一切の煩悩を防止する法門 中部#2 一切煩悩経
2023/02/14 に 中部#2 一切煩悩経 Sabbāsavasuttaṃ を読了しています。
一切の煩悩(漏、āsava)を防止する法門として、7つの方法により断たれるべき煩悩について、お釈迦様が解説されています。
sabbāsava-saṃvara-pariyāya はパーリ語辞典には、「一切漏防護の法門」とあります。「一切の煩悩から防護する教え」くらいの意味でしょうか。
sabba a. n. 一切の, すべて, 一切のもの
āsava m. 漏, 流漏, 煩悩, 酒
saṃvara m. 防護, 律儀, 摂護
pariyāya m. 異門, 法門, 教説, 部門; 理趣, 理由; 方便; 順序
7つの方法により立たれるべき煩悩
見(dassana)によって断たれるべき煩悩
正思惟と邪思惟について
苦集滅道(四諦)を正しく思惟する者には、三結(tīṇi saṃyojanāni)が断たれる(預流果)
三結
有身見(うしんけん、sakkāyadiṭṭhi)
疑(ぎ、vicikicchā)
戒禁取(かいごんしゅ、sīlabbataparāmāsa)
防護(saṃvara)によって断たれるべき煩悩
正しく観察して六根を防護する
六根: 眼根、耳根、鼻根、舌根、身根、意根
受用(paṭisevana)によって断たれるべき煩悩
正しく観察して四資具を受用する
四資具: 衣、托鉢食、住居、薬
忍耐(adhivāsana)によって断たれるべき煩悩
正しく観察してもろもろの身体の感受、罵倒・誹謗に耐え忍ぶ
寒さ、暑さ、飢え、乾きなど
回避(parivajjana)によって断たれるべき煩悩
正しく観察して悪しきもの、悪しき場所を回避する
強暴な象・馬・牛・犬
断崖・沼・溝など
悪友のような者、悪しき場所、托鉢地ではない場所
除去(vinodana)によって断たれるべき煩悩
正しく観察して悪しき不善の法を除去する
欲の考え(kāma-vitakka)、怒りの考え(vyāpāda-vitakka)、害意(vihiṃsā-vitakka)、悪しき不善の法(pāpaka akusala dhamma)
修習(bhāvanā)によって断たれるべき煩悩
正しく観察し、遠離・消滅・滅尽に基づく、棄捨に到る七覚支を修習する
「正しく観察して」は「paṭisaṅkhā yoniso」です。
paṭisaṅkhā [paṭisaṅkhāti の ger.] 観察して
yoniso adv. [yoni の abl.] 根源より, 根本的に, 如理に
正しく思惟し、何事も正しく観察して、[防護・受用・忍耐・回避・除去・修習]せよ、ということでしょう。
これら7つの方法によって煩悩が断たれた者は、あらゆる煩悩を防止して住む、渇愛を断った者、束縛を取り除いた者、苦の終わりを作った者である、とのことです。
パーリ文: tipitaka.org
片山訳: パーリ仏典 中部 根本五十経篇I 片山一良 (大蔵出版)
パーリ語釈: 増補改訂 パーリ語辞典 水野弘元 (春秋社)