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短気は身を滅ぼす(一朝の忿りに其の身を忘る)

「短気は損気」「堪忍は一生の宝」などといわれるように、短気を戒めて我慢の大切さを教える言葉は多い。つまり、人間は感情に激して怒りやすく、失敗しやすいという証拠である。

 歴史上、短気がもとで身を滅ぼした人は限りなくいる。わけても典型的でよく知られるのは、忠臣蔵という美談を残す原因をつくった松の廊下の刃傷沙汰である。元禄十四年三月十四日、吉良上野介義央のいじめに堪忍袋の緒を切った浅野内匠頭長矩は、江戸城内松の廊下で吉良に切りつけた。どんないじめがあったか知らないが、家臣や領民のことを思えば、そう簡単に腹を立てて行動してはならないところである。

 お家取りつぶしのかげで、どれだけの人が泣いたかはかり知れない。短慮というほかない。『一朝の忿いかりに其の身を忘れて以て其の親(近親者)に及ぼすは、惑い(迷い)に非ずや』(論語・顔淵篇)。

 浅野内匠頭は、明らかに理性を失っていたといえよう。「怒りは無謀を以て始まり、後悔を以て終わる」(ピタゴラス)ものである。「怒れる時は十度数えよ。怒り更に甚だしくば百度数えよ」(ジェファーソン)という心がけを忘れてはならない。

『ビジネス戦略を支える 中国名言の智慧』(窪島一系)より

中国名言の知恵 表紙画像(127×188ミリ) (2)

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