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島耕作が部長だった頃の話
島耕作が部長だった頃の話。
福岡の営業部へ異動させられ、かつて課長だった頃に因縁のある今野社長の下で働くことになりました。
持ち前の仕事に対する実直さで日に日に評価を上げる島に対し、嫉妬もあるのか、面白くない今野社長は、あの手この手で島を陥れようとするのですが悉く失敗に終わります。
今野社長は上にはへこへこ頭を下げますが、下にはとにかく厳しいし、自分では責任を取らないし、学生の頃に読んだときは、本当にこんなクズみたいな奴が世の中には存在するのだろうか?と思ったものですが、あれから二十年ほど経ち、今改めて読み返してみると、決して極端な人物描写ではないのだなと思ってしまうのが悲しいところです。
そんな今野社長ですから、彼の下で働く社員は皆、士気があがりません。そりゃあそうです。なんでもかんでも自分のやりたくない仕事は全部人任せなうえ責任はとらないし、自分に非があることなど1mmたりとも認めない。会社のためを思っての忠告でさえ、少しでも自分の考えを否定するような言葉であればいっさい認めようとしない、そんな男の下で働いてやる気が出るはずがありません。
本社から大量のリストラを敢行するよう言われ、とりあえず自主退職を募ったところ、枠を大幅に上回る人数が自主退職を希望し、そのうえ、「出ていってほしくない」と思わせる人間ほど自主退職希望を出していたという結果となりました。
このリストラ劇では、重役でリストラを告げられた人たちが「我々を辞めさせるなら今野も辞めさせなければ納得がいかない」と本社に連判状を提出したことで、今野社長は退任させられ、代わりに島が社長になるわけなのですが、この時も今野社長は、島が裏で手を引いて自分の代わりに社長になるよう画策したとして「うまいこと立ち回ったな」と、全て島のせいにしようとします。
「島、おまえ、うまく立ちまわったな」
「私が何か?」
「しらばっくれるな!おまえが役員6人にふきこんでわしを追い落とすように画策したんやろう!!そうまでして社長になりたいんか貴様は!!」
「今野さん、、、あなたは自分の情況が悪くなるとみんな人のせいにする」
「な、何だとォ?」
「こうなったのは自分に非があるからだという発想はあなたの中にはないのですか?もしそれがなかったらあなたはホントのバカですよ」
「キ貴様!!」
「自分の責任を何か他の要因にすりかえて自己完結する。あなたは今まで人生をそうやって生きてきた。どんなにくだらない人間でも先輩だから遠慮して私は今まであなたに黙ってきた。しかし今日はあなたのためにも言わせてもらいます」
「自分に非があるとうすうすわかっていてもそれを認めたくないから嘘をついてその場を逃れる。人に対しても自分自身に対しても嘘をついている。そういうことを重ねていると自分が嘘をついていることすらわからなくなる」
会社員として何年か働いておりますが、残念ながら、今野社長のような人間はさほど珍しくはなく、どちらかといえば、今野社長にしっかりと物申す島耕作のような人間のほうがどちらかというと変わり者ではないかと思います。今野社長はこのあと、心を入れ変えて定年退職するまで仕事を頑張るわけですが、実際には今野社長みたいな人が自分を省みる機会などなく、真実を伝えた島耕作のほうが切り捨てられてしまうでしょう。
事実はフィクションよりも奇なのです。
とりあえず自分にできることはといえば、残念ながら島耕作のようには生きられないので、せめて今野社長のようにだけはならないようにしようと思う次第でございます。
普段、今野社長寄りの人はこれを読んでもおそらく自分が今野社長寄りであることさえわからないのでしょう。人は自分のことがいちばん見えないのだ。
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