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読書の記録 夏海公司『はじまりの町がはじまらない』

 大垣書店の棚に並んでてむしょーに気になって気になって仕方なくて買いました。いわゆる「ジャケ買い」。こういう勘を大事にして生きたい。

 ロールプレイングゲームと思われるゲームの中の世界が舞台。ゲームの「はじまりの町」は冒険者がやってくることで潤うはずなんですが、その冒険者が最近全然やってこない。よくよく調べてみたら町を出て最初に遭遇するモンスターが強すぎてすぐ全滅してしまう、とか、設定されているミッションが難しすぎたり魅力的じゃなかったりして冒険者が集まってこないらしい。それなら町の在り方を「改善」して冒険者にとって魅力的な「はじまりの町」に作り直そうじゃないか、と真面目だけど頭の回転は十人並みの町長と毒舌の秘書官が奮闘する物語。ゲームの中の話かと思いきや、物語が進むにつれて、やがてゲームの外の世界、つまり、現実世界を巻き込んだ事件に発展していきます。

 っていう話を僕は幸い、子供の頃からドラクエやファイファンをやっていたからすんなり理解できたんですが、ゲームに親しんでいなかったら全く理解できなかったかもしれない。
 オール巨人が「最近の漫才がわからなくなってきた」とか、そんな理由で今年からM1の審査員を辞めるみたいですが、小説の世界についても、前提となる知識が無いとその世界観が全くわからないですよね。これから未来、どんどんと創り上げられていく新しい価値観を含むフィクションの世界を「理解」し続けるためには、現実世界で僕たちは、あらゆる方面にベクトルを向けて学びを怠ってはいけないのです。

 不惑を過ぎると勉強をやめる人と続ける人とで大きな差が出てくるように思えてなりません。その分岐路は分岐点ではちょっとした曲がり角だったとしても、そのまま進んでいくと、やがてとんでもない距離の開きになります。その距離の埋め合わせのために、勉強をやめたおじさんたちは「そんなこと知っても意味がない」「最近の若いやつはつまらない作品にばかり注目してオレたちが持ってるような品を持ち合わせていない」などとせせら笑って踏みとどまってるつもりになっています。そういうおじさんをたくさん知っていて、カッコ悪いことこのうえなし、と思っているので、僕はなるべくそうならないよう、勉強を続けたい。いつまでも小説を読むのを楽しみたいのだ。

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