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筋肥大

好きな将棋の囲いは美濃囲い。

どうも!

ワークアウトレーサーSHIBAです!

今回は筋肥大について詳しく説明します。以前、筋トレの種類について解説して、筋肥大がどのようなトレーニングか軽く説明しています。まだ知らない方はそちらの記事を読んでくれると幸いです。

筋肥大メカニズム

筋肥大がどういう現象か。筋肥大は大きく分けて2つの仕組みがあります。

①蛋白質代謝系

②筋線維再生系

です。この2つの反応の活性は筋力トレーニングによって高められます。

①蛋白質代謝系

蛋白質代謝系の反応とは、❶「筋蛋白質の合成・分解」を指し、❷「m-TORのリン酸化」がそれを調節しています。

「筋蛋白質の合成・分解」についてです。筋肉を構成する蛋白質は絶えず合成され、分解されています。身体を構成する蛋白質は寿命があり、日々新しい蛋白質と入れ替わる事で劣化を防いでいます。1日に1〜2%程分解され入れ替わっているので、数ヶ月で全ての筋肉が入れ替わる計算ですね。肉や魚を食べると、細かく分解されて最終的にはアミノ酸になります。分解されたアミノ酸は体内のアミノ酸プール(蛋白質合成の優先的な材料となる遊離アミノ酸の総称)に貯蔵され、必要な時に使われます。筋肥大の条件として、合成>分解にならなくてはなりません。筋蛋白質の分解はエネルギーが不足した状態でも起こります。炭水化物(糖質)を摂取すると、筋肉にグリコーゲンというエネルギーとして筋肉に貯蔵します。そのグリコーゲンが枯渇すると、他のものからエネルギーを作らないとエネルギー不足になります。その時に、糖新生といい糖質以外(蛋白質等)からグルコース(エネルギー)を合成することになります。よって、体内のアミノ酸プールからエネルギーが作られます。また、運動やトレーニングによって筋肉内のBCAA(分岐鎖アミノ酸)も直接エネルギーとして消費されるため筋肉の分解が一時的に亢進されます。つまり、合成>分解になるためには、食事から蛋白質(特に必須アミノ酸)と炭水貨物(糖質)を摂取し、体内のアミノ酸プールを満たす必要があります。そのための食事を考慮することが大切です。

「m-TORのリン酸化」についてです「筋蛋白質の合成・分解」m-TORのリン酸化」によって調節されています。m-TORとは、細胞内シグナル伝達に関与する蛋白質キナーゼのことです。(蛋白質キナーゼとは、蛋白質分子にリン酸基を付加する【→リン酸化という】酵素のこと)つまり、筋線維内で蛋白質の合成を指令する化学反応経路の主役です。筋線維は多数の細胞を持つ多核細胞であり、核内の遺伝情報をもとに蛋白質が作られます。筋トレを行うと、DNA(遺伝子の本体)からm-RNA(蛋白質を合成するための設計図)を写し取る動きを活性化させます。この行程を「転写」と呼び、筋トレによって転写を活性化する因子が増えます。近年はm-RNAから蛋白質が作られる過程(翻訳)と翻訳を促進する物質(m-TOR等)が注目されています。筋トレによって筋肉に負荷を与えると、筋線維内のm-TORがリン酸化されます。リン酸化したm-TORは蛋白質リン酸化酵素として作用することによって、蛋白質を合成する働きを持つリボソームという細胞小器官を活性化します。この反応系を「m-TORシグナル伝達系」と呼びます。この反応経路が判明したことにより、m-TORは筋トレと筋肥大をを結びつける要因となりました。筋肥大に対する貢献はこれだけでなく、蛋白質の分解を抑制します。m-TORのリン酸化が進行すると、蛋白質の合成が高まるのと並行し分解を抑制する作用が働きます。m-TORのリン酸化は高強度の筋トレ・スロートレーニングでのエキセントリック収縮(ネガティブ動作)局面の刺激がm-TORのリン酸化を高めることができます。しかし、強すぎるエキセントリック収縮の刺激は逆にm-TORのリン酸化が抑制されるので注意が必要。

②筋線維再生系

主に筋線維を修復したり既存の筋線維(筋細胞)の細胞核を増やす事で筋肥大を促進します。筋線維(筋細胞)は人体にある細胞の中でも最大のサイズであり、1つの細胞に遺伝情報が詰め込まれた細胞核を数多く持ってます。そのため、筋線維が死滅すると新しい細胞が作られるまで10日以上の時間がかかります。小さな普通の細胞なら損傷してダメージを負うと細胞自体が死滅して新しい細胞へ生まれ変わりますが、筋線維には損傷した細胞を再生する性質が備わっています。大きすぎるダメージで壊死しない限りは損傷部を補修し、以前より太くて大きい細胞に成長します。また、筋線維(筋細胞)中の細胞核は増殖します。筋線維の表面には「筋サテライト細胞」という細胞がいくつもあります。筋サテライト細胞は細胞分裂して同じ細胞を増殖することができる幹細胞の役割をしてます。が、普段は活動しません。筋線維に微細な損傷が生じたり、筋トレによる刺激を受けたり、強い収縮を起こすことで活性化し、IGF-1などの成長因子が分泌され、筋サテライト細胞は増殖します。また、筋肉が強い収縮を起こさない間は、筋線維からミオスタチンという成長因子が分泌され、筋サテライト細胞の増殖を抑制します。つまり筋トレで活性させないといけません。活性化した筋サテライト細胞は細胞分裂を起こし、分裂した細胞が筋芽細胞(筋線維の元となる細胞)となる。そこから複数の筋芽細胞が融合して筋管細胞(複数の細胞核を持つ多核細胞)となり、筋管細胞が筋線維(筋細胞)の表面に張り付いて融合することで筋線維損傷部位が修復される(筋肥大する)。また、損傷が生じないケースでも筋サテライト細胞が増殖した後に筋線維と融合し、元々存在する筋線維の細胞核数を増やすこともある。つまり、筋サテライト細胞の細胞核は融合した筋線維の核を増やすための供給源となります。また、細胞の中で1つの核が支配できる領域には限界があると推測されてます。その理由は、1つの核で機能している細胞に着目すると、細胞の形状を球形と仮定した場合、直径は20〜30μmの範囲に収まります。しかし、複数の細胞核を持つ筋線維は大きいもので直径100μmにもなり、長さも10cm前後まで成長します。このことから、細胞核の数を増やし、トータルの支配領域を広げれば筋肥大できる上限を上げることができると考えられます。

※筋線維の損傷とは細胞膜の機能が少し損なわれる程度。大半は目に見えないミクロレベルの損傷で筋肉の機能に大きな影響が出るようなものではありません。


筋肥大トレーニング方法

トレーニングする上で疑問がいくつかあると思います。①負荷はどれくらいに設定すればいいか?②何回やればいいか③セット間の休憩は?④関節可動域を最大まで使うべきか?⑤一回の動作でどのくらいの速さやればいいか?⑥週何回やればいい?⑦ネガティブ効かせたほうがいいのか?等、、、ですが、全部紹介すると長くなり過ぎてしまうので、今回は特に疑問に持ってる人が多そうな2つを紹介します。

❶負荷・回数・セット数は総負荷量で計算

筋肥大を目標にトレーニングする際は、「総負荷量」を意識することが大切です。「総負荷量」=「トレーニング強度(重量)× 回数 × セット数」ということです。この組み合わせが大切です。極端にめちゃくちゃ重いもの持ったり、回数増やしたり、セット数増やしたりする必要はありません。その根拠となったエビデンスを紹介します。2010年、カナダ🇨🇦のマクマスター大学の報告です。

経験者を二つのグループに分け、1RMの70%以上の強度でのレッグエクステンション(大腿四頭筋という腿の前の筋肉を鍛える筋トレ)を一方のグループは1セット、もう一方のグループは3セットそれぞれ疲労困憊になるまで行いました。終了後、両グループの平均総負荷量を計測したところ、1セットのグループの平均総負荷量は924kg、3セットのグループは2184kgとなりました。さらに、トレーニング後の筋蛋白質合成率を計測すると、総負荷量の高かった3セットのグループが有意な増加を示していたのです。この結果から、「強度が同じでもセット数を多く行い、総負荷量を増やすことで筋肥大効果を増加できる可能性がある」ということが示されました。

もう一つは1RMの90%の高強度でレッグエクステンションを行うグループ、1RMの30%の低強度で行うグループに分け、疲労困憊になるまで行わせました。その結果、高強度グループの回数は5回ほどで終わった一方、低強度グループの回数は24回となり、総負荷量は高強度の710キログラムに対して、低強度は1073kgとなりました。気になる筋蛋白質合成率は総負荷量の大きな提供度グループがより高い増加を示したのです。この結果より、低強度トレーニングにおいても回数を多くし、総負荷量を増やすことで高強度と同様の筋肥大効果を得ることが示唆されました。

❷セット間の休息

最適な休息時間時間には個人差があります。よく、30秒〜90秒というのを聞いたことがる人も多いかと思います。なぜこんなにも範囲が広いのか疑問に思ったことはありませんか?30秒と90秒では全然違いますよね?つまり、最適な休息時間には個人差があるということです。トレーニング経験の有無、性差などにも左右され絶妙なタイミングが求められます。その根拠となる事例をいくつか紹介します。

休息は短時間と長時間のどっちか問題

休息は短時間(1分間)か?長時間(3〜5分間)か?という議論が長くされていました。短時間は根拠として「成長ホルモンの分泌の増加」を挙げていました。ある研究でベンチプレスを行わせ、セット間の休息を1分、1分半、2分と設定し、運動後の成長ホルモンの分泌、テストステロンの濃度を計測しました。その結果、1分、1分半の場合に濃度の増加が示されました。この背景より、筋肥大のためには「休息時間を短く設定し、成長ホルモン等の濃度を増やすこと」が’’常識’’となったのです。ところがその後、「成長ホルモンの増加は、筋蛋白質の合成作用や筋肥大に作用しない」ことがわかりました。2012年、マクマスター大学の研究で筋肥大に関与するとされる様々な因子について検証しました。被験者が12週間のトレーニングを行なった結果、約20%の筋肉量増加が認められました。この筋肉量増加に対する成長ホルモン、テストステロン、インスリン様成長因子(IGF-1)などの影響を調べたところ、筋肥大に有意義な反応は見られませんでした。2013年、同大学で改めて検証し、同様の結果を報告しました。さらにこれらの結果から「トレーニングによる一時的な成長ホルモン等の増加は、筋蛋白質の合成や筋ひだに関与しない」と結論づけました。「筋肥大は運動単位の十分な動員によって活性された細胞内機構が、筋蛋白質の合成作用を促進させることによって生じる」と述べています。つまり、セット間の休息が短いほど良いというわけではないのです。

個人差がある最適な休息時間

人間は性別、年齢、体格等、個人差がありますよね。今までは、性差などを考慮した筋肥大のためのセット間の休息時間がどれだけ影響を与えるか考慮されていませんでした。個人差があるので考慮しないといけません。この疑問に回答したのが、2017年オーストラリア・メルボルン大学が報告した研究(システマティックレビュー)です。メルボルン大学の研究者はセット間の休息時間に関する23の研究報告を分析し、性別やトレーニング経験、運動強度によって最適な休息時間が異なることを明らかにしました。この中では、女性は男性より筋代謝の回復が早いことが示唆されています。次にトレーニング経験の有無による最適な休息時間の分析です。トレーニング経験者は高強度トレーニングを行うことが多いものですが、その場合、休息時間が長い(2分以上)ほうがそう負荷量の増大に繋がり、トレーニング効果が高まるとしています。一方、トレーニング初心者は中・低強度トレーニングを選択することが多く、その場合、短時間(1〜2分)の休憩でも十分に高い効果が得られることがわかりました。この結果から、トレーニング経験者が行うような高強度トレーニングではセット間の休息を長くすることで総負荷量を増やせる可能性があります。また、トレーニング初心者が行うような低強度トレーニングでは1〜2分間程度の休息時間で問題ないということです。

まとめ

・蛋白質を合成>分解の状態にする。そのために蛋白質と糖類を摂取

・筋トレによってm-TORを活性化

・筋肥大のためには総負荷量に注目

・休息は高負荷なら長時間、低負荷なら短時間

以上

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