舞い上がれ愛しさよ
急にFANATIC◇CRISISの「火の鳥」が聞きたくなって、とりあえずファナのアルバムを探してみたんですけれど、どこにあるのかわからず。
シングルもアルバムもリアルタイムで購入してたんで持ってるんですけれどねぇ。
PCにMP3として取り込んでいたデータがあったのを見つけたんで、そちらで久々に聞きました。
やっぱ石月努の歌声良いなぁ格好いいなぁと思いましたね。
今現在の石月さんは歌唱力がアップした代わりに癖強歌唱を失ったので、なんて歌っているのかわからないことが多いレベルの癖強歌唱が好きだった者としてはちょっと悩ましいことになってるんですよ。
ヴィジュアル系とカテゴライズされる系統のバンドのヴォーカルは世界観やかっこよさを重視してなのか、歌い方が過剰で歌詞がよく聞き取れないっていうのはあるあるだと思うのですが、歌が上手くなったりキャリアを積んだりで過剰さが薄れるのはちょっと違うんですよね。
僕自身がヴィジュアル系をそこそこ聞いていた時期っていうと大体、90年代後半から2000年代前半になり、FANATIC◇CRISIS、La'cryma Christi、MALICE MIZER、SHAZNA、CASCADEあたりを好んでいたのですが、この時代だとこのあたりの方々はヴィジュアル系とかバンドとかそういうところで聞いていたというわけでなく、売れている程度は違えども流行歌ですよね。
ファナやCASCADEはお洒落系、MALICE MIZERやSHAZNAは過剰系でしょうか。
今になって思うと渋谷系を好んで聞いていたところから、ファッション性を含んだ音楽という共通点のあるヴィジュアル系にも惹かれたのかなぁと思うのですが。
ファナやCASCADEは容姿やファッションの面である種の憧れがありましたし、MALICE MIZERの強烈な世界観は「ああいうの自分もやってみたい」と思いましたから。
久々にFANATIC◇CRISISを聞いたので、僕の好んで聞いてきたヴィジュアル系を振り返ってまとめてみようと思います。
なかなか僕自身、ヴィジュアル系の話をすることもないので。
・FANATIC◇CRISIS
リアルタイムで聞いていたバンドの中では一番好きですかねぇ。
ファッションやメイクなどはお洒落の範疇に収まるもので、曲のポップセンスと癖強歌唱が光ります。
ヴォーカルの石月努さんの細さやファッション、佇まいは未だに好きだし憧れる部分がありますねぇ。
かっこいい。
細い体躯でパワフルなパフォーマンスしてるところがやっぱ良いんですよ。
「火の鳥」FANATIC◇CRISIS
一番ヒットした曲ではありますが、比較的異色作でもありますね。
歌詞の世界観としては等身大かつ現実的で身近に感じられる曲を歌っていることの方が多かったので。
このようにハードでダークでアダルトなテイストはどちらかといえば珍しいです。
恋愛に関して歌っているよくよく聞くと誰しも持っているような愛情を表現した等身大と言ってもいい曲ですが、過剰寄りということですね。
とはいえメロディーメーカーとしての部分や癖強歌唱の石月さんの癖強部分(僕の好きなところ)全開で大好きです。
歌詞をきちんと知ってないとサビの最初のあたり以外、聞き取りづらいのではないかと。
大サビからCメロ(二つ目のサビ?)に突入して終わりという構成はホントにお見事ですし、この声、この歌い方だから栄えると思うんですよね。この曲。
・CASCADE
ヴォーカルのTAMA、かっこかわいいですよね。
お洒落お洒落。
そして、こちらはこちらで癖強。
メロディーラインや構成もいささか癖があって面白いけれど、万人受けしづらいんじゃないかなーっていう曲も多い。
バンドとしての良さや強み、そして難しいところもTAMAにある部分が大きいように感じます。
容姿や歌声が活きるようにこういう曲になってるし、その逆もしかりって思いますからね。
万人受けするような曲を作ってた時期と、そうではない曲を作ってた時期があるんですが、おそらく本当にやりたかったのは後者なんだろうなーとは感じてます。
本格的に売れそうな時期があったけれど、そうならなくて、またタイアップ曲で世の中に注目され認知されるようになって~みたいな活動の波があったのもそういうことなんだろうなぁと。
「S.O.Sロマンティック」CASCADE
独特なコケティッシュさがあるんですよね、CASCADEは。
愛らしさと毒々しさが混在する曲。
ずっと攻め続けてたけれど、それが受けるものなのか受け入れられるのかっていうところで難しかったバンドかなぁ。
早すぎた感はあるけれど、いつなら良いのかっていうとそれも難しい。
・La'cryma Christi
ラクリマはいつも捻った難しい曲をリリースしてた印象が強いです。
非常にメロディアスだけれど、複雑だったり珍しい作りになってるみたいな。
わかりやすさには欠けるっていうんでしょうか。
無難な方向へは行かないっていう表現も出来ますが。
インパクトのあるサビで一気に盛り上がるとか、イントロがキャッチーとか、ヴォーカルが熱唱するとか、様々なわかりやすさやとっつきやすさってあるじゃないですか。
そういうところでやってないバンドっていう印象があります。
歌声と演奏と曲の相乗効果や良さでやってるっていう。
そういう点では最も正統派だし、真っ当なのかもしれないですが。
「未来航路」La'cryma Christi
独特な浮遊感があるんですよね。
ラクリマって。
歌声のせいか、楽器隊の演奏によるものか、歌詞やメロディーによるものか。
サビでしっかりと、でもふわっと美メロを歌われるのがたまりません。
・MALICE MIZER
ここまで徹底して耽美で退廃的で幻想的なヴィジュアル系らしいヴィジュアル系やってたバンド、この時期では珍しくなってきてたはず。
1980年代後半から1990年代ががっつりメイクにがっつり衣装のヴィジュアル系がメジャーだった時期で、1990年代に入ってからはお洒落として許容される程度の過剰さになってきてたところでのMALICE MIZER。
とりあえずメジャーなところでは珍しかったですね。
今、振り返ってもここまでのことを実現してみせたバンドは珍しいと思ってますけれど。
クラシックの要素をヴィジュアル系やバンドサウンドに取り入れて、突き詰めきった存在として、特殊だし特別だと思っています。
「月下の夜想曲」MALICE MIZER
耽美で幻想的で退廃的な世界観をしっかりと音楽に昇華した名作ですね。
ここまで来ると好みかどうかっていう点でしか語れないような部類のものだと感じます。
凄いもの作って、凄いことやってるのはわかるから。
・SHAZNA
今回、取り上げたバンドの中では1番売れたメジャーアーティストですね。
メロディーメーカーとしてのポップセンスの素晴らしさと、それ以外の意味合いも当然あったと思いますが、ポップさの表現としてヴォーカルのIZAMと女装の親和性が非常に高かったことがヒットした要因として大きいと思っています。
IZAMの容姿の良さと女装が大きな話題となり売れたのも事実ですが、曲の出来の良さもきちんと再評価されてほしいですよ。
「Melty Love」SHAZNA
メジャーデビュー曲であり、代表曲であり、インディーズ時代から何度も手直しされて発表されている曲でもあります。
ホントに完成度が高い。
ミステリアスに始まるイントロから、延々とポップなメロディーが歌われるメロ、一気に勢いとミステリアスさが加速するものの少々の愛らしさは残してるサビ。
1回、聞いたら「♪メーティーラー ハーナーサーナイーハーナーサーナイー」が耳に残り忘れられなくなります。
ただ、このサビ、曲の尺を考えるならあまり登場していなくて、ずっとポップなメロで曲をひっぱっていって、焦らして焦らしてこのサビに突入なんですよね。
で、ポップさとミステリアスさを両立させてるのが主にIZAMのヴォーカルで。
巧みなタイプの歌手かと問われたら答えに困りますが、巧みに歌うのは違う曲だとは思います。
IZAMの歌声、IZAMという存在が歌うからこそこのさじ加減になって成立したと僕は思っているので。
そういうところを突っ込んで考えていくと稀有なヴォーカリストだよなぁと感じます。
ヴィジュアル系ってジャンルそのものの傾向や表現方法の問題もあるのかもしれませんが、唯一無二なタイプの歌手が多いように思いますね。