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1人目の客と大谷の第一打席をはかりにかけた話

趣味はオープンしたお店の1人目の客になることですが、元高校球児ですし、やっぱり大谷翔平のことは気になります。1番ピッチャー指名打者でオールスターに出場なんて、見ずにはいられません。今日は午前10時オープンのパン屋さんがありますが、とりあえず大谷の第一打席だけ見届けてから出発することに決めました。

全然試合始まらんやないか!!

ここは本当にコロナ禍の世界なのかという超満員のスタジアム、紺色のスーパースターがようやく第一打席に立ったのが9時15分頃だったかしら。あえなく凡退し、ああ、この凡退を見届けるために私は何十分もさほど興味のないオープニングアクトをだらだら眺めておったのか、と費用対効果を考えるようじゃ恋は終わりね。エリーマイラブ。

9時20分、急いで私は寺町仏光寺へと向かいます。少しお腹がギュルギュルしていますが、トイレに入る時間はありません。大谷の第一打席は排泄という人として最低限の営みさえ後回しにさせたのです!!であるとするならば、私の中でオフィシャルな趣味にしているオープンしたお店の1人目の客になることに対しても、礼儀として、ここはトイレを後回しにせねばなるまい。

10時オープンのお店へ向かい、早歩きをしますが、この早歩きは1人目の客になりたいと急ぐ早歩きと、早くトイレに辿り着きたいという早歩きが混ぜ合わされておりました。パン屋さんのオープンに向けて急いだところでトイレに入れるわけではないのに人体って不思議ね。

寺町仏光寺下ルだと思い込んでいたので、仏光寺通りの突き当たり(どんつき)にある三密堂書店を右折して該当しそうな店を探すのですが見つかりません。探し物は何ですか。見つけにくいものですか。そんなに見つけにくいものではないんです。とりあえず、無事1人目の客になってトイレにも入れたら踊りませんか、うふっふー。

ちゃんと調べてみたら寺町仏光寺上ルだったので踵を返し北へ向かう。それらしい店を探しておりますと、黒い半袖シャツの清楚やのにあっついあっついさかいに汗かいてしもたやないのって感じの女性が小脇に「入店最後尾」と書いた看板というほどでもないサイズの案内板を抱えておりましたので、あそこか!と焦点を合わせてみますと、確かにオープンを祝うお花が並んでおりますが、人影は見えません。

いける!
と思った矢先、女性2人組がミス入店最後尾に非常に上品な感じで話しかけます。「今日オープンでございますかしらモーレ?」「10時オープンでございまシルブプレ」
ああ、鼻の差で間に合わなかったか!と思っていますとミス入店最後尾が「こちらへお並びたモーレ」と2人組を案内したのは、私からは完全に死角となっていた裏口のような第二の入口であり、そちらにはすでに8人ほどの待ち人がいたのでありました。

午前9時35分頃のことでございます。
大谷とパンを天秤にかけてパンに軍配を上げた皆さんが勝ち誇っておりました。
しかし私は、むしろ仮にこのまま10時のオープンを1人目の客として待ち続ければ、お腹の限界とも戦わねばならなかったはずなので、負けを実に潔く受け入れており、その潔さを私は昨日のホームラン競争のあとの大谷とダブらせていたのでありました。

ここは寺町仏光寺。
幸い近くには藤井大丸も高島屋もあります。トイレには困りません。
残念ですが仕方あるまい。

しかし私はこの時、百貨店のオープンが午前10時であることを忘れていたのでした。

7月14日午前10時、寺町仏光寺上ルにオープンした「THE CITY BAKERY」の1人目の客にはなれませんでした。

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