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コークオン

 一人におすすめされてもなんとも思わないのに五人におすすめされると「じゃあ、やってみよっかな」となる。最初の一人のことを信用していないわけではないが、五人におすすめされてようやく重い腰をあげたとき、そのことを知ったら最初のあの人は傷つくんだろうなと思う。

 コカコーラ社の「コークオン」というアプリを数ヶ月前に先輩にすすめられ、あまりその気もなく、説明も適当に聞いていたのだが、ここにきて一気に四人くらいから「コークオンをやっている」「ウォーキングするならコークオン」などという情報を得たものだから、それならやってみよっかな、となった。ということを数ヶ月前に私にすすめてくれた先輩には絶対にバレてはいけないと思っているが、バレたところでそのくらいのことで傷つく人でもないだろうとも思っている。人はどうやら私ほど傷つきやすくはないらしいから。

 コークオンを説明するのは邪魔くさいのだが、コカコーラ社の自動販売機と連動しており、所定の自販機で買い物をするとスタンプが貯まる。何個かスタンプが貯まれば自販機のドリンクが一本無料になる。自販機で買い物する以外にも、ウォーキングをすればその歩数の分、スタンプを貯めることもできる。そのため、自販機でドリンクを買いまくらなくても、歩きまくりさえすればコカコーラ社のドリンクが無料で飲み放題という素晴らしいアプリである。世界中の人々がこのアプリで歩きまくって自販機を使ったらコカコーラ社には一銭も金が入らないのではないか。
 そうなったらそれはそれで困るので、というわけでもないのだが、コークオンを使いはじめて以降、スタンプが貯まるからという理由で、コカコーラ社の自販機以外は使わなくなった。さっきまでコカコーラ社に一銭の金も入らないことを危惧していた人と同一人物とは思えない。

 ただ、ものすごい小さいことなのだが、これまで好んで買っていた自販機のメロンオレは百円だったのにコカコーラ社の自販機のドリンクは割と百五十円くらいする。故に私は今、一本コカコーラ社の自販機で買うたびに五十円ずつ損をしていることになる。ということは、スタンプ三個につき一本無料くらいにしてくれないと割には合わない。今、私はコークオンのスタンプを自販機で購入したことにより五個貯めているが、まだ一本も無料にはなっていない。

 将棋の藤井聡太さんが「あなたにとって贅沢は何ですか」と尋ねられ、「自動販売機でジュースを買うことです」と答えたと知り、こんな私が自販機で買ってはいけない!と決心し、どれだけ喉が渇いても自販機では飲み物を買わないことにしていたのが去年の今頃であったか。たぶん一年くらいそれを続けていたのだが、今はスタンプ稼ぎのために自販機で飲み物を買うようになってしまった。これはこれで楽しい。いつか藤井聡太さんと知り合いになったらその時にはコークオンのことを教えてやろう。聞いてくれなくて傷つくかもしれないけど。

歩数稼ぎで歩いた夕方が
ボビーコールドウェルみたいだった

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