11月4日週の新聞各紙歌壇俳壇チェック
俳句と短歌を作るには俳句と短歌に常から触れておくことが最も大事であるとわかったので新聞各紙の俳壇歌壇を毎週チェックして、えらそうなことをして申し訳ないのですが、良作をここにメモしております。
●11月4日の読売歌壇
⭐︎郵便受けに何かの入る音がせり若き頃には直ぐ見に出でしが
齢重ねると「直ぐ」でなくともよいか、と億劫になり、そのまま忘れてしまうこともあります。この感覚は郵便受けに限ったことではないように思います。
●11月4日の読売俳壇
⭐︎芋煮会老人会に恋路あり
もしそうなのだとしたら老後も悪くない気もするし、かといって年老いてからの恋路はストレスでしかない気もする。
●11月4日の毎日歌壇
⭐︎痛いのにむしってしまう皮膚のようあなたを愛し続けることは
むしらなければ痛くないのにむしってしまう。そんな愛し方しかできないのはツラいっすね。
●11月4日の毎日俳壇
⭐︎帰省してすぐ二階へと駆け上がる
年頃の息子さんか娘さんを呆れながら見ている実家のお父さんお母さんの眼差しを思いました。
●11月7日の産経歌壇
⭐︎秋空の病院待ちの長椅子のかぎ針編みの指のマニキュア
「の」続きの文章は読みにくくて怒られるんですけど、この「の」の連鎖によってズームアップしていくやり方は美しさを感じます。
●11月7日の産経俳壇
⭐︎水底に揺らめくひかり律の風
「律の調べ」というのがありまして。
「律」は「呂」とともに、音の音階、調子を表します。日本音楽では律は陰で呂は陽なので、春の陽に対して秋は陰ということで、秋らしい風を「律の風」というようになったとネットで調べて知りました。それを調べたくなる一句でした。呂と律で「呂律(ろれつ)」ですね。
●11月9日の日経歌壇
⭐︎ドスンとか音したけれど眠いのだ何かあったら朝には分かる
これは読売歌壇の「郵便受けに何かの入る音がせり若き頃には直ぐ見に出でしが」に通じるものがあります。
●11月9日の日経俳壇
⭐︎山小屋にゴルゴ全巻茸飯
ゴルゴが全巻揃ってる山小屋は信頼できる。信頼できる山小屋の茸飯は美味いに決まっている。
●11月10日の朝日歌壇
⭐︎喜びの無罪判決聞けばふと真犯人の居た恐ろしさ
これはおそらく袴田さんの件だと思うんですけど、確かにこれはずっともやもやしていたことです。真犯人がいるわけですよね。袴田さんが無罪であることが証明されたことはよかったと思いますが、この気持ち悪さが残ったままです。
●11月10日の朝日俳壇
⭐︎どうしたの言はれて気付く秋思かな
秋思ってそういうものなんですよね。きっと。
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趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。この趣味について綴った私の著書『1人目の客』や1人目の客Tシャツ、京都情報発信ZINE「京都のき」はウェブショップ「暇書房」にてお買い求めいただけます。