見出し画像

エッセイ『父上、僕は、あなたの子です』

令和4年9月18日

 楽天モバイルの電波は実家では入らないのではないかという懸念は杞憂に終わりました。実家で一泊。家族が寝静まってからしばらく母と二人で話す。子供の頃の「あれは何やったんや」ということの真相を聞けたのが楽しかった。

 一つ印象的だったのが、いまは亡き父と祖母の話。祖母というのは父の母です。父と祖母はあまり仲が良くなかった。二人が話しをしているところをほとんど見た記憶がありません。

 その父が烈火の如く怒っているのを見たことがあります。どうやら祖母に対して怒っているラシイのですが、父は祖母と直接話をしたくないのか、祖母へ直接その怒りをぶつけることはせず、「誰が梅の木を伐ってしまいさらしたんじゃ!」と怒鳴っているのです。梅の木というのは、家の近くの浜に父が植えていた梅の木です。どうやら大事にしていたらしいんですが、その大事な大事な梅の木を祖母が父の許可なく伐ってしまっていたらしい。「誰が梅の木を伐ってしまいさらしたんじゃ!」と怒鳴っているのは、誰が梅の木を伐ってしまいさらしたかわかったうえで、祖母に聞こえるように怒鳴ることで、祖母への怒りを表現していたのです。

 その当時のことを母に話しをしたら、「あれは住岡のおっさんに頼んでおばあさんが伐ってもらわはったんよ。なんでわしと違て住岡のおっさんに頼んだんだや!っていうので怒ってはったんよ」と真相を話してくれたので、そういうことやったのか、と驚くとともにちょっと笑ってしまいました。

 父は祖母とほとんど話をせず、祖母には話しかけてくれるなっていうオーラを出していたんです。祖母は梅の木を伐りたいとなったときに、きっと父に相談したかったはずなんですが、父は自分の話を聞いてくれるはずもない。でも伐りたい。(なぜそうまでして梅の木を伐りたかったのかはわからない)あ、それなら住岡のおっちゃんに伐ってもらお、そうしよ。ということで父に相談せずに住岡のおっさんに伐ってもらったところ、「わしの大事にしてる梅の木をわしに相談することもなしに、相談してくれたら場合によってはわしが伐ってやったのに、よりによって、なんでわしを差し置いて、住岡のおっさんの手をわずらわせるんじゃ!」という何重にも重なる怒りのために父は怒声を放っていたんだと思います。

 その真相を聞き、ちょっと笑ってしまったのはなぜなのかといえば、住岡のおっさんに頼むんやったら、わしにまず話を通すのが筋やないか。。っていう、思考がなんというか、まあ、ほんとにびっくりするらいに僕とそっくりだったからです。血は争えませんね。僕はいま、父と同じように、そういう「順番抜かし」をされることについて、めちゃくちゃ腹が立ちますし、その怒りを本人に直接ぶつけず、本人に伝わってほしいなっていう思いをもって別の手段で拡散したりしているのです。父上、僕は、あなたの子です。

#日記  #エッセイ #note日記 #毎日note
#毎日更新  #ジャミロワクイ
#ジャミロ涌井  #涌井慎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?