LE SSERAFIMにハマってしまった件
とにかくハマってしまった
ミュージカル映画とハロプロ(特に田中れいな)が大好きな人間だったはずが、この数か月間ですっかりケーポペン(K-POPのファン)となってしまった私。気がつけばIVEのファンクラブにもaespaのファンクラブにも入会している自分がいてびっくりしています。
そんなケーポペンライフを送っていた私ですが、ついに人生で一番といっていいくらいに好きなアイドルグループに出会ってしまいました。それがLE SSERAFIM(ルセラフィム)。
LE SSERAFIM(ルセラフィム)とは?
メンバーに元HKT48および元IZ*ONEあり、日本でも圧倒的な注目度を誇る宮脇咲良さんがいることでも知られるLE SSERAFIM。
そのほかのメンバーとしては、咲良と同じく元IZ*ONEメンバーであるチェウォンちゃん、もう一人の日本人メンバーであるカズハ。IZ*ONEを世に送り出したオーディション番組Produce48に出演していたホ・ユンジンさん。そしてダントツ末っ子のウンチェちゃん。この5名のメンバーがいます。
なんにせよ元IZ*ONEの人気メンバーが2人もいることから、デビュー前から注目度は非常に高く、デビュー作も記録的な売上を記録することになりました。
が、正直当初の私のイメージはあんまり良くありませんでした。というのもこのデビュー曲の衣装。あんまり私には刺さらず、なんだか深夜アニメの『けいおん!』のエンディング(参考URL)の服みたいで、う~ん……。これはちょっと違うんじゃないかなあ、と思ってしまっていたのです。
とにかくハイセンス
そのイメージが一変したのが10月に発売された現時点での最新曲『ANTIFRAGILE』のトレーラー。これはほんとに驚きました。
トレーラーの衝撃
少し見ていただければわかると思いますが、これ、本当に映像としてセンスが良いのです。とにかくスタイリッシュでハイセンス。何度見ても新鮮に感じます。是非映画館で見たい。
驚きはそれだけではありません。この映像を見て、もしかしてLE SSERAFIMのCDも買った方がいいのかな?と思い軽い気持ちで1枚CDを買ってみました。そしたら、CDのジャケットのデザインがクールだこと。
こちらのツイートが分かりやすいと思いますが、ご覧の通りとにかくジャケットのデザインがオシャレ。
いや、それどころか、他のアイドルグループとはCDジャケットのデザインに対する思想が全く違うということが一目で見てとれます。(金継ぎで楽曲のテーマを表してるなんて、なんて素敵なんでしょうか)
この感覚はまるで人生で初めてApple製品を買ったときのようです。それこそ箱含めて棚にしまったりせず、ずっと見れるところに飾りたくなります。(実際今はピアノの譜面台にずっと飾っている状態です)
こうして、私のLE SSERAFIMのイメージは『けいおん!』のEDからとにかくハイセンスな人たちへと移り変わったのでした。
コンセプトフォトも良い
センスの良さが売りのアイドルを推すということはとても怖いことです。実力派というありがちなアイドルグループの評判と比べると、将来もずっとセンスが良くあり続けるということはどうにも保証ができないからです。
しかし、今のところ全くLE SSERAFIMから裏切られる気配はありません。直近でも、日本デビューシングルのコンセプトフォトのセンスはさすがとしかいいようがない素晴らしさでした。
たかが日本デビュー用のコンセプトフォトと言えども決して手を抜かず、練られたコンセプトとファンへのサービス精神が細部にわたって通っているような、そんなコンセプトフォトを供給してくれたという事実。LE SSERAFIMにはもう今となってはもう信頼しかないんです。(シーグリも最高でしたね)
まるでミュージカル映画の主人公のよう
私がなぜ数あるアイドルグループのなかからLE SSERAFIMに特に惹かれたのか。理由はそれだけではなく、私がずーっと大好きなミュージカル映画とLE SSERAFIMに通じるものがあるから、というのもあるかもしれません。
たとえばこの『リトルマーメイド』の名曲 ”Part of your world” に代表されるように、ミュージカル映画の主人公たちはここではないさらなる高みに思いをはせるようなかたちで作中最も重要な歌を歌うこと*が多々あります。
こうした楽曲を通じて描かれる未来への思い、ここではないさらなる高みへの憧憬。それらを原動力に、ダンスや歌声から表出される(人間が生きることすらも全肯定してくれるような)ポジティブなエネルギー。
これらの存在がまさに私がミュージカル映画を愛し、そして何度も見てしまう理由でした。
LE SSERAFIMのメッセージ性
一方で、LE SSERAFIMの軸となるコンセプト「IM FEARLESS」も似たようなストーリーを背景にもっています。
このドキュメンタリー映像のなかには、LE SSERAFIMがどんなメッセージを観客に伝えるグループであるかをメンバーに説明する場面があります。そこで「この世界に満足していない彼女たちが、過去にとらわれず恐れずに未来に足を踏み出していく(意訳)」というストーリーをもっていることがはっきりと明言されているのです。
このメッセージ・コンセプトは、まさにミュージカル映画で何度も繰り返し表現されてきたエネルギーそのものです。
たとえば、『モアナと伝説の海』のモアナが大海原へと繰り出すあの名シーンなんかを思えばそれは明らかですね。
ただ、私はLE SSERAFIMをミュージカル映画に通じるところがあるよね。で終わらせるつもりはありません。LE SSERAFIMはミュージカル映画はミュージカル映画でもその金字塔とされる『雨に唄えば』ではないかとすら思うのです。
『雨に唄えば』という名作ミュージカル映画
『雨に唄えば』という「アメリカ映画名作ベスト100」というような企画があれば必ず上位に選ばれるような、非常に評価されているミュージカル映画があります。製作されたのは1952年となんと70年も前ですがそれでも未だにその魅力は色あせることはありません。
この映画を作ったMGMという会社は当時空にある星の数よりもスターがいると言われるほどの巨大事務所でした。
(当時世界一の色男とされていたクラーク・ゲーブルもMGM所属でした。彼が主演した映画『風と共に去りぬ』は空前絶後の大ヒットを飛ばしMGMに莫大な利益をもたらします)
このMGMに所属し、このMGMの作品に出演することは当時のダンサー志望や歌手志望にとっての夢でした。
『雨に唄えば』のキャスティング秘話
先に言ってしまいますが、この『雨に唄えば』という映画のキャスティング経緯、LE SSERAFIMのメンバー決定のストーリーと非常に似ているところがあるのです。
まず、最初にすでに大スターであったジーン・ケリーが主演を張ることがまず決まります。
ジーン・ケリーの友人役には、ドナルド・オコーナーというすでにテレビスターとしてすでにアイドル的な人気のあったコメディアンを他事務所(ユニバーサル)から引き抜きキャスティングすることになります。
ドナルド・オコーナーの所属していたユニバーサルはミュージカル映画を作れる資金的な体力がなく、彼のせっかくの歌とダンスの才能を発揮できる場所がありませんでした。ずっと自分の才能を発揮できる場所を探していたオコーナーはMGMからの誘いに飛びつきます。
次に問題となったのは終盤の大がかりなダンスシーンでジーン・ケリーの相手をする役を誰にするかでした。もともとキャロル・ヘイニーというMGMのダンサーがキャスティングされるということで決まっていましたが、上層部の「イメージに合わない」という判断で突如配役から外されます。
そこで白羽の矢が立ったのがシド・チャリシーでした。シド・チャリシーは幼いころからバレエをたしなみ、ヨーロッパの名門バレエ団バレエ・リュス・ド・モンテカルロに14才の若さで参加、プロのバレリーナとしてキャリアを積みます。結婚を機にバレリーナを引退した後ほとんど活躍の場は失っていた彼女は、MGMからのオファーを快諾します。
この映画をきっかけにシド・チャリシーは大スターへと上り詰めます。
そして最後の問題となるジーン・ケリーの相手役つまり映画のヒロインは、デビー・レイノルズという当時まだダンスも1年間くらいしか習ったことのなかったキャリアの乏しい若手が上層部の意向でキャスティングされます。
彼女をなんとか映画に出せるレベルにするべく、ダンスの特訓は4月から始められました。しかし映画の撮影は6月からという非常にタイトなスケジュール。
しかし、彼女はその持ち前のタフさと夢への情熱で血のにじむような(実際に足から血が出るほど踊ったそう)努力をした結果見事な成果を残すことになりました。下の動画を見てください。およそ短期間で仕上げたとは思えない素晴らしいダンスを披露してくれています(伝説ではこのシーンだけで数百回撮り直しをしたと言われています)。
『雨に唄えば』という作品には、こうしたさらなる高みを目指す強い情熱と人並外れた向上心を持ったスターが織りなすいわば人生を賭けたミュージカルシーンがたくさんあります。それらが『雨に唄えば』という「一本の映画を完成させるために様々な困難を乗り越えていく」という作品のテーマとも見事に合致し、ゆえに本作は名作になったのだと思うのです。
LE SSERAFIMの物語
BTSの大躍進によりK-POP界で独自の地位を築いたHYBEという事務所。そこにLE SSERAFIMのメンバーになるべく集められたメンバーは、『雨に唄えば』の彼らと同様に一人一人がストーリーを持っています。
日本ですでにトップアイドルという地位を確立していながらも貪欲にさらなる高みを目指し渡韓した宮脇咲良。
元IZ*ONEの人気メンバーでありながらもHYBEでの再デビューを決めたキム・チェウォン(写真左)。小さい頃からバレエを習いパリに留学中だったもののKPOPアイドルになることを決めた中村一葉(写真右)。
IZ*ONEを世に送り出したオーディション番組Produce48に出演し、キリンちゃんと呼ばれ高い評価と高い人気を得ながらも、番組で悪意ある編集により炎上、強いバッシングを受けて落選してしまい、それ以降アメリカで学生生活を送っていたホ・ユンジン。
16才という断トツの若さながらも、お姉さんメンバーとまったく引けを取らないパフォーマンスを見せるHYBEの『雨に唄えば』でいうところのデビー・レイノルズのポジションとなるホン・ウンチェ。
彼女たち自身の嘘偽りない物語がそのままLE SSERAFIMの作品世界で表現されています。それはコンセプトフォトでもそうですし、MVでもそうですし、アルバムに収録される楽曲をとってもそうです。
最新曲ANTIFRAGILEでは、「馬鹿にしないで私が歩んできたキャリア」「忘れないで 私が置いてきたトウシューズ」(カズハは元バレリーナ志望でしたね)と歌い、「どんな困難があっても実力と努力で克服して、LE SSERAFIMならではの道を開拓していく」というメッセージを他所では真似できない説得力を持って表現しました。
彼女たち一人一人が持つここではないどこか、さらなる高みを志向する強い思いが彼女たちのパフォーマンスにはにじみ出ています。それゆえに彼女たちのステージは他の追随を許さない素晴らしいものになっています。
特に直近ではこのMMA(Melon Music Award)でのパフォーマンスが本当に鳥肌が立つほど素晴らしいものでした。最後にこの映像を見ていただければ最高です。以上、LE SSERAFIMにハマってしまった件についてでした。
参考
・元来渉(2021),『踊る大ハリウッド』,幻冬舎メディアコンサルティング
(『雨に唄えば』のキャスティング秘話の内容はほとんどこの本の内容をもとに書いてます。)
*K-POPファンの方々にはこちらのシーンの方が伝わりやすいかも。『フェーム』というアメリカの芸能人養成学校の練習生を描いた作品のワンシーン。これは『ララランド』の冒頭シーンの元ネタでもあるんですけど、プデュとかガルプラをよく見る人ならこのシーンが描きたいものが何か手に取るように理解できるはず。