電車で恋愛小説読み読みおじさん『クジラの彼』 有川浩 作
去年末におすすめしてもらった小説。
なんでか、どこの本屋に行っても置いておらず、ネットで注文しました。
おすすめしてもらったのに、遅くなってしまって申し訳ない……!届いてからは遅れを取り戻すように一気に読み進めました。
30超えのおじさんがゴリゴリラブコメ小説を読んでいる様子は、側から見るとそれなりに可笑しかったかもしれませんが、その笑を全て微笑みと受け止めて進んでいこうと思います。
有川浩先生のラブコメ良いですよね。
高校生のときに、図書館戦争シリーズを全部読んだの思い出します。
あの頃は、大人になれば堂上教官ぐらいかっこよくなれると思ってました。
どうやら、お話の内の何編かは、有川先生の自衛隊三部作のスピンオフだそうです。私は申し訳ない事にそれらを読んでおらず、かつ、そのことを知らずに読んでいたのですが、問題なく楽しめました。
一点、冬原という人物と夏という人物の繋がりの強さがふわっとだけ語られたので、何なのかな?となったぐらいです。それも、そこまで本筋には関係ありません。
どちらかと言うと、3部作ファン宛のサービスぐらいのものでした。
6篇からなる短編集はどれもキュンキュンなのですが、個人的には『脱柵エレジー』が1番好きでした。
他の作品がどれも胸キュンど真ん中ストレートだっただけに、ほんのり穏やかに終わったこの作品に惹かれたのでしょうか。1番おじさんの心臓にも優しい作品と言い換えることができるかもしれません。
ちなみに、タイトルの「脱柵」というのは、自衛隊の宿舎を抜け出す、つまりは脱走に近い意味だそうです。
そこを恋人に会うために抜け出そうとする新人と、過去抜け出して胸を痛めた上官たちのお話です。
私の知り合いにも、元海上自衛隊の人がいます。彼はこの作品でいうクジラの彼(潜水艦乗り)ではなく、艦艇に乗って世界をグルリと回っている人でした。
その人が言うにも、自衛隊の中には恋人ができなくて出会いを求めて彷徨う人や、連絡がとれなくて別れる人、港ごとに恋人がいる人と、いろいろなタイプがいるそうです。
ただ、彼が自衛隊をやめたのはもう5年以上前ですが、その頃にはいわゆる軍隊的なシゴキが大分行えなくなり、隊員のアニメ・アイドルオタク率が増加傾向にあったそうです。
あと、意外と美大生の卒業後の進路に自衛隊ってあったりします。
きっと有川さんの描く自衛隊と全然違う今の自衛隊の恋のお話も増えているのでしょう。
それから、最初に書いた図書館戦争もそうですが、有川先生の書く強い女性はどれも非常に可愛らしいですね。
ご本人を知っているわけではありませんが、先生がそういう人物のギャップの可愛らしさが好きなんだろうなという気がします。
背が高いけれど乙女ちっく、背が小さいけれど男前。
文体とかファンタジーとかどうこうよりも、この「キャラクターの魅力!!」って感じがライトノベル作家である所以と言えるのかもしれません。
本当に強い人って、いつも強い人じゃなくて、強いからこそ、自分が弱っている時にしっかりと弱っていることを伝えられる誰かがいる人だなあと感じます。
キャラクターが単純化されればされるほど、強い人は強い、可愛い人は可愛いとされがちな中、その心情の機微からギャップを生み出し、キャラクターをより豊かにできるのはただただ感心するばかりです。
自分で本を探そうと思ったら、多分真っ先に選ぼうとはならなかったでしょうし、読むにしても自衛隊3部作を先に読んでいたと思います。
だからこそ、人におすすめしてもらったものを楽しむっていいですよね。