清澄白河の悲喜こもごも。
地下鉄の出入口、といえばみんな大好き清澄白河。というわけで今回は清澄白河駅のお話をしたいと思います。
まず清澄白河駅がなぜ話題になっているかと言いますと、大江戸線構内の通路の蛍光灯がランダム配置になっている、という特徴があるからです。それだけでなく、大江戸線ホームの壁面が一面メタリックの現代アートで覆われていたりとか、現代アートを感じる駅として話題に挙がる駅ですね。ちょうど東京都現代美術館の最寄駅でもありますし、それにマッチしていると紹介されることもあります。最近流行の某出入口脱出系ゲームみたいな感じもしますよね。
ところでこのデザインって、今作ってもあまりインパクトが無いかもしれませんよね。この駅ができた頃って、照明といえば蛍光灯で、蛍光灯といえば整然と並んでいるもので、だからこそランダム配置された蛍光灯ってインパクトがあったんだと思います。でも、LED照明が普及した今だと、LED照明って結構自由に配置が出来ますから、ランダム配置のインパクトってそこまでないんじゃ無いかなぁ、とも思います。ある意味、この時代ならではもデザインとも言えるかもしれません。
さて、大江戸線ホームの壁面アートとランダム配置の蛍光灯でエッジを効かせた清澄白河駅ですが、地上の出入口もなかなかエッジが効いています。一番エッジが効いているのは駅北側にある出入口A1で、ガラス張りの半円筒形とか、穴の空いた鉄骨の梁とか、とにかく色々なポストモダニズム的な要素がてんこ盛りになっています。それで更に面白いのは「上野御徒町まで9分」という宣伝文句が入ってまして、この手の張り紙って都営各駅でよく見かけるんですが、ポストモダニズム的な要素と力強い宣伝文句とがハイレベルで強めに主張しあっている。その味付けの濃さみたいなのが面白いです。
ちなみにこの出入口の背後に建っているのは交通局の庁舎なんですよね。それを知った上で他の出入口に比べてエッジが効いているのを見ると、自分の土地だからと好き勝手やっている感もあって、そこも面白いところです。
続いてA1出入口の向かい側にあるのが出入口A2ですが、ここはマンションの駐車場の脇にあるので、一見すると普通のデザインです。でもよく見ると屋根がやたら傾斜がついているんですよね。いや、正確にいうと傾斜は普通なのかもしれないんですが、屋根の奥側が地面スレスレの位置まで延びているので、傾斜がついているように見える、ということかもしれません。そして、屋根はガラス張りなんですが、側面に蛍光灯をランダム配置して清澄白河駅としてのアイデンティティを保っています。
そして都営3つ目のの出入口であるA3出入口は、マンションの建物の中に取り込まれた格好になっているので外観は地味なのですが、それでもやっぱり天井にランダム配置の蛍光灯があって、内に秘めた只者では無い感じが出ています。むしろ、TPOを弁えるべき場面では周りに合わせて、大丈夫なところでは自己主張していくという、大江戸線の根は良い子感といいますか、大江戸線のキャラクター性が前面に出ている出入口なんじゃないかなと思います。
ところで清澄白河駅には大江戸線の後に半蔵門線が通っていまして、東京メトロ管轄のB1とB2という出入口もあります。この半蔵門線の清澄白河から押上の間の駅というのは、東京メトロが営団地下鉄だった最後の時期に開業した駅でして、だいぶオーバーにいえば営団地下鉄の渾身の一作といえます。実際にデザインを見てみると、直方体のシンプルな造形にガラスとメタリックを組み合わせて、すっきりとしたモダンな仕上がりになっています。しかもこのガラスの部分には江戸小紋の模様が入ってまして、近代的な第一印象なのに近寄ると伝統も感じられるのも素晴らしいですよね。
ただ、直前に出来たのがあの大江戸線ですから、どうしてもインパクト負けしてしまっています。営団地下鉄の出入口の歴史だけを辿っている時には、すごく新しい感じがする出入口なんだけれども、どうしても同じ駅に都営地下鉄の突拍子のないものがあるから注目されにくい、という点がただただ惜しいです。ぜひ清澄白河駅でランダム配置の蛍光灯を見た後には、B1・B2もぜひ見てあげてほしいです。
都営地下鉄側と東京メトロ側で雰囲気が全然違う。同じ駅で、土地柄を反映したものを建てたはずなのに全然違うテイストのものが出来上がっている。それが清澄白河駅の面白さだと思います。この年末年始はぜひ清澄白河駅を訪れてみてはいかがでしょうか。
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