ドラマ「アフリカの夜」。八重子と礼太郎による大人の恋愛話が軸なのだろうが、そう思えないほど要素が詰まっている。
八重子のバカ女カタログ女時代の象徴、それは元婚約者の火野史郎。松重豊さんが、狂っていながら、人間らしく、憎めない火野史郎を演じている。
出所してすぐ、八重子に復縁を迫るが、きっぱりと断られる。
1話のラストシーンで、雨の中、懲りもせず復縁を迫りにアフリカへ来る。
こんな人が居たら怖すぎるのに、なんだかおかしいのは、なぜか。
①関係のない緑が「キャー」と叫ぶ
普通なら、八重子がキャーという場面で、違う人が言う。しかも全然関係ない人が飄々と。これは、「はずす」だけじゃなく、トリックスターの緑が言うことで面白く変わる。誰が言うかが大事。
②八重子と礼太郎の再開という大切な場面で、敢えて史郎。
ここは、要素がてんこ盛りでヒートアップする場面。8年越しの再開に邪魔が入る。衝撃的な再開となる。
そして、有香が「レ~タ」と呼んでいるのを見て、緑が礼太郎と有香が付き合っていることを知る。史郎のストーカーがメインになりそうなものだが、そうはさせない大石マジック。
→ヒートアップする場面には、要素をたくさん絡ませる!
③「エキセントリック」な割には、意外とヤワな史郎、の描写。
エキセントリック=風変わり
松重さんの身長に奇異な感じをまとわせたらコワイはずなのに、そこに「意外とヤワ」要素を入れる。外すテク。
その後も史郎は、八重子を探して丸ちゃんに訪れたり、あけぼの塾の周りをうろついたりする。借り保釈中だったので、ストーカー行為で留置所に入れられるが、逃亡。このシーンも、印象的。
バラの絵を見ているシーンから、回想を挟んで、弁護士が倒れている、しかも、窓が開いてカーテンが揺れている、という流れ。映像で分かる。しかも、バラの絵が、何とも言えず不気味。
しばらく逃走しているが、6話の終わりで、あけぼの塾に現れる。
ここ、ひやっとする。
黄色いバラを持っているところが、異常。そして、ここで、留置所の絵のバラに意味があったことが判明する。第7話のトップシーンで、講義中の八重子の教室に、火野史郎が侵入してくる!
バラの話から入るのが、ヤバくてコワイ奴。
更にヤバくなる史郎。
かつての栄光「A採用」をここで口に出すあたりが火野史郎だし、そんな史郎と結婚しようとしていた八重子。「A採用」「本店勤務」「総合企画部」はカタログ女の象徴。
このあと、八重子が自分の過去との決別するのだが、それはまた別の話。
おまけ
第1,2話の脚本には、火野史郎の一人称が、「僕」だけでなく「俺」も使われている。しかし、ドラマでは全て「僕」。史郎は自分のことを「僕」と言いそうな奴。さすが松重豊さん。