800字エッセイ 書籍ドラフト会議
月に二回ほど東京へ行きます。食通でもないしお酒を呑みにいくとお金がかかるし、かといってせっかく東京に行くんだから東京ならではのことをしたいし、という私の欲望を満たしてくれるのが書店めぐり。といっても去年末に高円寺の蟹ブックスを見つけて以来、すっかりはまってしまい、東京へ行くたび、立ち寄っております。確か文學界だったと思いますが店主さんが書いた文章が載っていて、内容はあまり覚えてないんですが、すごく面白かったことを覚えていて、それは何というか、どんなことをしたりされたりしたか覚えてないけどめちゃくちゃ気持ちよかったセックスみたいなものではないのか、ちがうか、ま、ちがってもいいんですが、なんにせよ、そんなこともきっかけとしてあったわけです。小さいお店なんですが、入口のところから順番に本棚に並んでいる本の背表紙を眺めていくのが楽しくて仕方がない。毎度毎度、これ面白そうやな、買いたいけどお金が・・・、前に買うたやつまだ読めてないしな、でも欲しいな、こんな難しそうな本買ってもまたどうせ読まずに置いておくだけになってしまうやろ、でも欲しいねんな、こういうときは漫画やな、漫画ならすぐに読めるしな、あ、そういえばでも前に買った恩田陸編の少女漫画アンソロジーまだ読めてないな、あ、オレが買って売り切れたはずやのにまた置いてあるやん、などなど考えながら過ぎる時間がたまらなく好きなのです。
哲学、宗教、フェミニズム、文学、言語、科学、旅行、食、絵本、映画、芸能、漫画、その他いろいろ。各ジャンルに気になるタイトルが並んでおり、これ、ほんまに全部まとめて買うてしまえたらどれだけ幸せかと思うんですが、いっぽうで、数多の欲しい本リストの中から苦渋の決断で一冊ないし二冊だけを選ぶ、あの脳内ドラフト会議の時間も好きなんです。貧乏球団の我がチームでは、予算の都合で千五百円までくらいの本ばかり指名しがちです。
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