恨みの倍返しと○○の億返し(後編)
~情けは人の為ならず~
この間、松尾さんと馬場さんのお話し(http://koyasansenjyukai.com/?p=354)をいたしました。
人を利用し、心を傷つけると恨みを生み、それがしいては自分の身を滅ぼす事をお伝えいたしました。
逆に人の心を大切にした人はどうなるのでしょうか?それでは、松尾さんのもう一つのエピソードをみていきましょう。
繰り返しになりますが、松尾さんは若い頃、会社の保有する宿泊施設で、多くの会社にとって大事な来客の方の対応を任される、という大変重要なポジションに就かれていました。
それは、会社や社長さんが懇意にしている方々を一斉に呼んで、皆さんに日頃の御礼をお伝えするとても重要な日でした。
松尾さんは、これまで培った力が試される大切な場です。ですが、いくら待っても、ずっと苦楽を共にしてきたスタッフが出勤してきません。不安になった松尾さんはスタッフ一人一人に連絡をしますが、みんな、これまで根(こん)を詰めていたことで疲労が蓄積して、インフルエンザがみんなに感染して、出勤出来ない状況になっていたのです。
頭が真っ白になる松尾さん、事務所の机に一人頭を抱え、座り込んでしまいました。ですが、どんなに考えても解決方法が出てきません。勿論、時間が刻々と過ぎていきます。
そんな時です。事務所のドアが開きました。それはいつも社長を陰から支えている橋本さんとその息子さんが入って来られたのです。親子は思い悩まれる松尾さんの姿を見て「松尾さんどうされましたか」と声を掛けられます。松尾さんは「橋本さん、実はスタッフが全員インフルエンザになって出勤できず、今日の大切な食事会が台無しになってしまいそうなのです」と、答えました。最初は驚いていた橋本さんでしたが、すぐに「では、私の息子と私の部下たちを使ってください。あまり人の接待やそれに類する仕事はやったことはありませんが、誰もいないよりはましでしょう。ただ、しっかりと指示をしてあげてください」と、言うと、その場で携帯を取り出して、部下の方々を集めてくれたのです。
すぐに今回の段取りを集まってくれた方々にお話しして、その日は記憶がないぐらい松尾さんは動かれたそうです。ですが、橋本さんの息子さんと部下の皆さんがうまく立ち回ってくれたおかげで、見事にその食事会を成功させたのです。その時の松尾さんの喜びは言葉では表現できないほどだった、と教えて頂きました。
後日談ですが、橋本さんの心遣いを松尾さんからの報告で知った社長さんは、非常に驚き、すぐに橋本さんに深々と頭を下げられに行かれたのでした。ここで橋本さんの凄い所は、一言も社長さんに自分の息子や部下が食事会を手伝っている、ということを言われなかったことです。人間だれしも、人に恩を売る為に手伝った時には、声を大きくしてそのことを言うものですが、橋本さんは、他の誰にも息子さんや部下の人が手伝っていることを明かさなかったのです。
そんな橋本さんですが、お手伝いをして下さった息子さんが交通事故に遭い、膝をひどく傷めてしまったのです。病院はすぐに退院できたのですが、運悪く、コロナ禍の最中で、足のリハビリをしたいのですが、近くの病院や施設でも受け入れてもらえなかったのです。
橋本さんの息子さんは「このままでは自分の足は動かなくなってしまうのではないか」と、強い不安に襲われました。
それをどういう伝手(つて)か、松尾さんは橋本さんの息子さんの気持ちを知って「昔のご恩を返せるのは、今しかない」と、いう思いに至り、継続事業になった宿泊施設で、資格を持った職員をアテンドして、橋本さんの息子は、この宿泊施設でリハビリをすることによって、無事に歩けるようになったのです。
橋本さんやその息子さんの喜びはいかほどであったでしょうか。
このお話しを聞かせてくれた松尾さんは「それでもあの時のつらい思いを救ってくれた橋本さん親子、その部下たちの方々には、まだ報いきれていない」と、心中を教えて頂きました。。
たった一つの温かい行動が、巡り巡って、その人のところにやってきて、人生を助けてくれる。「情けは人の為ならず」という、本当に良い例ではないでしょうか。
自分の得ばかり考えていると自然と馬場さんのようになり、親切心で行動した橋本さん親子は、その親切心で大切なものを守れたのです。情けが億倍にもなって返ってきたのです。題名の○○とは、まさに「情け」に他なりません。
なぜか今は、利己が尊ばれているような傾向がある気がします。ですが、私は松尾さんのお話しや周りの多くの方を見ていて、人間という生き物からすれば、人を大切にする生き方が良いと思えるのです。
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