小麦パラドックス:長生きしたけりゃパンを喰え【怪談・怖い話】
セイスケは町で名高い健康オタクだった。
小麦製品を徹底的に避ける彼の生活スタイルは、周りから一目置かれていた。たしかに、本屋にいけば、小麦を食べると死ぬ!といわんばかり勢いで小麦の害を警告する本で溢れている。
そんな、友人のサスケも彼の影響を受け、ある程度パン類を控えるようになっていた。
ある日、サスケはセイスケに尋ねた。 「お前さん、パン類は一切食べないんですか?」 「もちろんです」と答えたセイスケ。
しかし、その夜、サスケは偶然セイスケの家に立ち寄り、衝撃的な光景を目にした。セイスケが一人でパンを頬張っていたのだ。
サスケはその場で問い詰めるのをやめ、静かに退散した。理由がどうあれ、友人に嘘をつかれたことに動揺を隠せなかった。そしてその出来事から一週間後、サスケは街中の人々に、セイスケの正体を暴露してしまったのだった。
「あの健康オタクのセイスケ、実は夜な夜なパン食べてるんだってよ!」
聞き手たちは驚愕の表情を浮かべ、ほどなくセイスケを見つけると、一斉に詰め寄った。
「嘘じゃないか!セイスケさん。まさか夜中にパン?」
「欧米か!」
「小麦製品は体に悪いって言ってたくせに!」
「ダブルスタンダードかよ!」
セイスケの額に大粒の汗が浮かんできた。周囲の目は非難の眼差しに満ちている。否定しても無駄とあきらめたのか、セイスケはこう切り返した。
「そうです。私は夜中にパンを食べています」
一同、思わず息を呑んだ。何と恥知らずなことを言うのだろう。
しかしセイスケの次の言葉は、予想外のものだった。
「これは新しい健康法なのです」
サスケをはじめ、周りの者たちは一斉にズッコケた。
「夜中にパンを食べると、罪悪感からカロリー消費量が増えるのです」
セイスケの、ひゆろゆきの詭弁も上回るとっさの屁理屈に、皆が目を見開いた。
「昼間は当然パンを控えています。しかし夜中の空腹に負けパンを食べると、翌朝には大きな罪悪感が生まれます。罪悪感が体内のストレスを増大させ、それが脂肪を燃焼させるのです。適度な罪悪感は健康には欠かせませんよ」
セイスケは得意気に言い放った。周囲は混乱と戸惑いの表情で互いを見合わせた。やがて、それは嘲笑に変わった。
しかしセイスケはゲラゲラと笑い出した。笑いたい者は笑えばいいさ、と。
彼の高笑いは、皆がひくまで止まなかった。
彼の奇妙な矛盾した言動にはそういう深い理由があったのだ。
世の中には、まだまだ分からないことがたくさんある。
そう考えさせられた出来事だった。
56:名無しさん
セイスケくんの健康法を批判する前に、一度検証してみるのも面白いかもしれませんね。私も実は夜中にこっそりお菓子を食べることがあります。するとその後に強烈な罪悪感にさいなまれ、翌朝は水分を多めに取り体重が減っていることが多々あります。
もしかするとセイスケくんの言う通り、罪悪感が新陳代謝を高めているのかもしれません。人間には不思議な生理的メカニズムがまだ隠されている可能性があります。
我々は昔から健康のためになら若干の嘘は許されるものと言われてきました。自分の実体験から言えることは、嘘をつくと内心で罪悪感を感じ、そのストレスが代謝を上げるのかもしれません。
57:名無しさん
嘘は健康に良くないですね。でも、セイスケくんの新しい健康法は面白いです。罪悪感でカロリーを燃焼させるなんて、斬新な発想ですね。確かに深夜にパンを食べれば、朝には大きな罪悪感があるかもしれません。
罪悪感は自分を責める心理的なストレスだと思うので、ストレス反応として新陳代謝が活発になるかもしれないですね。私も昨晩つい甘いものに手を出してしまい、今朝は申し訳ない気持ちでいっぱいです。つまり、罪悪感があります。このままだったら健康になれるかもしれません(笑)
健康のためなら、嘘をつくのも許される気がしてきました。適度なストレスは健康に良いと聞きますからね。セイスケくんの健康法は試す価値があるかもしれません。
58:名無しさん
セイスケさんの新しい健康法は面白いですね。でも、私には理解できません。嘘をついて罪悪感を感じるのは、心にも体にもよくありません。ストレスは免疫力を下げ、さまざまな病気のリスクを高めます。健康のためなら、嘘はいけません。
むしろ、正直に生きることが一番大切だと思います。罪悪感を感じないよう、正々堂々と過ごせば、心も体も健康になれるのではないでしょうか。
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今後とご贔屓のほどお願い申し上げます。