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書籍「テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想」(橘玲著/2024文春新書)

橘玲氏の本にはいつも驚かされます。
今回のこの本は、既存の民主主義を超越する新たな思想を紹介するものとなっています。

まずは、現在の思想を次の4つに分類するところから始まります。
1 リベラリズム
  福祉と人権を重視して、国家による再配分等により平等な社会を目指す考え方(大きな政府・左派)
2 リバタリアニズム 
  国家が個人に介入することを自由の抑圧と捉え、自由市場に任せればすべてうまくいくとする考え方(小さな政府・自由原理主義)
3 共同体主義(コミュニタリアン) 
  歴史や文化、伝統などによって支えられた共同体(国家や宗教などのコミュニティ)こそが人々の幸福を生み出すので、共同体を守るためには個人の自由が制約を受けても仕方ないとする考え方(右派・保守)
4 功利主義 
  上記1~3の議論はいずれも不毛であり、とにかくいろいろやってみて、結果として社会に最も大きな効用(富)をもたらすものが正しいとする考え方(結果オーライの思想・最大多数の最大幸福)

これらの思想同士の関係を少し補足説明すると、
〇 リバタリアニズムと功利主義は、国家による規制に反対し、自由市場が公正で豊かな社会を作る、と考えている点で共通しています(新自由主義・ネオリベ)。
〇 左派(リベラリズム)と右派(共同体主義)は、市場原理を否定する点で共通しています。

そして、このうちリバタリアニズムと功利主義が重なる領域から「テクノ・リバタリアニズム」という政治思想が新たに発生しているのです。
この思想は、国家の規制を可能な限り排除し、テクノロジーの力によって自由な社会を実現しようという考え方で、その担い手はハイテク分野で活躍するイーロン・マスクや、ピーター・ティールなどがその代表格となっています。

そして、この本は、
民主主義が行き詰まり、革命のような大きな物語の幻想も潰(つい)えた今、この「テクノ・リバタリアニズム」が世界を変える唯一の思想となっており、これは歴史の必然的な流れであると説明します。


いま世界で起きているこの「とてつもない変化」が生み出すものは、ユートピアになるのでしょうか?それとも、ディストピアになるのでしょうか?

初期のリバタリアンたち(第一世代)は、「この惑星上の約40~50億の(無能な)人間は、去るべき運命にあり、残りの1%のための安全な世界を作り出す」など、とんでもない発言(他者の痛みを理解せず自分のことしか考えないような発言)をしていました。

しかし、最近の若いリバタリアンたち(第二世代)は、
例えばグレン・ワイルという経済学者(1985年生まれ)が「私有財産を否定するリバタリアニズム」という全く新しい考え方を提唱するなどして、
なんとかテクノロジーによってより良い世界を作ることができないかと真剣に模索しているようです。


世の中は、これからどうなっていくのでしょう?


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