「アフリカの夜」⑫チョイ役への愛

ドラマ「アフリカの夜」。主人公は、鈴木京香さん扮する杉立八重子。他に、メゾンアフリカの住人として、礼太郎やみづほ、有香、それに続き、緑、良吉がいる。交番のささやん(梅垣義明)や元婚約者の火野史郎(松重 豊)も個性的だ。

だけど、それだけじゃない。ドラマを観ただけじゃ、名前も分からない登場人物まで、おっもしろいのだ。

まずは、「木村コンサルタント」で働く礼太郎の秘書、兼、愛人?
八重子の歓迎会と称して、メゾンアフリカで歓迎会が開かれる。みんな、礼太郎の過去の女(隠しているけど、八重子の話)について、自分の意見を言っているんだけど、この秘書は

秘書「(酔っている)どうでもいいじゃない、そんなこと。知らない人のことでしょ。つまんない話、真剣にしちゃって、あ~あ(あくび)」
一同「(シラける)……」
緑「(すっと、トイレに立つように、さりげなく立って行く)」
秘書「愛は、やっぱりスキンシップでしょ(と、礼太郎にもたれる)」
有香「なにやってんのよ!眠りたいなら帰って寝なさいよ」
秘書「何か、あたし、嫌われてるみたい。ボス、あたし、帰ります。ボスゥ」
有香「起こさないでよ、せっかくいい気持ちで寝てるんだから」
緑「(戻ってきて秘書に)そういうの愛がないって言うのよ。好きな人が眠ってたら、気持ちよく眠らせておくのが愛だもん」
有香・八重子・みづほ「(同感)」
良吉「初の全員一致」
秘書「ボス、あたし、アフリカ苦手かも、失礼しま~す(帰って行く)」

大石静「アフリカの夜」第2話より

秘書の女性は、あの時代としては一般的な感覚の女性なのではないか。逆に、ああでもない、こうでもないってしゃべってる住人の奇特さが分かる。
ちなみに、この秘書。こっそりいなくなった緑に、玄関の靴を接着剤でくっつけられちゃうというオチつき。

次は、有香が現場で出会う女優の卵達。こちらは、以前書いた様に台本があったので、名前が分かる。

撮影の合間のロケバス。
ミキたちが、Jリーグの選手に合コンでナンパされた話をしている。有香は、ロケバスからでも撮影の様子を見ている。

ミキ「あたしも昨夜、行けばよかったクラブゥ」
有香「いい加減にしなさいよ」
チナ・ミキ・エマ「……?」
有香「どうしてそういうバカな話しか出来ないの?」
チナ「バカかなぁ?どこがバカ?」
有香「バカだからバカなのよ」
ミキ「有香さん、昔ちょっと売れたことあるからって、ひとりでお高くとまってるみたいだけど、あたし達と、どこが違うの?」
有香「とにかく、あんた達はバカ!」
チナ「人のことバカバカ言ってると、どんどん年取っちゃいますよ」
有香「バカ言ってんじゃないわよ」
エマ「真面目に努力してりゃ、何とかなるって世界じゃないもんねぇ」
有香「あんた達と同じ空気吸ってると、頭、おかしくなるわ(プイとバスを降りていく)」
チナ・ミキ・エマ「(顔を見合わせて、下を出す)」

大石静『アフリカの夜」第2話より

「アフリカの夜」に出て来るチョイ役の女性は、こういうバカっぽいキャラクターが多い。しかも、演出の関係か、言い方も棒読みっぽいくて、バカさが際立つ。
さっきと同じで、アフリカの人間と時代を生きる「ナウイ」人間の対比。こういうシーンがあるから、有香の苦労も分かる。鶴亀屋のCMが決まって報われた気持ちに、こっちまでなる。

そして、⑩でも登場した、エキサイティングパブアンカレッジのホステス。

○パブ・ホール・中
礼太郎、緑に腕を組まれている。
ホステス1,2。
賑やかな店内。
礼太郎「何のゲームしよっか?」
ホステス1「チューチュー部長ゲームがいい!」
ホステス2「パイの実……」
礼太郎、着信音がなり、携帯電話に出る。
(中略)
有香「今どこ?」
礼太郎「え?もしもし?」
ホステス1「じゃあ、アタシは部長!」
ホステス2「アタシは課長!」

大石静「アフリカの夜」第4話より

と、ひたすら、礼太郎と有香の電話の障害となる。チューチュー部長ゲームってどんなゲームか!?ググってみたけど、見付からなかった。

次は、良い役。
みづほが潜伏先で働くスナックのママ。

○スナック『黎』・カウンター・中(夜)
カウンターに座っているみづほ。
ママがみづほにビールを注ぐ。
ママ「はいっ」
みづほ「あ……ママもどう?」
ママ「初めてのお客さんなのに、なんか悪いわね」
みづほ、お酌する。
ママ「すいませーん」
みづほ「アタシね、さっき、電話した者なの、働きたいって」
ママ「あ、あ、あら~……悪かったわね」
みづほ「ううん、いいのいいの。その、ママの断り方がね、すんごく優しかったから、アタシほっとなっちゃって。だから、飲みに来ちゃった。ハイ」
みづほとママ、乾杯し飲む。
ママ「何か、事情ありそうね?」

大石静「アフリカの夜」第6話より

結局、この後、みづほの身の上話を聞いて、働かせてくれることになる。逃亡中、身も心も疲弊した亀田伸枝は、こういう情に厚い人物に吸い寄せられていくのだろう。

あけぼの塾の山根。八重子に採用を知らせる電話を掛けた時のこと。

山根「講師の登録写真を撮りますので、出来ればおしゃれをしてきていただきますと、嬉しいですねぇ」
八重子「はい、おしゃれですね」
山根「鎖骨の見えるお洋服とか……」
八重子「?鎖骨……?」
山根「体のフィットを強調するピッタリフィットも非常によろしいですね」
八重子「え??」
山根「では。十時にお待ちしております」
八重子「はい。どうもありがとうございました」
と、電話を切る。
八重子「ハ~!……?……ピッタリフィット?」

大石静「アフリカの夜」第3話より

案の定、ノースリーブ姿の八重子の写真が、塾のポスターになってしまう。山根は、何度か出て来るが、味わい深いキャラクターだ。決して、変態ではない。八重子がトラブルを起こしたときには、保護者の間で盾になってくれたりもする。

まだまだ、味わい深いチョイ役はたくさんいる。沖縄のホテルで有香に話掛けた女優の卵、八重子を追っかける記者、クリーニング屋の小島……
それはまた別の話……

結論
世間一般からはみ出た主要人物の対比として、ちょい役を使う


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