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読書の記録『凪に溺れる』

あるインディーズバンドの
カリスマ的魅力をもつ
ヴォーカルにまつわる物語。

って書くと、
めちゃくちゃ安い、
やっすい安い物語に
なってしまいますが、
そうなっていないところに
この物語の個性があるのでしょう。

ヴォーカルは霧野十太、
男性です。
霧野の歌とギターは
なんかわからないんですけど、
聴く人の心を揺さぶるんです。

この「なんかわからない」ところを
ちゃんと言葉にして、
理由を描いているところに、
この物語の個性があるのでしょう。

ジャンル分けするなら
青春小説?
かの有名な
『青春でんでけでけでけ』と
テーマは同じかもしれませんが、
あちらが陽なら
間違いなくこちらは陰。
全体に陰気な空気を纏いながら
進んでいく物語も、
この作品の個性でしょうね。

物語とはあまり
関係のないことと思いますが、
作者の青羽悠さんは現役京大生で
まだ二十歳なんですよね。
自分が青羽さんなら、
そういうところを
持ち上げられるのって、
本質からズレていますから
好きではないと思うのですが、
それでもどうして、
青羽さんが二十歳であることを
あえて書いたかといいますと、
この作品で、
「ラジオ」がとても重要な
意味を持ってるからなんです。

二十歳の大学生が、
物語を描くにあたり、
「ラジオ」に意味を
持たせてくれたというのは、
ラジオで働いている者にとって、
一つの希望だと思うんですよね。

まぁ、作中でも
「終わったメディア」と
いうような
描かれ方はしているのですが。
それでも、ラジオによって
人の生き方が変わる瞬間が、
描かれているのは、
それを二十歳の大学生が
描いているのは、
私にとっても意味のあることで、
ひょっとすると、
私の人生をも、
変えてしまうんではないか、
ということを思いました。

昔バンドやってた人間としても、
とても面白い作品でした。

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