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ドライヤー
母は入浴の介助はまだ必要ない。
とはいうものの、一度なかなか出てこなくて
お風呂場を覗いたら
お湯を出しっぱなしでぽーっとしていた事があったので、
それからは入浴前と途中、入浴後は
気にかけて見るようにしている。
「お母さん、お風呂の支度してねー」
と言って
「パジャマと肌着とおパンツ持った?」
と必ず聞く。
「持ったわよー」と母。
まぁ大抵何かは持ってきてなくて
また部屋まで取りに行く。
入浴前に洋服を脱ぎながら
「洗濯物増やしちゃうわね。ごめんね。」
と必ず言う母。
「大丈夫よ。洗濯機が洗ってくれるんだから。」
なんて言いながら母を見ている。
「ゆっくり入ってきてね」
と送り出すが母の風呂は早い。
長風呂の私には理解ができないくらい早いのだ。
一度髪の毛や体を洗ってないのかも
と思いそっと覗いた事がある。
が、洗ってる。髪の毛も体も洗ってるじゃないか。
にしては、早すぎやしないか?
よく考えると子供の頃から母の長風呂なんて
見た事がない。
湯船に浸かってのんびりするなんて事はしていなかった。
風呂場の扉が開く音が聞こえ、
あっという間に入浴を終え
体を拭き終わった母を
そっと見てから脱衣所に行く。
「気持ちよかったわよ。ありがとう。」
と言いながら髪をドライヤーで乾かす。
が、ドライヤーが地肌につきそうな位近い!
いや、ついてる。ついてるよ!
「髪の毛焦げちゃうよ」と私。
ドライヤーで母の髪の毛を乾かす。
初めて母の髪をドライヤーで乾かした時は
なんだか恥ずかしいようなくすぐったいような
なんとも言えない気持ちになった。
最近ではおとなしくドライヤーにあたっている母を可愛いと思ってしまう私がいる。
母は私が子供の頃、こんな気持ちで髪を乾かしてくれたのだろか。
子供がいたらこんな気持ちで髪を乾かしているのだろうか。
可愛いとか愛おしいとかほわっとした
あたたかい優しい気持ち。
最近、母が子供で私が親のような感じになってきていて、ふと子供の頃の事を思い出す。
母と生活し始めてから、
今まで感じたことのない感情を色々と引き出してもらっている。