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【春にして君を離れ】怖い毒親?映像化はされていないサスペンスの感想をレビュー(予告後ネタバレ)!

第18回は春にして君を離れ/アガサ・クリスティです!

ミステリ作家としてのアガサ・クリスティがメアリ・ウェストマコット名義で発表されたロマンティック・サスペンスをレビューします。

サスペンスがミステリかの判定は人によって異なるようなのですが、クリスティなのでミステリと判断しました。

※尚、予告後にネタバレがあります。


1.基本データとあらすじ

1-1.基本データ

1-2.あらすじ

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。

が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……

女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。

Amazonより

2.主観的評点と向き/不向き

2-1.主観的評点

主観的評点は以下の通りです。

2-2.向き/不向き

向いている人
・アガサ・クリスティの作品は抑えておきたい人

向いていない人
・ロジカルな謎解き、本格ミステリを楽しみたい人

3.ネタバレと感想

以下、核心の部分に触れておりますので未読の方はご注意ください。











3-1.犯人と動機

子どもたち3人を立派に育て上げたと自負するジョーン。バーバラ家への帰りの途中、学友のブランチに遭遇。あばずれ者の彼女の語りに順風満帆だと思っていた人生や良好だと思っていた家族との関係のほつれを思い出す。

記憶を掘り起こしていくにつれ、それらはジョーンの思い込みに過ぎなかった事が明らかになる。

牧場主になる夢を持っていた夫のロドニーを引き止め弁護士事務所の共同代表に押し込めた過去。娘の恋愛に介入して気まずくなった過去。いい男とロマンティックな情事に耽っていたつもりだったにも関わらず、その実遊ばれていた過去。子どもたちからは疎んじられていた過去。

最終的にジョーンは夫のいるイギリスへ還る。ジョーンは自分の不在の間の部屋の汚れや旅行先の居心地の悪さをロドニーに愚痴る。

ロドニーの「休暇もついに終わりか」という言葉の真意を掴みかねるジョーン。

更にロドニーは加えてこう言うのであった。
「プア・リトル・ジョーン(かわいそうなジョーン)」と。

3-2.ネタバレ感想

現代のどこかの家庭の母親に当てはまりそうなリアリティある主観の強さと意地悪な設定。こんな話が80年近く前に作られていた事に少し驚きました。ロマンティック・サスペンスでもありホラーにも括られるかもしれません。

人が記憶を振り返る時に自分に都合の悪い部分を削ぎ落として美化するプロセスを上手く表していると思います。

"自分からみた理想郷は他人からみた地獄"。認知の歪みをうまく作品にしていると思いました。

ほぼ、ジョーンの一人称の語りで300ページ描かれるので堅苦しくない所も読みやすくて良いと思いました。ところどころ挟み込まれる夫の結婚生活への諦念も秀逸がユーモアたっぷりで笑えます。

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