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読書の記録 多和田葉子『百年の散歩』

作者がモデルと
なっているであろう人物が
ベルリンの街を
散歩しているだけの話が
めちゃくちゃ面白い!

多和田葉子さんは、
朝日新聞ほかで
エッセイをよく読んでいまして、
『エクソフォニー』っていう
随筆集は宝物にしたいくらい
激しく興奮しながら
読んだ傑作でしたが、
(宝物にしたいのなら
すればいいのですが、
図書館で借りて読んだため、
自宅には無く、
宝物にしきれていない)
はじめて読んだ
この小説も、いやはや、
とんでもないものでした。

ドイツ語とか
ベルリンのことがわかってたら
もっと面白いんでしょうが、
何も知らない私のような者を
置き去りにしない優しさと、
言葉の一粒一粒に対する
敬虔な態度のようなものを
強く感じます。

読みながら、
姿勢が正しくなり、
一生懸命読むほどに、
だから何やねんっていう
話なんですが、
その捉えどころのなさに
容赦なく惹きこまれてゆく。
なんとも不思議な物語。

表現って自由なのに、
いつのまに型にとらわれてしまい、
そこを逸脱すると、
亜流だとか本筋から逸れてるとか
何かしら文句をつけられちゃうし
そっちはそっちで、
肩肘はって「違う」ってことを
殊更に主張しないと
生き延びられなかったりするのは
なんか面白くないですよね。

こんな小説を書く方が、
毎度毎度ノーベル文学賞の
候補に上がっているということが
私にはとてつもなく
素晴らしいことのように思うのです。

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