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【殺戮にいたる病】伏線だらけ?ちょいグロ(?)なミステリをあらすじつきでレビュー!

第16回は殺戮にいたる病/我孫子武丸です!前回のハサミ男に引き続き、ミステリ入門企画では度々取り上げられる本作をレビューします。

※尚、予告後にネタバレがあります。


1.基本データとあらすじ

1-1.基本データ

1-2.あらすじ

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。

冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。

Amazonより

2.主観的評点と向き/不向き

2-1.主観的評点

主観的評点は以下の通りです。

2-2.向き/不向き

向いている人
・新本格ミステリー作品が好きな人
・驚きのラスト/どんでん返しを楽しみたい人

向いていない人
・残酷/グロテスク描写が苦手な人
・サイコパス/シリアルキラー作品が苦手な人

3.ネタバレと感想

以下、核心の部分に触れておりますので未読の方はご注意ください。











3-1.犯人と動機

犯人は冒頭に提示された通り蒲生稔。稔は幼少期のトラウマから性的不能者になる。ゆえに連続殺人を犯すに至り、最後は実母を殺害し屍姦。

作品中では、殺人者の蒲生稔パート、息子を心配する蒲生雅子パート、捜査する樋口元刑事パートの三つが交代で描かれる。稔=息子と読めるように描かれているが、ミスリードを狙った叙述トリック。実際の稔は父親で雅子の妻。雅子の息子が伸一。

3-2.ネタバレ感想

いや〜まんまと叙述トリックに騙されました。コレは見破れませんでした。最初、"実は無関係なエピソードを3つのうち1個紛らせているんでしょ?"とか思っていたのですが全部繋がったエピソードでした。

本作をレビューの為に読み返してみました。作中の至る所に稔=父親と読み取らせないように描写に気をつけているのが伝わって作者さんの努力を感じました。

稔は大学教授、息子の伸一は大学生と言う設定なのですが、その設定でギリギリを突いているのが読み返すと笑えて来ます(良い意味で)。

例えば、作中の稔のセリフにこんなものが有ります。

「憲法?新田先生の?だったら出なくてもいいじゃない」出席を取らず、試験も楽勝だと言う事で伝説的なまでに有名な授業だった。(P.27)

文庫版P.27

学生が良いそうなセリフと見せ掛けて、教授である稔が言ってもギリギリ自然です。

また、作中で母親の雅子はこんな台詞を言います。

稔のいる東洋文化大は私大にしては入学試験が遅く、二月の下旬にある。それが終わる頃にはみんなが多少は暇になっている筈だから、二泊三日くらいどこかで旅行に行ったらどうだろう、と雅子は思いついた。

文庫版P.144

これ、客観的に見ると「息子の暇になる時期を検討している」風に見えますが、入学試験は生徒の休みには関係無く、夫の職業に関連していると読むのが普通です。でも100頁近く読むと、もう読者は叙述トリックに騙されているんですね。

文章も自分的には読み易かったです。オススメです。

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