読書の記録 吉田篤弘『つむじ風食堂の夜』
月舟町っていう実在するかどうかも知らない町の十字路角にある「つむじ風食堂」。こういうとき、ネットで「月舟町」って検索するのは野暮なんでしょうね。と、思って今のところ検索してません。「つむじ風食堂」には無口な店主がいて、そこには常連客が何人かいます。ドラマティックな展開など何一つないんですが、主人公?の先生は「雨降り」のことを調べていて、物書きをしていて、学生時代は演劇をかじっていたらしく、同じアパートに住む女優の卵的女性には彼女が演じる一人芝居の脚本を書くようお願いされたりして。ありがちなドラマのように先生とこの子の恋物語に展開していくのかしらん?と思いきや、そんなこともなく、かといってなんとなく、そういうフラグが立ってるような立っていないような。なんというか、すごく読者を信頼していただいているといいますか、余白が多いんですよね。あとは、あなたたち次第です。みたいなところ、ある気がするな。ふわっとしてる。押し付けがましくないし、感動を押し売りしないし、なんにも起こらないし、そのくせ、懐かしさがあったり、どこにでもあるようだったり、おかしな世界のようでもあったり、でも、世界ってそういうもんよなーって納得してみたくなったりもする。こんなにふわっとしてるくせに、読んでたら、なんかふわっと泣けてくるから不思議です。
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