紙の温度に行ってみた
高知県の中山間地域の問題で浮かび上がった、和紙存続の問題。
なんとかやれる方法があるはずだ!と、意気込んだのものの、和紙、いや、紙についての知識が圧倒的に足りない…!
という事で、ネットで小一時間検索した後に辿り着いたのが、愛知県にある紙の聖地「紙の温度」。
なにやらたくさんの種類の紙が販売されており、さらに紙についてのレクチャーも無料で行われているのだとか。
本能的にここに行くしかない!と思い込んだ私はすぐに予約を取って名鉄電車に乗っていたのでした。
紙の温度に行ってみた
紙の温度は、超有名な神社「熱田神宮」のすぐそばに建っている。
ちなみにすぐ近くには、これまた超有名店の鰻屋「あつた蓬莱軒」もあり、せっかくこの辺りに行くなら鰻屋にも立ち寄ってみたいなという気持ちにもなる。
紙の温度に足を踏み入れると優雅なクラシックの音楽が。
そして目の前に広がる様々な紙、紙、紙。
まさに紙の聖地とも言うべき眺め。
今日は2時間の座学コースに申し込んでいたため、まずはそちらから体験することになった。
紙の温度の座学コースがすごかった。
紙の温度では、いろんなイベントがあるのですが、その中でも、世界の紙や珍しい紙など、紙にまつわるエピソードトークが聞けるコースに参加しました。お値段が無料なんて本当にいいのだろうか…。
しかも、紙の温度の社長である花岡さんご本人がお話ししてくださるという大変貴重な機会でした。
世界の紙や日本の紙、原料…。
私の素朴な疑問から、脱線話を含めつつ、様々な紙の歴史について知ることが出来ました。
やっぱり和紙はどんどん需要が減っている。
和紙で作られた教科書の廃止
住宅の火事から障子紙の需要減
小切手・切手はデジタル化
お金もキャッシュレス化が増えている…
時代の移り変わりと共に、和紙業界は先細ってきた。
どんなにキレイに紙を漉いても、どんなに大変な作業を重ねようとも、買ってくれる人がいない。
1000年も残る丈夫な紙が作れるというのに?
長期にわたって傷まない保存性もあるのに?
苦労して原料を育て、割き、チリを取って、丁寧に紙を漉く。
しかし、どんなにクオリティが高くても売れない。
安価な西洋紙が主流となった現在では、和紙の居場所は無くなってしまっている。
それでも和紙が好きだといい、先人達があみだした技術を守りたいと、細々と受け継がれてきた和紙。
紙を家業にすると決めた花岡さんは、全国の紙漉きさんの小屋を訪ねてまわった。日本だけじゃなくて世界も。
売れない紙をトラックいっぱい引き受けたり、海外にも飛んで面白そうな紙を買い込み発注した。
そうやって紙の世界が斜陽になりつつある中、花岡さんは紙漉きさんと紙を守ってきた。
なんて尊いことだろうと思う。
とうに消えてしまった紙も紙漉きさんもあるだろうが、紙の温度が無ければもっと苦しくなっていただろう。
私が聞いたのは長い長い紙の歴史のほんの一部。
だけどそこには、見えない先人達の苦労や挑戦がたくさんあったんだ。
そうやってずっとずっとみんなで紙を守ってきたんだ。
紙の温度での講義が終わると共に、そんな気持ちがあふれてきた。
そうして店内に埋め尽くされた紙を見ると、また違った感情が浮かんできた。
この紙一枚一枚に、いろんな人たちの背景があって、苦労やストーリーがある。
この想いの詰まった紙をここで絶やしていいんだろうか?
そして、ポンと突然、私の目の前にバトンが渡された気がした。
そうか、今度は私たちの世代の番なんだ。
ものすごい紙の熱量に頭をふわふわさせながら、私はお店を出た。
気づいたら、紙の温度に4、5時間居座っていたらしい。
高齢化で継ぎ手がおらずどんどんと生産者が減っている和紙業界。
そして需要も先細ってきた和紙たち。
私の持っている力で何ができるんだろう…。
そんなことを思いながら、とうに12時をまわり、空きっ腹でふらふらと道を歩き始めた。
結局、帰りに寄ろうと思っていたあつた蓬莱軒は閉まっていた。
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