怒りと不満は(心の)垢である 中部#5 無垢経 読了
2023/05/05 に 中部#5 無垢経 Anaṅgaṇasuttaṃ を読了しました。
二大弟子であるサーリプッタ長老とマハーモッガッラーナ長老による「垢 (aṅgaṇa)」についての問答です。サーリプッタ長老らしい論理的・分析的な表現が散見される経典です。
「垢」に相当するパーリ語 aṅgaṇa の語釈は以下の通りです。
[水野] aṅgaṇa 穢, 煩悩
[雲井] aṅgaṇa 塵, 汚水, 穢 (漢), 罪障 (漢)
サーリプッタ長老は「垢」について次のように説明します。
サーリプッタ長老は、「自分の思い通りにならない比丘」の例えを使って「垢」についてさらに説明します。
ある比丘に欲求が起こる
その欲求とは違う事が起こる
その比丘は「怒りの者」 (kupita)、「不満の者」 (appatīta)となる
[水野] kupita a. n. 怒った, 瞋恚の, 憤激の, 混乱, 動乱
[水野] appatīta a. 不満足の, 喜ばない
比丘に起こる欲求としては、「他の比丘達、比丘尼達、在家達は私のみを尊敬し、敬愛し、供養するであろう。」というようなものが複数挙げられています。
この「怒り」と「不満」の両方が「垢」であると説明されます。
比丘の状態を表した形容詞(過去分詞) kupita, appatīta の名詞にあたる単語が kopa, appaccaya です。
[水野] kopa m. 忿恨, 憤怒, 怒気
[水野] appaccaya n. 不満, 不機嫌, 不興, 憂悩
最後の文でお二人のことを、「大龍」(マハーナーガ, mahānāga)と表現しているのも素敵ですね。
パーリ文: tipitaka.org
片山訳: パーリ仏典 中部 根本五十経篇I 片山一良 (大蔵出版)
パーリ語釈 [水野]: 増補改訂 パーリ語辞典 水野弘元 (春秋社)
パーリ語釈 [雲井]: 新版 パーリ語佛教辞典 雲井昭善 (山喜房仏書林)
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