「アフリカの夜」④ずぶ濡れのガソスタ

ドラマ「アフリカの夜」は長いディスカッションが秀逸だ。

前回の続きで。私の中でずっと心に残っているシーン。

八重子「ウソ!結婚するってことは、ずっとずーっと一緒に生きるってことなのよ。お金もなきゃ困るし、親にも認めてもらわなきゃいけないし。結婚するんだったら安定しなきゃ……」
礼太郎「(遮って)安定って何?」
八重子「……」
礼太郎「そうしなければならないことなんて何にもないんだよ。人間は選ぶことができる。生まれてくること以外はね。今は暗闇でも、明日は見えなくても、道は開かれているんだ、誰の前にも」

大石静「アフリカの夜」第2話より

礼太郎の言葉がカッコイイのはなぜだろう?例えば八重子が、結婚するんだったら安定しなきゃって言ったとき、「大丈夫だよ」と返すのは不誠実だし、「そんなものいらない、愛があればいいじゃないか」などと返すのは、八重子を否定するだけで終わってしまう。そう考えると、相手の言葉を否定せず、しかも相手が納得するように話すその姿勢がカッコイイのか。

しかも八重子を優しく勇気づけている。

「人間は選ぶことができる。生まれてくること以外はね。」後半の文はなくても意味は通じるし、むしろ日常では蛇足にも思える。だけど、「生まれてくること以外はね」ということで、前半が強調される。こういう言葉の使い方ってあるかも。

礼太郎の言葉ってそれだけで詩のようだ。リズムもいいし、盛り上がり方もいい。

「アフリカの夜」のスゴイところは、この前半だけで終わらないところ。この直後

八重子「よくわかんない……」
礼太郎「八重子はまだ、若いからな」
八重子「わかんない。こんな時に結婚しようなんて無責任に言えちゃう人。あたし、信じられない……」

大石静「アフリカの夜」第2話より

八重子と礼太郎の「分かんない」が、かみ合っていない。礼太郎は自分の話が分からないと思い、八重子は無責任な礼太郎が分からないと言っている。同じ分からないなのに、違う方を向いているのがいい。

礼太郎「八年経って、君が今の俺と同じ年になったとき、八重子の前にもし俺が居たら、きっと今と同じこと言うと思うよ」
声「車、直りましたよ」
礼太郎「その辺でラーメンでも食ってくか?」
八重子「へ?」
礼太郎「いやならいいよ、結婚……(出て行く)」
八重子「……(拍子抜け)」

大石静「アフリカの夜」第2話より

そして、最後のオチ。
礼太郎が「八年経って、君が今の俺と同じ年になったとき、八重子の前にもし俺が居たら、きっと今と同じこと言うと思うよ」と言って終わると思いきや、ラーメンを誘う礼太郎。しかも、「へ?」と答える八重子に対し、「いやならいいよ、結婚」と返す。
これもさっきと同じで、いやならいいよの対象が、ラーメンを食べることと結婚の二つがあって、ラーメンの流れで結婚の話が出ているのがいい。

結論
同じ言葉に二つの意味

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