東京新宿宿泊日記
昨日東京入りしたので初めて渋谷のハロウィンを体感できるのではないかと思っていたら今年はハロウィンをやらないと知り、自分のタイミングの悪さに慄然とする。慄然の使い方が合ってるかどうかわからないが気分は慄然である。
今回の東京出張はいつもの歌舞伎町あたりのホテルではなく、都庁とかのあるあたりのホテルに宿泊させてもらった。
いつもアホの一つ覚えみたいに同じ居酒屋へ呑みにいくのだが、そのお店は歌舞伎町のど真ん中にあるし、今回泊まらせてもらうホテルからは遠いので、知らないお店に入ることに決めた。
私はそういうところであまり冒険をしない人間なのであるが、人並みに好奇心は持ち合わせている。こういうときに「ちょっと入ってみるか」と背中を押されがちになるのはやはり非日常たる旅先においてなのである。
何通りかわからないが京都ではなかなかお目にかかれないレベルの大通り(堀川通りより大きい)沿いにホテルはある。そのホテルから歩いて5分ほどのところ、大通りから少し混み入った細い路地に入ったあたりに見つけた居酒屋が店頭に置いてあるメニュー表を確認してみると、どうやらいつも行ってる呑み屋と同程度のコストパフォーマンスであったので入ってみることにした。
「とりあえず生」を注文してしまうと想定以上の代金になってしまうのを私はこれまでの経験で知ってしまったから、最初からホッピーセットにしておく。
アテは「串焼き8本盛」900円である。これでホッピーの中のお代わり3杯ほどが私の飲み代一回分の限界である。これ以上やると後悔が先にやってきてしまう。この程度の人間でよかったと思う。振り返れば学生時代は仕送りに加え、アルバイトで稼いだ金があったから時間さえあれば酒を呑みに出かけた。制限がなければ私はいつでもあの堕落に自ら飛び込みにいってしまう。今くらいがちょうどよい。
串焼き8本は全て表面が黒く焦げていた。中まで火が通っているか心配な人が陥りがちな初歩的ミスである。親近感は持ったが好感は持てないという稀有なパターンであった。
呑み屋で使う金を抑えても結局ホテルでは呑んでしまう。いや、呑み屋で使う金を抑えなくとも結局ホテルでは呑んでしまうのだから呑み屋で使う金は抑えたほうがマシなのだ。
串焼き8本しか食わなかった分、コンビニではおにぎりとチキンとカップ麺、それに缶の緑茶割りを2本買ってチェックインする。
いつもとは違うこのホテルは部屋で映画が観られるらしいからスーパーマリオの映画を観ようとしたら有料のチケットが必要だったのでやめる。いつもは呑んでも読める東野圭吾を携えているのだが今回は持ってきていないので、テレビのチャンネルを換えていたら日本シリーズをやっているではないか。
先日のDeNAの東投手がお客さんの指笛に気が散って投球できないという例のあれに関してソフトバンクの小久保監督がバカにしたように大爆笑をしただとか、ソフトバンクの村上コーチが東投手のことをオリックスの宮城投手のほうが上だと発言しただとか、真偽のほどは定かではないが、一連の報道を受け、小久保&村上コンビに相当立腹していた私は全力でDeNAを応援した。ソフトバンク先発の大関投手に対し、DeNAはレギュラーシーズン3位とは思えない横綱相撲で圧倒し、筒香選手のタイムリーや牧選手のホームランなどで序盤で点差を付けたDeNAが最後まで気を抜くことなく完封勝利をおさめた。酒の勢いもあり、一人部屋には私の汚い罵詈雑言が響いていた。巨人が大嫌いでいつも巨人を罵りながら野球を観ていた父親みたいだと思った。いまは密室の汚い言葉がそのままネットに上がりすぎる。
実にせいせいした私は気分がよくなり、再び階下のコンビニへ降り、緑茶割りを2本とアイスクリームを購入し、DeNAの勝利に祝杯をあげた。気持ちのいい勝利であった。
DeNAの勝因の一つとして専門家の皆さんは誰も言わないが、小久保&村上コンビの不用意な発言があるのは間違いないと思う。スポーツにしろ何にしろ、魂でやるものである。神経を逆撫でされたときの底力がDeNAナインを鼓舞したのではあるまいか。そういう物語をでっち上げたくなる程度には私は弱者サイドの味方である。
呑み屋で使った金よりもホテルでの飲食代のほうが高くついてしまった。せっかく東京までやってきているというのにアホみたいである。次こそは節約を、次こそは節約を、と思い続けてもう丸三年が経ってしまった。どうしようもないアホであるが少しくらい甘やかしてやりたい。私は弱者サイドの味方である。
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