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1人目の客になれなかった話〜壬生以上西院未満編〜

 趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。壬生以上西院未満のあたりに新しいラーメン屋がオープンすると聞き、11時オープンなので四条烏丸を10時に出れば間に合うだろう、阪急で行けばいいだろう、オープンの四十分前に着けば1人目の客にはなれるはず、と足らぬ知恵を無駄遣いしていたのですが、予想に反して阪急の準急がなかなか来ずに焦る。西院駅は特急が止まらない。ああ、どうして時刻表を確認してから出なかったのか、何度同じ失敗を繰り返せば気が済むのか、学習能力の無い私。7分ほど待ち、準急に乗り込む。

 とはいえ、まあ、四十分前には着きそうだから、まあ、いいか、と思い直し、それでも小走りで改札をくぐり抜け、早歩きで現地へ向かう。かつてビックボーイだった現はま寿司の向かい側が目的地。前を見据え駆ける私は生き急いでいるのかもしれない。汗を追い抜く。

 御前四条の交差点には、かつて1人目の客になれなかった胡椒餅の店がある。そこから東へ10メートルほど。キャップをかぶった男が1人、不自然な場所に佇んでいる。男の傍には簡易の柵のようなもの。あれは人気店の入口でよく見かける客の動線を示す柵ではないか、ということは、つまり。

 ああ、久しぶりに私は1人目の客になれなかった。ラーメン屋を甘く見てはいけない。1人目の客への執着ではなく、ラーメンへの愛があるのだ。所詮、1人目の客になれれば何処でもいい私とは熱量が違う。私なんかが1人目の客になるよりも、この人が歴史の扉を開くほうが、お店にとってもいいことなのだろう。この段になってなお、男が振り向き、私の「1人目の客Tシャツ」を見て察して順番を交代してくれることを期待する未練がましい私。

 令和5年8月22日、壬生以上西院未満にオープンした「麺逢 KATAJIKENAI」の2人目の客は私です。このTシャツを着て2人目の客になるの、恥ずかしいです。

蠱惑暇(こわくいとま)

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贅沢な味でしたわ。

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