〈新企画〉同じ書き出しからはじめよう!④〜感想戦〜【ともや】
〈同じ書き出し〉から初めて、それぞれの文章を紡ぐ企画【同じ書き出しからはじめよう】。私、ともや発案の企画から、メンバーの2人がアンサーとして物語を書いてくれました。私の作った一文から、それぞれの持ち味を活かした文章が派生されて、発案した側としてはとっても楽しめました。今回は、【感想戦】と称して、お題についてや互いの創作の感想を言い合う回としました。
今回の企画、それぞれの作品は以下を参照下さい☺️
↓企画の概要
↓【しょう】作 『アカルイミライ』
↓【ゆかこ】作 『美しい怪物』
◯それでは、ここから感想戦スタートです!
[ともや]
最近ちょっと短歌っぽいの詠み始めてる中で、57577とまた別で、ちょっと面白い文章を思いついたので、これで2人に何か続く文章を考えてもらったらどうなのかなっていう風に思ったんだよね。で、今回のお題にした文章っていうのがこちら。
この文章の何が自分の中で面白いって感じたかというと、
など、この一文の主体、佐藤、高嶋はどんな関係なのだろう。ここから何か物語や文章が続けば、それが見えて面白いんじゃないか。ってことで、今回は企画として、しょうさん、ゆかこさんの2人にお願いしました。無理難題だったと思うけど(笑)、今回2人ともすごく面白い小説書いてくれて、めっちゃニヤニヤしながら、2回も3回も読ましてもらいました。
さて、ここからはそれぞれの小説の感想戦ということで移っていこうと思います。
◯まずしょうさんの小説『アカルイミライ』から!
[ゆかこ]
まず書き出しが遠い遠い未来と、Dで始まったから、何か、何に繋がるんだろうなって思って(笑)
[ともや]
SFの設定だったよね。
[ゆかこ]
でも、オチがしっかりついてて、ここに繋げたんだっていうのがあって、面白かった。
[ともや]
うんうん。既存の作品へのオマージュとか、いろんな要素をくっつけてきたもんね。
[ゆかこ]
そうそうそうそう。
未来の技術の要素もありつつ、でも、どれだけ進歩しても、人と人の繋がりっていうのが消えなくて、それをまた取り戻そうとしてるっていうところが、しょうさんぽいなと思った。
[ともや]
たしかに。今ゆかこさんが言ってくれたみたいに、どれだけ技術が進歩した未来でも、「ごめん」っ言えない素直になれなさとか、それを言えることで繋がり直すっていう人間ぽさは残るっていう風にしてくれてるのが良かったよね。
[しょう]
既存の作品のモチーフは入れたかったの。でも、それを前面に出しすぎるとストーリーがなくなっちゃって、人間ドラマっぽくならないから、極力薄く薄く散りばめるようにしたの。これってあんなんちゃう?みたいな感じにしておいて、最後の最後でやっぱりな!って感じにしたかった。
[ゆかこ]
うんうん。
[しょう]
あとは自分でも日記をつけ始めて、過去の自分を振り返る機会があったときに、過去の自分に声をかけることができるなら、どんなことを伝えてあげるだろう?って思って。こんなこといいな、できたらいいなじゃないけど、それも物語に組み込めたらなって。
[ともや]
うん。その設定があったから、主人公の罪悪感とか、設定を活かした和解の仕方とか色々きれいに作用していた気がする!
[しょう]
裏テーマが一つあって、この世界では技術が進歩しまくってて、培養食が中心になっていて、もう牛豚鶏とかが絶滅しても食事には困まらない。そんな世界ではもうペットを飼うことが忘れ去られた、人間と機械だけの便利な未来っていうのがベースにあって。そこに〈猫を飼う〉ことの意外性にした。でも、どれだけ時代に変わっても便利になっても、やっぱり人は素直になれないし、変わらないんだじゃないかっていうことを一番描きたかったかな。
[ゆかこ]
根底的なところはね、変わらないよね。
[ともや]
そうだね、技術が変わっても、結局それを使う奥には人がいるから、「ごめん」も「ありがとう」も残り続ける。文明がどれだけすすんでも、結局人同士の関係が大事だということを見せてくれたし、高嶋みたいな頭いいやつが22世紀に猫を飼い始めるなんてっていうニュアンスがうまく伝わってたと思う。
[しょう]
いやあ、ちょっと嬉しい。嬉しすぎて恥ずかしすぎてます。はい。
◯つぎはゆかこさんの小説『美しい怪物』
[しょう]
この最後の最後の3行。最後の3行がすごいよね。“君は美しいよ。君は美しい怪物”。はじめて小説書いたの?思うくらい、好きって思ったな〜。
[ともや]
俺は、〈あの高島が〉から始まったにも関わらず、次すぐに〈そうか〉になって納得してて、こういう展開の仕方もあるんや!って驚いた。主体が〈あの〉で意外性を感じたはずが、〈そうか〉ってすぐに納得に転換するあたりに、2人の関係性を匂わせてた!
[ゆかこ]
うんうん。
[ともや]
そこからラストまで、すこしミステリチックに進めていったり、名前を秘密にしてオチを付けてるところとかも、もう小説になっててびっくりした!それだけじゃなくって隠れて短歌も入ってるよね?そこもゆかこさんらしいと感じた。
でも、最後まで高嶋瞳子の心情が読めなくって。たぶん皐月もつかめてなくって、だから美しい怪物なんやろうなっていうふうに読んだんだけど、どう?
[ゆかこ]
うん。ありがとう。瞳子の怪物感の前に、実は1人、別次元におられるの気づきましたか?
[ともや&しょう]
………え?
[ゆかこ]
ええ。私1人殺してしまったのよ。
[ともや&しょう]
ええ〜!
[ゆかこ]
佐藤、高嶋、皐月くん(主体)の3人は同じ会社に新卒で入った同期なんだけど、皐月くんは死んでしまっていて。それでも2人とも合間を見ては、お墓に来てくれるっていう設定にした。
[しょう]
なるほどね。はいはいはいはい…!佐藤が皐月くんのお墓の前で冒頭の『あの高嶋が猫を飼いはじめた』という話をしたってことか…!
[ゆかこ]
そう。それで瞳子(高嶋)も皐月くんのお墓の前で、一方的に1年分くらい喋って帰っていくって感じなんだけど、なんか亡くなった人に話すときってこんな感じなのかなと思って。死んだ人と喋るときって、こっちが一方的に喋ってるんだよね。聞こえているかもわかんないし。でも、もしかしてどっかで聞いてて、こっそり相槌打ってたら面白いなって思って。
[ともや]
主体というよりも、残された側のストーリーなのか。残された側の言葉も、もしかして聞いてくれてたら嬉しい。この物語には、祈りとか希望も込もってる。
[ゆかこ]
そうですね、うん。
美しい怪物って書いたのは、高嶋さんがちょっとやべぇ女で、飼った雄猫に元彼と同じ名前をつけて連れてくるこいつは怪物だぜっていう女にしたんだ。実はもっとやべえ風にも書いてたんだけど、それはやばすぎてやめた(笑)
[ともや]
もっとやべえ方も読みたいな(笑)
[ゆかこ]
最後に主体死んどるやん、瞳子こわって思ってもらえればいいかなと思ってたんだけど(笑)。私の中では死んだ人と生きてる人の境目も、あんまりないんじゃないかなって思ってて。それを書きたかったんだあ。
[しょう]
生きてる人が、死んだ人に話しかけたり、声をかけたり、口に出さなくても心の中のモノローグであっても。そうやって声をかける行為は、忘れないでいてあげるというか、ちゃんと私の中では生きてるからねって行って、伝えてあげる、かつ自分もその人の思い出を反芻することで、再認識、再確認できる行為。うん、いい。いい…!!
◯〈お題〉の感想
[ともや]
いやあ〜すごいね。それぞれ全然持ち味が違うな。
ふたりは書いてみてどうでしたか?
固有名詞も〈あの〉も全部定められた状態で始まるっていうのは?
[しょう]
今回に限っては私は書きやすかったかな?
〈あの〉に合わせて関係性のベースを作るだから、あとは登場人物たちに好きなだけ自由に走ってくれっていう感じで、すごい書きやすかった。
[ゆかこ]
私はね、難しかったですよ。まず佐藤が誰か、高嶋が誰か、そしてそれを聞いてる主体は誰かっていうところで…。最初聞いたときは佐藤も男、高嶋も男、俺も男、みたいなイメージで作ってたんですよ。女の子って、あんまり名字を呼び捨てで呼ばない気がして。でも、ちょっと変えて、女の子って考えてもいいかなと思って、そこからはちゃんと進んだ。
[ともや]
(笑)
でもチャレンジしてもらえてよかったです。
たった1文から、それぞれの物語を繰り広げて、しかも伏線まだ作ってね。みんなすごいよ。
[ゆかこ]
登場人物殺すの大好きなんだよなあ。
ちょっと不穏な空気を出したくて怪物って入れたんだ。
[しょう]
私は逆にハートフルストーリーを書いたの初めてかも。男の友情ものも書いたのも初めてだったから、お題のおかげでいい経験させてもらいました。
[ともや]
また、こうやって文章で遊びましょう(笑)
-----------------------------------感想戦おわり✂️
◯感想戦を終えてのひとりごと
同じ一文から始める。それも固有名詞も固定された状態で。とても難しいお題だったと思います。でも、そこから2人は自由に発想を広げてくれました。
同じ一文からでも、そこから紡ぐストーリーは人それぞれの個性が出る。当たり前っちゃ当たり前のことなのですが、書き出しを固定することで、そのことをより知れる機会になりました。
生みの苦しみはあったでしょうが、感想を話す2人がとても楽しそうで、こちらまで嬉しくなりました。
実は冒頭の高嶋というのは、
/
📱プルルル…プルルル…
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…おっと、噂をすればあの高嶋から電話です。
すこし失礼します。
…もしもし? どうした? え? なになに
『ついに佐藤が西園寺に飼われはじめた』だって??
……やれやれ。ここから続く物語は長くなりそうだ。
すみませんが皆さん、また次のnoteで会いましょう。物語の続きは、みなさんにお任せします。
それでは、今宵はここまでに。
ともや
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