで以上にアレンジが多彩なので、プロデューサーのビル・シムジックもしっかりと厚味のあるサウンドに仕上げた印象です。

輸入盤のリマスターCDで聴くと、アナログに比べてキンキンと上ずった音に聴こえました。
私も長らくCDで聴いていたのですが、アナログの音に慣れてしまうと少々うるさく聴こえてしまいます。この辺りは好みですね。


【Nightmares … and Other Tales  from the Vinyl Jungle】(1974)

A-①「Detroit Breakdown」
 ②「Givin' It All Up」
 ③「Must of Got Lost」
 ④「Look Me In the Eye」
 ⑤「Nightmares」

B-①「Stoop Down # 39」
 ②「I'll Be Coming Home」
 ③「Funky Judge」
 ④「Gettin' Out」

全9曲中8曲をピーター・ウルフと鍵盤のセス・ジャストマンが共作。このバンドの黄金コンビです。

まずはファンキーでロッキンなA-①。これは是非オススメします!ピーター・ウルフのシャウト気味なボーカルも熱い、バンドを代表する1曲です。カッコイイの一言!!

本拠地デトロイトを歌った、この猥雑でタフな感覚のロックンロールは彼らにしか出せない味だと思いますね〜。

A-②は得意のストレートなブキナンバーですが何処かセンチメンタルな感触も。私大好きな曲なんです!
ギター、ブルースハープ、鍵盤で織りなすリフが秀逸。脇のホーンセクションが雰囲気を盛り立てます。


そしてシングルヒットしたA-③(全米12位)。ここまでのアルバムの流れが素晴らしい!

少々青臭い、これまた彼らがよくやるミディアムナンバーですが、この何処までもピュアでけれん味の無いのがJ.ガイルズバンド。

男クサさの中に漂う哀愁がたまりません!!
一緒に歌いたくなります笑

ところで、J.ガイルズバンドの売りで忘れてならないのが、マジック・ディックの吹くアンプリファイドされたブルースハープです。

B-①はのっけからブロウしまくり!そこから得意のブキのビートでロックンロール!!
バンド一丸となった演奏につい腰が動いてしまいそう〜!サイコーです。

後半は覚えやすいコーラス部分もあって、楽曲としても良く出来てます。

アフロな感触が新鮮で面白いA-⑤など、本作は遊び心も随所にあるのですが、B-②は何とタンゴのリズム!これが結構自分達のものになっていて笑えます。

とにかく聴いていて飽きさせない本作。
J.ガイルズバンドの作品の中でも屈指の内容だと思います。

作品を重ねるごとにこなれてきたポップセンスと、スタジオワークを上手に反映させたバラエティに富んだ傑作です。

J.ガイルズバンドのバタ臭さが苦手だという方にもおススメできるアルバムではないかと思いますよ!

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