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パーリ経蔵 現代日本語訳(正田訳)のオンライン公開

2023年5月1日に、Twitter上で「アラナ精舎 経典ライブラリー」の開設がアナウンスされました。

経典ライブラリーには、正田大観氏によるパーリ経蔵の現代日本語訳がオンラインで公開されています。詳細は確認していないのですが、おそらく経蔵のすべてが翻訳されていると思います。これは間違いなく偉業といってよいでしょう。

長部、中部、相応部などのニカーヤ単位での日本語訳は電子書籍化もされていないことが多い状況において、オンラインでいつでもアクセスできることは非常にありがたいことです。早速、私もパーリ仏典読解のガイドとして利用させていただいております。

以下に日本語訳の例として、宝経第8偈からの抜粋をパーリ文とともに示します。

Yath'; indakhīlo paṭhaviṃ sito siyā
catubbhi vātehi asampakampiyo,

PTS版 Sn 40
  • indakhīla 帝柱, 境界標, 門柱 m. sg. nom.

  • catubbhi 四 num. ins. abl.

  • vātehi n. pl. ins. abl.

    • vāta m. 風, 身内風

すなわち、地に依拠したインダの杭(城門に立てられた標柱)が、
四〔方〕の風に揺らぐことなく存するように、

小部経典 スッタニパータ聖典(経集)
宝の経 第8偈から抜粋

正田訳の雰囲気がわかるのではないでしょうか。
( )で前の語の説明、 〔 〕で本文の補足が付与されています。

indakhīlo が「インダの杭(城門に立てられた標柱)」、catubbhi vātehi が「四〔方〕の風」と訳されています。

(catubbhi vātehi はそのまま読むと「四つの風」となり、よく意味がわかりません。)

他の方の訳を見ると、普通に「四方」と訳されています。そこをあえて、「四〔方〕」と訳すくらいに「可能なかぎりの逐語訳」を徹底されていることがわかるかと思います。(パーリ語の原文には「方」にあたる語はないということでしょう。)

「可能なかぎりの逐語訳」とのことなので、そのまま読んでいくには正直取っ付きにくいところがあります。しかし、パーリ文と対比しながら読む日本語訳としてこれほど心強いものはありません。

以下は凡例からの引用です。

訳文は意訳を避け、直訳体を採用。可能なかぎりの逐語訳を試み、原テキストの忠実な再現を心掛けた。これは、ブッダの言葉を未加工のまま提供するためのもの、別言すれば、パーリ語をそのまま日本語に置き替える訳し方であり、恣意的な翻訳を避けるためとはいえ、生硬な訳文とならざるをえなかった。かつまた、逐語訳の欠点を補うために〔 〕を多用する結果となり、見た目的にも違和感ある翻訳となってしまった。経典和訳に関しては複数の翻訳があるべきであり、その中の一つとお考えいただきたい。

アラナ精舎 経典ライブラリー 凡例

経典ライブラリーの公開と関連するのかは分かりませんが、2023年11月にKindle版、オンデマンド版の正田訳経典シリーズが絶版になるとのことです。電子書籍として紙の書籍として手元に置いておきたい方は、お早めに購入されるとよいでしょう。小部経典はすでに購入済みでしたが、清浄道論と相応部も追加購入しておきました。1巻1,000円程度とお手頃な価格です。


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