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エッセイ『小鉄の視点、ジュニアの視点』

 うろ覚えで申し訳ないのですが、『じゃりン子チエ』で学芸会があり、チエちゃんとヒラメちゃんが劇の主役を担うことになりました。紆余曲折を経て、劇に対して前向きに取り組もうとするチエちゃんとヒラメちゃん。
 いっぽう、カルメラ兄弟の兄貴は、テツにどつかれるばかりの人生はもうごめんだと昼間から酒をあおり、悪酔いしている。
 かたや、明日に向かい健気な少女、かたや、憤懣やる方なく酒に逃げた酔っ払い、木の上から猫の小鉄とアントニオジュニアは、その人間模様を俯瞰しているのですが、小鉄からはチエちゃんたちしか見えず、アントニオジュニアからはカルメラ兄弟の様子しか見えません。同じ木の上から見ているはずの風景が見事なまでに対照的です。前述した通り、かなり曖昧な記憶をもとに書いているので詳細が間違っていたらごめんなさい。確か、この時、アントニオジュニアはノイローゼ気味だったため、健気なチエちゃんたちのことを見ようとせず、やけくそになっているカルメラ兄弟にシンパシーを抱いていたのではなかったかしら。

 東京電力福島第一原発の処理水放出の件が、人によって見解が違いすぎて何が正解なのかわかりません。人によって持っている情報が異なるため、見え方が変わるのだと思います。これなんかは、小鉄とアントニオジュニアそのものではありませんか。どっちが小鉄でどっちがアントニオジュニアか、とか、そういうことではありません。もちろん、どっちがチエちゃんたちでどっちがカルメラ兄弟で、という話でもありません。というか、見えているものは二つではなく無数にあります。
 センシティブすぎる問題ゆえ、相容れない意見は受け入れ難くなるのは致し方ありませんが、もう少し、お互いが何をどう見ているか、意見を擦り合わせることができないものかと思いますが、そんなことできるかアホ!という思いもある。もう少し信用に足る政府であればいいのですが。

蠱惑暇(こわくいとま)

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