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デジカメUI入門《まとめ》01
この記事は、以前書いていた同名タイトルのマガジンを、加筆/再編集してまとめたものです。
01~03の3部に分かれています。
以前の記事を「全部」読んでくださった方は読まなくても大丈夫ですが、まとめて体系的に見直すことで、デジカメが私たちにもたらした「全部入りのデジタル体験」を再認識できます。
こんな人に読んでもらいたい
「デジカメUI入門」が他のカメラ本や写真本と何が違うのか少し説明をしておきます。
まず特定のカメラの操作方法や写真の撮り方を説明する内容ではありません。
カメラ機能について、とくにソフトウェアが実現する機能を理解することと、
撮影について、どんな操作をおこなえば、さまざまな状況に対応できたり、さまざまな表現がおこなえるのかについて、
ユーザーインターフェイス(デジカメUI)の開発で考えていたことを中心にして書いたものです。
開発者が想定していた利用シナリオと思想を知ることで、より深くデジカメを理解でき利用できるようになります。
もしあなたが次のどれかに当てはまるのであれば、是非知っておいて欲しいことを書きました。
①ユーザーインターフェイスに興味がある
②カメラの歴史と未来に興味がある
③UX/UIデザインに興味がある
デジカメUIには、デジタル体験と未来の全てがある
ちょっと大袈裟ですが、デジカメUIを真剣に考えると、これからのテクノロジーや社会と繋がっていることが分かります。
ソーシャルグラフ、ビックデータ、AI、ロボティクス、5G通信が見えてきます。
ゲームの世界ではPokémon GOとかNintendo Laboとか次々と新しい展開があり、クルマは自動運転車に向けて突き進んでいます。
カメラの世界もそれと同じくらいワクワクするものなのです。多くの方にそのことを感じてもらい、今や日本のお家芸といえるカメラを盛り上げていきたいと思います。
デジカメUI入門:0 はじめに
これから10個の章を通して、デジタルカメラのユーザーインターフェイス(以下UI)について体系的に学んでいきます。
《まとめ》01_デジカメUIの基本構成(この記事)
0: はじめに
1: 撮影モードと再生モード
2: 撮影モードの中身
3: メニュー体系
《まとめ》02_撮影現場でのUI
4: フォーカス
5: ドライブ
6: 画質と画調
《まとめ》03_より広く楽しむためのUI
7: カスタマイズ
8: スマホ連携
9: フォトSNS
10: 未来のデジカメ
このマガジンを書こうと思ったのは、CP+(カメラショー)で多くのユーザーが各社の最新カメラを前にして、思い通りに操作ができないことを目の当たりにしたからです。
メーカーの人にとっては当たり前の操作方法が、多くのユーザーにとっては良く分からない複雑なものに見えているのです。
体系的にUIを理解することで、どんなカメラでも最低限の操作ができるようになります。
カメラを購入するときに最適な一台を選ぶことができたり、その後しっかりと使いこなすことができます。
そうなればメーカーにとってもユーザーにとっても嬉しい状況に向かうと思い書くことにしました。
UIを理解するために必要なこと
UIは、カメラのような機器やサービスの内部にある機能をユーザーがコントロールできるようにするためのものです。また同時に機器やサービスがユーザーを適切に誘導することにも使われます。
このUIは、機器とユーザーの関係性や、利用状況によって評価が大きく変わります。UIに優劣は無くユーザーや利用状況との「相性」があるということです。
特に、ユーザーが機器を操作する前にもっている「操作イメージ(専門的には概念モデルといいます)」と一致しているかどうかは大きな影響があります。
使い始めてから作られる操作イメージもありますが、最初に正しい操作イメージを持っていた方がその後の理解もスムーズなのは言うまでもありません。
そのためデジカメUI入門では、メーカーがユーザーに提供したい体験(UX)と世界観を明らかにし、それをベースにUIを理解できるようにしていきます。
最終的には、機器のUIを見ることでメーカーがユーザーに提供したいUXが分かるようになり、それが自分と合っているかを判断できるレベルを目指します。
では早速始めましょう。
デジカメUI入門:1 撮影モードと再生モード
最近ではあまり意識しなくなっていますが、デジカメには「撮影モードと再生モード」があります。
デジカメを理解する上でもっとも重要なことはこの「再生モードがある」ということです。
そんなの当たり前と思う人も沢山いると思いますが、ほんの20年前までは撮影した画像がどんな風に撮れているのかを確認するのに、何日もかかっていたりしたのです。(そのときに失敗に気づいても撮り直しはできません)
チェキのようなインスタントフィルムはありましたが、価格も高くあまり一般的にものではありませんでした。
デジカメが一般に使われ始めたころは、今と比べて画質が良いと言えませんでしたが「直ぐに再生して見ることができる」「誰かに見せることができる」ことに大きなインパクトがあったため、高価な製品だったにもかかわらず現在のようにカメラの主流になったのです。
液晶モニター付デジタルカメラ カシオ「QV-10」
このカメラ以前にもデジタルで記録できるカメラはありましたが、画像をみるためにパソコンが必要など不便だったため、あまり普及しませんでした。
撮影・再生モードの切り替えUI
多くのカメラでは、電源ONでまず撮影モードとなり、再生ボタンを押すことで撮影と再生を行き来します。
シャッターボタンを押すことでも再生モードから撮影モードに戻るというのが最近のデジカメの共通UIになっています。
再生モード中は多くのスイッチやダイヤルが撮影モードと違う動きをしますが、シャッターボタンという強力な存在があることで、確実に撮影モードに戻ることができます。
最近と書いたのは、昔は多くのメーカーが、撮影をしたければ撮影モードボタンを押す、再生したければ再生モードボタンを押すという2ボタン式のUIを採用していました。
その方が、ユーザーが現在の状態を意識しなくても、使いたいモードのボタンを押すというシンプルなルールにすることができたからです。
カシオのコンデジは今でもその流れを続けています。
最近のデジカメを普通に使っていると、再生モードボタンが一つあれば、撮影モードと再生モードの行き来に問題が無いように感じますが、昔は再生モードがカメラにあるということを理解できていなかったり、モード状態が認識できない人が実際にいたのです。
画像が確認できることの拡張
先ほど「再生モードによって撮影した写真がすぐに確認できる」と書きましたが、実際の製品ではもう少し細かく画像確認をおこなうUIが提供されています。
撮影モードでシャッターを切る前にも、「ライブビュー(スルー画という場合もあります)」という形で撮影結果がプレビューされています。これも画像確認UIの一種です。
特にコンデジやミラーレスでは、露出補正やさまざまなエフェクトの内容がリアルタイムに反映されるようになっていることで、撮影設定UIの一部としても機能しています。
さらにシャッターを切った直後には、撮影のフィードバックとして画像が短時間だけ自動再生される「ポストビュー」があります。
この一瞬のポストビューで撮影の失敗に気づいて撮り直しをしたことがあるという人は沢山いると思いますが、これもデジカメが登場して生まれた新しいUIの一つなのです。
撮影・再生サイクル
銀塩カメラからデジタルカメラに移行したときにもっとも重要な変化は「撮影した結果が直ぐに分かる」ということです。
このことによって失敗への気付きや、より良い表現への意欲が湧くことになります。
次に重要な変化は、結果が分かることで生じる撮影動機の増大に対して「撮影コストがかからない」ということです。
この2つの変化によって「(人に見せる)価値ある写真」が生み出され、こんにちのSNSでの写真の価値が作り出されたと言えるます。
またそのSNSが写真を撮影する動機を増大させ、正のスパイラルが今も続いています。
この図で重要な点は、撮影に必要なものとして、事前イメージ、学習、機材購入、設定、構図・タイミングの全てが含まれていることです。
また再生を撮影後の画像確認から、SNSへのシェア、思い出鑑賞までの全てを含まれています。(一般には「活用」という場合もある)
デジタルによって、それらがつながり「動機→実行→振返り→動機・・・」のサイクルを構成し回っています。
20年前にデジカメのUIアーキテクチャを作ったときに意識したのは、このデジタル技術による「撮影・再生のフィードバックサイクル」を軸にすることでした。
最初に重視したのが、撮影モードと再生モードの行き来に関するユーザビリティの向上で、一部の業界の人(とくにユーザビリティテスト関係者)はRec/Playの行き来を1ボタンでおこなうか、2ボタンかが議論されていたことを覚えているのではないでしょうか。(一時期2ボタンが一世を風靡しましたが、今は1ボタンが主流)
次に設定内容を正確に反映できる「ファインダー(背面モニタ/EVF)」でした。
露出補正やホワイトバランス、エフェクトが反映できるようになったことで、シャッターを切る前に「撮影結果」を得ることができるようになり、ミラーレスとEVFの組み合わせは正にこの点に対する必然的な答えであったと思います。
その後は、撮影の設定時点で撮影結果を予測できる「作例提示」(シーンモードなどに今でも残っている)や、写真を撮りに行く前に予習できるソーシャルな写真共有サービスや、
撮影のフィードバックを「いいね」の数で受け取るSNSなどが登場し、撮影の動機と実行の大きなフィードバックサイクルが完成した状態です。
再生モードの基本操作
撮影モードの操作については、これから詳細に解説をしていきますので、一旦ここで再生モードの機能と操作についてまとめておきます。
<画像送り>
まず再生モードに移行した直後は、直前に撮影した画像’(最終コマ)が表示されています。
これは、デジカメの再生モードが「撮影した画像の確認」という目的で設計されているからです。
最終コマから左へ戻ることで、何枚かまとめて確認したりできます。
多くのデジカメにはメニュー操作などにの使う十字キーが配置されていて、その左右キーを使って画像送りをおこないます。
また連写などの性能が上がることで一度に撮影する枚数が増えてきたこともあり、上位機種では大型のジョブダイヤルを使って一気に画像を確認することもできるようになっています。
もう一つの「再生して鑑賞する」という目的では、あるイベントの最初から順番に再生していった方が自然です。
そのような場合には、最終コマから一つ右に進むことで、画像の先頭に移動できるようになっているため、上手く2つの目的を実現することができているのです。
このループする再生モードの概念モデルは、デジカメUIにとって非常に重要なものの一つでした。
<画像の詳細確認/全体確認>
画素数が増え高画質な写真が撮影されるようになっても、人間の手で操作するデジカメを極端に大きくすることはできません。必然的に液晶モニタの大きさは3~4インチ程度が上限となってしまいます。
その大きさでピントやブレの有無などを確認するためには画像の一部を拡大して表示する必要があります。
反対に画像群を俯瞰してみるインデックス表示があり、拡大と縮小(インデックス)はコンパクトカメラでも一眼カメラでも「対の操作」になりようになっています。
このインデックス表示と拡大表示をシームレスに切り替えることができる概念モデルも初期のころに作られました。
それぞれの機能に対しても、短時間に画像を確認できるように、フォーカスポイントや認識した人物を拡大表示してくれたり、連写した画像をグループ画像として扱ってくれたりときめ細かい工夫がされている機種もあります。
スマホが登場してからは、デジカメの中で長期間の画像を管理している人は減っていると思いますが、カレンダービューや個人ごとのフォルダに分けてくれるなど、画像管理の機能も再生モードの役割の一つになっています。
<画僧の消去/活用>
画像を見つけ、詳細を確認した後は、失敗していれば画像を消去し、上手く撮れていればスマホに転送したりして活用します。
特に画像が消去できることは、デジカメに再生モードが付いていることと同じくらいの重要な機能です。
デジタル以前のフィルムの時代にはシャッターを切るたびにいくらかの費用が発生していました。また撮影枚数にも上限があり、日常のちょっとしたシーンを気軽に撮影したり、表現にこだわって何度も撮影することは一般の人にはできなかったのです。
デジカメでは、失敗した写真を消去することで、コストを気にせずに、撮影枚数を気にせずに何度でも撮影することができるようになりました。
このことが撮影のハードルを下げ、写真の内容に大きな変化をもたらすことになります。
年長の人の中には、昔のフィルム時代は「真剣」に撮影していたから良かったという人もいますが、私はこの気軽さこそが、新しい映像表現を切り開いていくと信じています。今ほど無限に表現を追求できる時代は無いのですから。
画像に対する処理は消去だけでなく活用にも広がっています。
以前はカメラの再生モード内で音楽付きのスライドショーなどをアピールしていた時期もありましたが、スマホの普及によってそれらは全てスマホ連携としてスマホアプリに任せるようになっています。
デジカメUI入門:2 撮影モードの中身
撮影という行為が、撮影そのものと再生(画像の確認)のサイクルによっておこなわれていることを前の章で書きましたが、今回は撮影モードの役割について解説していきます。
ちょっと長目ですがお付き合いください。それだけ現在のデジカメの撮影モードは拡大化複雑化しているのです。
昔からある撮影モード 「PASM」
撮影モードという考え方は、自動露出(AE)が生まれたときに、絞り値、シャッター速、露出補正の中から2つの値を決めると3つ目の値が自動的に決まる性質から4つのパターンとして作られました。
それまでは、絞り値とシャッター速をそれぞれ設定するMモードしかなく、撮影モードという概念そのものがありませんでした。
その4つのパターンがこちらです。
Pモード
ユーザーが露出補正を決めると カメラが絞り値とシャッター速を決める
Aモード
ユーザーが絞り値と露出補正を決めると カメラがシャッター速を決める
Sモード
ユーザーがシャッター速と露出補正を決めると カメラが絞り値を決める
Mモード
ユーザーが絞り値とシャッター速を決めると カメラが露出補正の値を表示してくれる
PASMはどれを使っても適正な露出を得るという目的は同じで、結果としてそれぞれの値が同じであれば写真としては同じ仕上がりになります。
3つの値には、作画表現をおこなう上で次のような特徴があります。
ユーザーは、自分の表現で意識したい値を直接コントロールできるモードを使うことになります。
絞り値
ピントが合っている範囲(被写界深度)やボケの大きさをコントロールでる
シャッター速
動いているもののブレや軌跡の表現をコントロールできる
露出補正
画像の明るさをコントロールできる
水の流れを表示するときはSモード、ボケを表現したいときはAモードという風にモードを切り替えて使うユーザーがいる一方で、1つのモードに固定して全く動かさないユーザーもいます。
お任せの「AUTO」モードの登場
さらにフラッシュ機能や連写機能、マクロ機能などいくつかの機能が出てくるとそれらをユーザーが自由にコントロールできるモード(PASM)とカメラ任せで撮影できる「AUTOモード」という考え方が登場しました。
Pモードのことを「プログラムオート」と呼んでいたこともあり、呼び方がややこしいことになっています。
この自動露出から自動設定のオートの対象の拡張は、将来さらに進み、オートと言えば自動撮影(ドローンで勝手に撮ってくれる)へと進んでいくかもしれません。
この考え方は、AIなどの登場によってさらに進化して撮影モードの基本になっていきます。その辺りは後半に記述します。
デジカメになって変わったこと 「シーン(SCN)」モードの再定義
フィルムカメラの時代から、スポーツモードやポートレートモード、風景モードなどいくつかの「シーンモード」がありましたが、カメラが持つ表現のパラメータはPASMと変わらないため、単にそのシーンの一般的な表現に合わせて、絞り値やシャッター速を調整するだけのものでした。
ことろがデジカメの登場によって、画像処理の方法などもシーンに合わせて最適化することができるようになり、シーンモードの意味合いが大きく変わってきました。
さらに画像処理だけでなく、被写体や状況を認識しフォーカスやシャッターを動かすようになってきており、一部の撮影テクニックや表現もその中に含まれ始めており、シーンモードは、「シーン(状況)」と「テクニック/表現」の掛け合わせたものになってきています。
そのため今後のシーンモードの役割は、撮影者の意思をカメラに伝え、それに応じてカメラが適切な振る舞いをするための「オブジェクト(単位)」になっていくと考えられます。
写真にどこまでの冒険が許されるのだろうか?
これはカメラを設計する上、写真を撮る上で「永遠の命題」です。
人生の中には、結婚式や新婚旅行など絶対に失敗できない写真があり、二度と無い瞬間があります。
だからと言って、失敗防止だけを目指すとつまらないものになってしまいます。
ユーザーに提供する作画範囲を広くすれば、その中には「失敗」と判断される写真が含まれてしまいます。逆にオート技術を使って失敗しないようにすれば「表現」の幅が狭まってしまいます。
表現の幅が狭まるということは、世の中が似たような写真ばかりになり、
誰でも同じ写真が撮れるのであれば、自分の表現と思うことができなくなってしまいます。
それに連動するように、その写真の価値も低くなってしまいます。
「私の写真」という自己帰属感
今後AIなどの技術が進めば、技術的には失敗しないカメラ、全てを撮影しておき、後から切り出すようなカメラも登場してくるでしょう。
しかしそれを手放しで喜んでいてはいけない面があります。
それは、写真を「私のもの」と感じる自己帰属感が大きく変わってしまうからです。
①自分がシャッターを切った写真
②自分が細かく設定を決めた写真
③自分が写っている写真
④自分の好きな者(物)が写っている購入したり、もらった上記以外の写真
カメラ任せ(オート)でシャッターを切っただけの写真と、作画意図を実現するため細かく設定を決めて撮影した写真では、<私の>という部分に大きな違いがあります。
ここで明治大学の渡邊恵太さんの著書である「融けるデザイン」で重要なキーワードとなっている「自己帰属感」に当てはめて(拡大解釈して)<私の写真>について考えてみます。
<私>と何らかの関わりを持ち写真が撮影され、それがネットやリアルな世界を時間や空間を超えて<私>を離れて一人歩きするとき、その帰属感はどのような文脈によって生み出されるのでしょうか。「いいね!」をもらった時に、嬉しいとはどういう帰属感からくるものなのか理解する必要があります。
<私の一部>としての写真を得るためには、自由があることと、その中で自己決定(コントロール)ができて、それが結果に影響を与えているという認識が重要です。
UIとしての自己帰属感が「レイテンシー」と大きな相関があるように、単なる所有の概念を超えた<私の>というメンタリティーを生み出す「エフェクティブ(効果性)」の認識に注力することがカメラUIをデザインする上でのポイントになると考えます。
撮影設定がどのような効果を生んだのかを認識しやすいUIを提供できれば、創意工夫が進み、自己帰属感も向上します。
アートフィルターは誰の写真?
アートフィルターモードでは、被写体を選び、シャッタータイミングとフレーミングを決めたら後はシャッターを押すだけでアートな写真が撮れてしまいます。
出来上がった写真への自分の貢献度は「何%」と感じるでしょうか。
自分がシャッターを切ったことで撮影できたので100%と考える人もいるでしょうか、
一方で、自分はシャッターを切っただけで後はカメラがやってくれたと思い30%か40%と考える人もいると思います。
確かに何の工夫もせずに撮影したらこんな認識になりまそうです。さらにファインダーを見ながら、少しカメラを傾けてみたり、露出補正で明るさをイイ塩梅にしてみたりしてから、シャッターを切ると50%や60%に上がるのではないかと予想します。
インテリジェントモードとクリエイティブモード
この辺りでだいぶ混乱しはじめた方もいらっしゃると思いますが、カメラのUIの歴史として重要な概念が含まれていますので、もう少しご辛抱ください。
カメラの機能が増え、表現の幅が増したことで、撮影モードはより拡張され、2つの方向へ進化していきました。
それが、インテリジェント系モードとクリエイティブ系モードです。
インテリジェント系モード
カメラが賢くなって自動で最適な撮影をする
失敗したくない場合や、他のアクティビティに集中しているときに利用する
クリエイティブ系モード
ユーザーが主体的に表現をおこなう
失敗する可能性が大きくなるが、撮影体験を豊かにして、撮影された写真の価値が大きくなる
2つの方向をユーザーが選ぶことで失敗のリスクと表現の幅を適切に設定できるようになります。
今後、シーン認識、物体認識、時空間認識、撮影者認識などカメラが撮影状況を認識する技術の進化によってカメラと人の関係は変化していきますが、2つの方向はあまり変わらないかもしれません。
これは写真を撮る目的として「記録」と「表現」が普遍的な価値観になっているからです。
デジカメUIは、これらの思想のもとで進化する技術を用いて、カメラと人間との関係を設計し、具体的なモードとして実現していくことが求められていくことになります。
インテリジェントか、クリエイティブか
写真を「記録」と考えれば、失敗せず、できれば自分自身を含む活動全体を記録したいというのが要求の基本としてあります。
その要求を追求していけば、いずれドローンカメラに任せで確実に記録してもらう未来が描けます。
一方で写真を「表現」だと考えれば、表現者(撮影者)の関わりの度合いと方法が問題になっきます。
カメラはこの2つの要求を満たすために、さまざまな努力と進化をしてきたました。
少し前までは美しく確実に記録する方向に進んでいましたが、ここ数年はユーザーの表現意欲が高まっているためか、ひと手間加えるUIが登場してきています。
記録と表現については、「ライフフォト」と「フォトライフ」という言葉で説明することもあります。
これらは完全な造語(造意)で、ライフフォト(ライフログの写真版)を「生活の記録」としたときに、フォトライフは人生の中での「写真体験」という意味で使っています。
ライフフォトが自分の活動の様子が写っている写真という意味が強いのに対して、フォトライフは自分がカメラを使って撮ることを強く意識しており、その中に表現体験も含まれています。
赤ちゃんとして生まれて親に写真をたくさん撮られ、青年期に初めて自分で写真を撮り、大人になって旅行に行ってきれいな風景写真を撮り、結婚して子供の写真を撮る、子供が成長してまた趣味の写真を撮り、最後は孫の写真で幸せになるというストーリーである。これらの出来事に対応できるカメラとサービスが「フォトライフ・デザイン」です。
モード選択のUI
ようやくモードの整理ができましたので、次にモードを選ぶUIについて見ていきましょう。
PASMの数は変わりませんが、シーンモードやアートモードは多様な被写体や表現に対応するため数が増える傾向にあります。
例えばスポーツモードで鉄道の写真を撮っていた人も、これからは「鉄道モード」ができて、先頭車両のライトにピントを合わせてくれたり、あの金属ボディーに合った画像処理にしてくれたりします。
さらに進化を続ければ、「レトロ鉄道モード」や「新幹線モード」などさらに細分化していくかもしれません。
エフェクトモードも、これまでに無いインパクトのある表現が求められれば、もっと増えていくでしょう。
モードダイヤルによる選択
撮影モードは瞬時に選択できなければシャッターチャンスを逃してしまうこともありますので、沢山の中からゆっくりと選択するのではダメです。
そこで重宝されるのがモードダイヤルです。
参考にOLYMPUSのE-M10 MarkIIIのモードダイヤルを見てみましょう。
このなかで、SCN(シーンモード)、AP(アドバンスフォト)、ART(アートフィルターモード)は、モード選択メニュー(GUI)を呼び出して選択するようになっています。
最後に使ったシーンモードを記憶しているため、良く使うシーンモードはダイヤルを回すだけで使うことができます。
シーンメニュー/アートメニューによる選択
シーンメニューやアートメニューでは、作例を表示することでユーザーが自分の撮影したいイメージを想像しやすくしています。
モード選択がGUIになることで、後から新しいモードを追加することもできるなどメリットがいろいろとあります。
AUTOモード内からの自動呼出し(シーン判別)
シーンモードの数が多くなることで、その中から適切なシーンモードを選択しなければならないという問題が出てきました。
それを解決するために出てきたのが、「インテリジェントオートモード」の中でカメラが自動でシーンモードを選択してくれる機能です。
全てのシーンを識別するまでには至っていませんが、今後はAIの活用でいづれ実現すると考えられています。
Panasonicの「おまかせiA」モードではさまざまな被写体を自動認識できます。
カスタムモード
これだけ撮影モードが増えてくると、全てのモードを使う人はいなくなります。(今まででもいなかったと思います)
そこで重宝するのが、使うモードだけにしたり、モード内の設定を覚えておく「ユーザーカスタムモード」です。
カスタムモードは、登録した時の状態を覚えているため、PASMで最後の状態を覚えているのとは少し違った使い方ができます。
モードダイヤルを動かしてカスタムモードを再呼出すると、登録した状態にリセットしてくれるのです。
例えば、露出補正やホワイトバランスをいじりまくったとしてもリセットするだけでいつもの状態に戻すことができます。(レバーなど物理的なUIで変更したものは対象外になります)
デジカメUI入門:3 メニュー体系
デジカメの操作の多くは「事前設定」です。シャッターを押した瞬間にそれらの設定が実行され1枚の写真となります。(デジカメでは、いくつかの設定ではライブビューが変化することで即時反映しているように感じさせています)
この事前設定には大変多くの項目があり、撮影という限られた時間の中でゆっくりと設定することはできないため、「普段使う設定のための詳細設定」という実に複雑な構造になっていたりします。
大きい視点から見ると事前設定ですが、その中をもう少し細かく見てみると、いくつかの設定タイミングのグループがあることが分かります。
いったい何を設定しているのか?
カメラの中には、設定を変えることで写真の仕上がりが変わるものから、カメラの使い方が変わるものまで多様な設定があります。
特に撮影状況や被写体の状況によって対応しなければならないものが撮影時におこなう設定になります。
それ以外は、撮影前の設定として、ユーザーの好みや撮影目的によって事前に設定しておくことができます。
多くのデジカメでは、これらの設定を3種類の方法に分けてコントロールするようにしています。
撮影時には主にダイレクト操作とクイックメニューを、事前設定にはメニューを使うことになります。
ダイレクト操作
ダイヤルやレバー、機能アイコンが付いたボタンで設定するのがダイレクト操作です。
ボタンを押すだけで変更されるものや、ボタンを押すことで設定画面が表示されるもの、ボタンを押しながらコントロールダイヤルを回すものなどがあります。
いずれの操作方法でも、UIに対して機能が1対1で割り振られていることが特徴となり、常にUIが固定されているため操作に迷うことがなく、スピーディーに操作することができます。
Fnボタンは、使い勝手の良いダイレクトボタンに、好きな機能を割り付けられるもので、上位機種になるほど多くのFnボタンを持つ傾向にあります。
また最近のタッチUI対応のカメラでは、通常撮影画面上にFnボタンを配置できるものも出てきている(割り付け機能アイコンが表示できるので分かりやすい)
十字キーに割り振られたダイレクトボタン(Panasonic DC-GF9)
クイックメニュー(ファンクションメニュー、スーパーコンパネ)
撮影に必要な機能の全てをダイレクト操作にすれば使い勝手が上がりそうですが、限られたボディサイズの中では現実的ではありません。
そこで優先順位的にダイレクト操作にできなかった撮影ファンクションを集めたのがクイックメニューです。
クイックメニューの特徴は、あまり階層を深くせず、少ない手順で項目と値を変更できるようになっていたり、各機能の設定値を一覧できるように工夫しています。
L字型メニューやT字型メニュー、タイル型メニューなどのスタイルがある。
以前は「FUNC(ファンクションメニュー)」と呼ぶメーカーが多かったが、最近では「Q.MENU(クイックメニュー)」と呼ぶのが主流になりつつある。
オリンパスでは、値の候補を見ながら設定できるライブコントロールと多くの項目の値を一覧できるスーパーコンパネを選ぶことができる。
メニュー(セットアップメニュー)
クイックメニューからあふれた機能や基本設定、操作のカスタマイズなど撮影前に設定する機能を集めたのがセットアップメニューになります。
入り口は「MENU」と書かれている場合が多く、中に入るといくつものタブが並んで階層化されており、中に入ると複数のページ(タブ)に分かれています。
カメラ操作のカスタマイズなど、撮影前におこなう設定はこの中でおこなうことになります。
なんども設定を変更する項目はマイメニュータブに集めることで直ぐに使うことができます。
《まとめ》01はこれで終わりです。続きはこちらのリンクからお進みください。
※各製品の画像はメーカーのホームページから引用しました。
画像にリンクが貼られています。