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12月新刊『「お迎え」の思想――極楽浄土への往き方――』

新刊『「お迎え」の思想――極楽浄土への往き方――』が発売となりました!
 
著者は仏教思想家、宗教評論家のひろさちや氏です。著作は600冊を超え、厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現する筆致は、年齢・性別を超えて好評を博しています。
 
本書は、『〈ゴータマ〉の大予言――みんなが「わたしの人生」を生きるために――』に続いて仕事場から発見された直筆原稿のなかの逸品です。
人々の心がすさんでいった平安時代末期に民衆の救いとなった「お迎え」(あの世からのお出迎え)の信仰の成り立ちを考察し、浄土教の教理を読み解いていきます。浄土教とは大乗仏教思想の一つで、極楽浄土に往生し、成仏することを説いた教えのことです。
人々の救いの光明となった極楽浄土の思想は、時代が下るとともに「死後の世界は存在しない」という科学的な認識が広まり、次第に揺らぎ始めました。それに対して著者は、科学的な認識(=科学的な信仰)も含め、死後の世界に関わる信仰のすべてが「信じている」ということだとし、以下のように語っています。

―お浄土といったものは、死後の世界が存在している、と言っているのではないのです。それは、人が死んだらゴミになる——といった発言が、死後の世界は存在していないといった主張でないのと同じことです。人が死んだらゴミになるという発言は、要するにその人の信念を述べたものにすぎません。と同様に、人は死んだらお浄土に往き生まれると言うことも、その人の信念・信仰を表明したものなのです。
 そして、死ねばお浄土に往生すると信じていれば、その人は、死後の世界があるのだろうか、ないのだろうか、と、考えずにいられます。つまり、釈迦が教えられた「考えるな!」になるわけです。
そのためのお浄土なんです。わたしたち凡夫が、死後の世界の有無についてあれこれ迷って考えないように、大乗仏教では、人は死んだらお浄土に往生するのだ——と教えているのです

『「お迎え」の思想――極楽浄土への往き方――』(本文より)

著者は、キリスト教、イスラム教、バラモン教、時には哲学の思想を織り交ぜ、信じる者にとっては厳然として「死後の世界」が存在すると訴えます。
本書は、「死」という重たいテーマを扱いながらも、逆説やユーモアを交えた著者の語り口によって、楽しみながら死後の世界について学べるものになっています。
 
本書で解説されている信仰(浄土教やキリスト教など)をお持ちの方でなくとも、「死後の世界」の有無に疑問を抱いた方は多いと思います。本文でも著者が語られていた、魂が肉体を離れてあの世へいく、星になる、輪廻転生する、などの思想は私もよく聞いたことがありました。近年では、科学や医学などの観点からも「死後の世界」についての考察された書籍も目にします。
『「お迎え」の思想』も同じく「死後の世界」をテーマにした本ですが、大きな違いがあります。それは、“仏教者らしい生き方”とはどういう生き方なのか、を書かれていることです。
 
平安時代末期は、大火事や台風、飢餓、疫病などが度重なり、混乱を極めました。死と隣り合わせの現実に苦しむ民衆の心を救いになったのが、極楽信仰です。
 
現代の日本でも、出生率の低下、団塊の世代の高齢化など、多死社会によって終活や孤独死などの課題に直面しています。SNSを見れば、「死」に関わる書き込みも目に止まります。
民衆の救いとなった極楽浄土の信仰の教理と、その教えをベースとした、ひろ先生の語る“仏教者らしい生き方”からは、希望のある穏やかな生き方を示してくれるはずです。
 
浄土宗開宗850年を迎えた2024年の締めくくりに発刊された本書は、浄土教入門書としても最適な一冊ですよ。
ぜひお読みください。

(担当編集 ICHI)

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ひろさちや著

「お迎え」の思想――極楽浄土への往き方――

電子書籍はこちら ↓↓↓

ひろさちや
1936年(昭和11年)―2022年(令和4年)。大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。1965年から20年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動を行う。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。
おもな著書に、『仏教の歴史(全10巻)』『釈迦』『仏陀』『大乗仏教の真実』(以上春秋社)、『お念仏とは何か』『禅がわかる本』(以上新潮選書)、『のんびり、ゆったり、ほどほどに』『生き方、ちょっと変えてみよう』『〈法華経〉の世界』『『法華経』日本語訳』『〈法華経〉の真実』『坐らぬ禅』『〈ゴータマ〉の大予言』(以上佼成出版社)などがある。(※略歴は刊行時のものです)

【目次】
【プロローグ】
 ある禅者の臨終
【第一章】
「考えるな!」
【第二章】
浄土の誕生
【第三章】
浄土の存在意義
【第四章】
極楽浄土の本質
【第五章】
浄土への往き方
発刊に寄せて

ISBN:9784333029327
出版社:佼成出版社
発売日:2024/12/15