「アフリカの夜」⑱礼太郎が兄だったら

ドラマ「アフリカの夜」。佐藤浩市さん演じる礼太郎はカッコイイ。金持ちの実家から家出して、大企業からもらうお金で商店街の小さな店を助ける。女に「道は開かれている」と本気で思わせる。そんなお兄ちゃんだったら、緑じゃなくても好きになる。

礼太郎と緑のやりとりで好きなのは、第7話。八重子の部屋から帰ってきた礼太郎に緑が詰め寄るシーンだ。

緑「ついに管理人さんとエッチしたんだ?」
礼太郎「ハァ……お前なぁ、いい加減に人のこと監視するの止めろよ」
緑「……」
礼太郎「やってないよ、ダンスしてただけ」
緑「ダンス……?踊るダンス?」
礼太郎「そう……」
緑「お兄ちゃんのいつものパターンだとやってるシチュエーションでしょ?」

大石静「アフリカの夜」第7話より

緑は、アフリカの市原悦子なのだ。
その後、八重子が部屋で一人パスタを食べるシーンを挟んで、また礼太郎の部屋に場面が戻る。柱を背に、緑と礼太郎が背中合わせで立って話している。大人な雰囲気。

緑「今まで誰にもプロポーズしたことないって、あれ、ウソだったんだ……」
礼太郎「……」
緑「手が出なかったんだ……」
礼太郎「……!?」
緑「八年前にプロポーズしてから、ずっと求め続けてきたものが目の前にあると思うと……」
礼太郎「……」
緑「あの人、他の人とは違うんだ……」
礼太郎「……」
緑「特別なんだ……」
礼太郎「……」
緑「だから手が出せなかったんだ……」
礼太郎「……」
緑「アタシ、お兄ちゃんがお隣さんとこのままずるずる結婚なんかしたら最悪だって思ってたけど、管理人さんに比べたら水羊羹なんて問題じゃなかったんだ……」
礼太郎「……」
緑「あの人、天使みたいな顔して……悪魔だったんだ……」
礼太郎「……」
礼太郎、緑の頭に手をやり、髪をくしゃくしゃにする。
礼太郎「お前な……もうちょっと大人になれよ……」

大石静「アフリカの夜」第7話より

緑の叶わぬ思い。一番近くにいるのに、絶対に結ばれない兄と妹。そんな緑の切ない気持ちが伝わってくる。
この時のともさかりえさんの表情が好き。始めはいつも通り、何考えてるか分からないような笑顔だが、一回目の「手が出なかった」辺りから曇ってくる。そして、言葉もギリギリ聞き取れるくらいの速さに。緑の思いが伝わってくる。

礼太郎が、緑の髪をクシャクシャにする。礼太郎にとっては、どこまでいっても妹なんだ。緑の気持ちになって、切なくなる。

繊細で、何でも分かっちゃう緑。人のこと、いちいち監視して、でもそれを天真爛漫で楽しんでやって、かわいい。


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