「アフリカの夜」⑳小ネタ集

23年前にフジテレビで放送されたドラマ「アフリカの夜」。鈴木京香さん、佐藤浩市さんはじめ、室井滋さん、松雪泰子さん、ともさかりえさんなどが出演している。
それだけでも鼻血もんだが、加えて、演出家は宮本理江子さん、河毛俊作さん、水田成英さん。鼻血もよだれも出放題。

「アフリカの夜」の面白さは、何と言っても「道は開かれている」という主題に関わるシーン。だけど、それだけじゃない。これまで19回書いてきたけど、それでも書き尽くせない魅力がある。

閑話休題として今日は小ネタを集めてみた。

○ビジネスホテル・フロント・中(夜)
宿泊料金表を見て、チェックインするみづほ。
みづほ「よりにして、よりに」
フロントマン「はぁ?」
みづほ「(料金表『5500円より』を指し)これよ、このよりに」
フロントマン「5500円のシングルルームですね?」

大石静「アフリカの夜」第6話より

これは、みづほがアフリカから逃亡した時のシーン。駅から下りて、宿に入る。逃亡に関わることだから、トーンは暗いはずなのに、「よりにして、よりに」である。
普通、身を隠す逃亡犯なら、こんなこと言わないでしょ?だけど、みづほは、黒い服を着て、顔をうつむかせていながら、こういう相手が引っかかる言葉を言っちゃうんだよね。それがみづほのキャラクター。
殺人の逃亡犯の、こういうおばちゃん的な一面を見ると、ホッとする。

次は、医者と警官のやりとりが面白い。

亀田伸枝が捕まえられず、福井県警がじりじりしている頃の話。テレビで、亀田伸枝が整形手術をしていると聞いた医者が、自分が執刀したことに気付く。

医者が見るカルテ、伸枝とみづほの写真が貼ってある。
医者「やっぱりそっか……」
看護師「警察に連絡しますか?」
医者「ちょっと待って、その前に、車、動かしてくる」
看護師「駐車場じゃないんですか?」
医者「患者さん車でいっぱいだったんだよ」
と、部屋から出る。

大石静「アフリカの夜」第7話より

医者が表通りに着くと、女性警官がちょうど違反を取り締まっていた。

医者「ちょちょちょ、ちょっと待って!ここ、白線内でしょ?メーダーにだってちゃんとお金入れてるし」
婦人警官「480分のオーバーは悪質です。朝から駐めっぱなしじゃないですか?」
医者「患者さんの車で駐車場いっぱいだったのよ」
婦人警官「そんなの理由になりません。免許証と車検証!」
医者「なんだよ、その言い方!
婦人警官「聞こえませんでした?免許証と車検証を出しなさい!」
医者「言ったな!よーし分かった。そっちがその気なら、もう金輪際警察に協力しない。いいな?」
婦人警官「あなたのような方に、協力してもらうことはありません」
医者「もう、本当に協力しないからな!警察が恥かいても知らないからな!
婦人警官「一人で何言ってんの?ほら、さっさと免許証!」

大石静「アフリカの夜」第7話より

小学生のケンカみたいなやりとりに、思わず笑ってしまう。こういう男子と女子、いるいる。
だけど、こんな子供じみたことがきっかけで、亀田伸枝は逃げることができる。亀田は、強運の持ち主という設定なのだ。

次は、八重子にもユーモアがあったんだねと思ったシーン。

八重子は管理人として見学者を案内している。なよなよっとした男子大学生とその母。

母「管理人さん……あなたのお部屋、隣ですの?」
八重子「あ、はい……」
母「お一人ですの?」
八重子「……はい」
母「お若くて、お美しいのに、アパートの管理人。何かご事情がありそうで、心配だわ……」
と。部屋へ行く。
見学人「(八重子にすり寄り)スッチーだったってホントなの?」
八重子「いえ、ウソです……」
見学人「管理人さんのお部屋、お隣だって」
八重子「え……そうですけど……」
見学人「声とか音とか聞こえんのかな?」
母が戻ってくる。
母「管理人さん……洗濯機置く場所、ございませんけど?」
八重子「地下に、ランドリールームがあります」
母「衛生的なのかしらん?」
八重子「はい、もちろん……(ハッ!)住人がオシッコしますけど……」
母「ハッ?」
八重子「そうなんです、その方、どこでもオシッコしちゃうんですよね?お部屋とか、廊下とか……この上にお住まいなんですけど……」
母・見学人「(上を見て)……」
八重子「……」

大石静「アフリカの夜」第4話より

真面目な八重子がこういうことを言うのが面白い。最後、よっしゃ、という八重子の表情がまたいい。

次は、みづほが逃亡した時。みづほが逃げるシーンと福井県警捜査本部のシーンが交互に流れる。

本部長「亀田伸枝の時効も、いよいよ目前に迫った。そこで、我々は、亀田伸枝追跡コンサートを県警音楽隊の演奏で、県下の主要な駅や公民館にて執り行う。曲はこの曲に決定した。ほなら、どうぞ」
警察官が一礼し、CDデッキのスイッチを押す。
本部長の歌声で「追いかけて、追いかけて、すがりつきたいの、あの人が消えてゆく、雨の曲がり角」と恋のフーガが流れる。
本部長、曲に合わせて拳を振っている。

○商店街・表通り
(本部長の歌が続いている。)
みづほ、下駄で全力疾走している。
みづほ「……」

大石静「アフリカの夜」第5話より

本部長が仏頂面で、恋のフーガに合わせて腕を降っている。その様子と、必死に逃げるみづほが交互に出て来る取り合わせの妙。

「アフリカの夜」について書き出したら、止まらない。まだまだ、好きな所がある。

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