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ferm LIVING Stories vol.45 アーティスト Linda の家

お久しぶりのストーリーズ。
今回ご紹介するのは、スウェーデンの首都・ストックホルムでちょっとユニークなアート活動をする女性のストーリーです。

〜 Linda Ring の暮らし 〜


ブレッド・アーティストであり、写真家であり、インテリアスタイリスト。

そんな彼女は、夫の Mattias と13歳の息子 Ruben とともに、スウェーデン・ストックホルムに暮らしている。

Linda Ring / ブレッド・アーティスト、写真家、インテリアスタイリスト

1940年代の funkis house。
ストックホルム中心部にある小さな島 Stora Essingen にあり、水辺の景色が美しく見渡せるこの家にクリエイティブマルチタレントの Linda Ring は住んでいる。
Linda は写真家であり、インテリアスタイリストでもあるのだが、彼女の特筆すべき才能はおそらく偶然見つけたものだろう。


Linda は芸術と深くそして強固な繋がりを結んでいる。
芸術とは、彼女のキャリア全体を通してガイドしてくれたものの一つであり、カメラアシスタントから広告の世界に入りオークションハウスBukowskis のマーケテイング部門に15年間在籍するなど、そのキャリアを導いたものの一つでもあるのだ。

(Linda)
芸術は私の人生と周囲の見方に非常に強い影響を与えました。鋭い視線を持つようになったのです。私は常に美しさに目を凝らし、絵画のようにすべてを見ずにいられません。

現在 Linda はクリエイティブフリーランスとして働いている。
写真家、インテリアスタイリストのほかに自身の履歴書にはやや珍しい肩書きが。それがまさしく、ブレッド・アーティストだ。

ストックホルムの自宅で、Linda は美しくて風変わりな「顔」をパンの生地に彫り込む。パンが焼き上がると、アートギャラリーにあるヘレニズム時代に掘り出されたアート作品にも似ている。
食品でアート作品を作ることに時間と労力を費やすことへの皮肉を、Linda はよく理解しているが、実際にはそれがこのアートの魅力の一部なのだ。


(Linda)
この儚い感じがすごく好きなんです。
のちに食することができる美しいものを作り出すという「デカダンス」が。

パンアートというものを作り出す過程は、Linda の人生においてより困難の時期に生まれた。


(Linda)
数年ほど前、私は燃え尽きてしまいました。そこで、物事の優先順位を変えはじめてみたのです。時間はお金よりも大切になりました。
私はパンを焼き始め、そしてその工程すべてに没頭しすぎてしまい、時間や空間の感覚すべてを忘れてしまったほどでした。ただ模様のついたパンを作り始めることで、まるで違う奥行きが生まれたのです。完全な自由を感じ、自分の抱えていたすべてのストレスはどこかに消え去りました。


・・・


オークションハウスでのフルタイムの仕事に別れを告げたあと、Linda は時間を自分のため、家族のため、そしてゆったりとしたペースで生きるために使った。

パン作りという彼女が新しく見つけた情熱と生涯にわたる芸術への愛を組み合わせることで、Linda は自分自身をクリエイティブに表現するまったく新しい機会を見つけたのだ。
「抽象的で瞑想的な模様をつけ始めました」と Linda は語る。


(Linda)
ある日、息子の Ruben がキッチンにやってきて生地におかしな顔を切り込んだのです。それが私のファンタジー心に火を点け、そしてやめられなくなったの。この模様を作り始めて、ちょっと夢中になったわ!
この時期、誰かにプレゼントしてさばかないといけないほど本当にたくさんのパンを焼きました。(だって私たちだけでは全部食べきれないから!)


・・・


Linda の家は、まるでブレッド・アートのように彼女の芸術的傾向の延長線のようなものである。


(Linda)
私は、自分の家は家族のいる場所だと言える人になりたいと思っています。
しかし、それは部分的には真実ではありますが(それが自分の家にとって最も大切だという部分です)自分の家がどのように見えるのかを気に留めることはないほどの耽美主義者でもあります。
居心地の悪い環境では身体的にも落ち着かなく感じますが、言い換えれば、美しい環境はどの瞬間も私にとっては喜びなのです。
豪華である必要はありません。
素晴らしい素材、考え抜かれたディテール、そして魂が感じられるということが重要なのです。調和のとれた家づくりには時間と根気がいりますが、
その全てが財産なのですよ。

Linda はストックホルムにある家に15年住んでいる。
1940年代の機能主義スタイルのその家はその時代のスカンジナビアン建築の原型であり、ビンテージアイテムやユニークなディテール、伝統的なスウェーデンのデザイン要素に満ち溢れている。


(Linda)
これは美しいわ、とか、これは面白い、と思うものがあったら、家の中で置くためのスペースをつい探してしまいますね。


典型的な問題なのは、たくさんのアイテムが蓄積してしまうということだろう。この問題に Linda はある答えを出した。
その解決方法とは、彼女の焼くたくさんのパンの時と同じである。


(Linda)
もし友人や家族の誰かが私の家のモノを気に入ってくれたら、私はいつでも大喜び。つまり、それを差し上げるだけなんです。プレゼントとしてあげることが、一番の解決方法なのよね!

Linda は自身の住むストックホルムの一区画である Stora Essingen島での暮らしについて、「都会にある田舎暮らし」と表現。
ストックホルム群島の小さな島 Vaxholm で生まれ育ったLindaにとっては、ここは素晴らしくフィットしている。


(Linda)
私は島育ちなので、もし水が見えない場所や水辺にまでも簡単にアクセスできないそんな場所にいたとしたら、閉じ込められたような気持ちになるでしょう。私たちの家は水辺から100mほどの場所に建ち、窓からはその風景を見ることができます。私たちにとっては、かけがえのことですね。


・・・


Lindaの家は、彼女の作り出す美しいパンと同じような感性を多く呼び起こしてくれる。

あたたかみがあり、芸術的で誘惑的なのだ。


木、真鍮、ガラスといった耐久性のあるクラシックな素材が非常に主張する一方で、模様や色彩が豊かなテキスタイルが柔らかさとロマンティックなタッチを空間に添える。Lindaは、自宅を飾るプロセスとパンを焼くプロセスをこう比較している。


(Linda)
この二つのプロセスは全く異なるものではありません。
厳選された材料を使い、絶えず変化し続けるオーガニックであり「生きたプロセス」のなのです。
私はそんなに頻繁に模様替えはしませんが、季節の移ろいとともに細かなディテールを変えています。

Lindaのレシピで、あなただけのブレッド・アートに挑戦してみよう。
どうぞお楽しみください!


■ブレッド・アートのレシピ

【材料】
ぬるま湯:550g
無精製の海塩:25g
サワー種:300g
オーガニックの薄力粉:約800g (※1)

(※1)薄力粉とありますが、パン用の粉でも大丈夫だと思います。


【作り方】
・まず、ぬるま湯、塩、サワー種を大きなボウルに入れて混ぜます。
(サワー種はドライではなく生のものを使用してください)

・薄力粉を入れ、30秒かき混ぜます。
ここで重要なのは、生地をかき混ぜすぎないこと。

・ボウルに布巾をかぶせ、30分間生地を休ませます。
このステップを「オートリーズ」と呼びます。

・1分ほどかけて生地を折りたたみます。
どうやってサワー生地を折りたたむかわからない場合は、Google で検索してください。

・1時間ほど休ませて再び折りたたみます。
その後、1時間半弱休ませること。

・キッチンの温度にもよりますが、これでbanneton(藤製の発酵用カゴ、別名パンかご)に入れる準備が整いました。Banneton に生地を入れる前には、生地に弾力性があるかどうか確かめるための「グルテンテスト」を行いましょう。これも方法がわからなければ、ぜひGoogleで検索を。

・大きめのパン一個にするのか、それとも小さめのパンを二個つくるのかは
ご自由にお選びください。

・冷蔵庫(5度前後)に入れてパンを発酵させます。
ここでは少なくとも12時間おいてください。このプロセスが非常に重要になってくるのです。

・翌日、もしくは12〜24時間後、いよいよパンを焼く時間がやってきました。オーブンを250〜275度に温めます(オーブンによるため、この温度設定がいつも難しいのです)。パンが焦げないように、通常はしばらくして温度を下げています。

・冷蔵庫から生地を取り出し、クッキングペーパーを広げたお皿の上に移します。パンに模様をつけたければ、生地に粗挽きの小麦粉をふるいでかけ、
その後極細のパン細工用ナイフを使ってオリジナルの模様を描いてください。

・さあ、いよいよオーブンに入れる時間です。
作ったのがパン一個であれば約45分、小さなサイズを二個であれば約30分焼きます。パンの内部が96~98度になったら出来上がりです。


※パンは切り分ける前によくラックに置いて冷ましましょう。


ぜひ作ってみてください!


愛を込めて
Lindaより



***


いかがでしたでしょうか。
レシピを翻訳していて、ところどころに出てくる「わからなかったらGoogleで調べてね♪」……には、思わず笑ってしまいました!

そこ、大雑把なんだ!……と。笑


けれど、彼女に限らず北欧ではパンを焼く家庭は多いですよね。
デンマークに住んでいたころは、私も友人と一緒によくパンを焼いていました。そして、レシピはかなり大雑把。それでもパンって焼けるんだ〜、となんだか感心したのを覚えています。

この週末はぜひブレッド・アートに挑戦してみてはいかがでしょうか?!
それでは次回もお楽しみに〜♪



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