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残酷で優しい父との約束。

今はもうこの世にいない父が、私がこんなことを今でも思っていると知ったら、怒ったり困ったりするかもしれない。

父は姉に関して私に約束したことがある。母も、姉も知らない父と私だけの約束。でも父も最終的には忘れてしまったのかもしれない。その約束は守られることはなかったのだから。

私が死ぬ時は、さっちゃんも連れていくからね。
あなたはさっちゃんの心配をしたり、面倒をみなくて大丈夫。

父は(今思えば)、私のことをとても考えてくれ、優しい親だったと思う。約束を破られたと記憶も残っていない。でも、この約束は守ってくれなかった。私の人生とって一番重要な約束。

結局は守られなかったけれど、こんな約束を父が私としていたこと。
母や姉が知ったらどう思うのだろう。

他人が聞いたら残酷だと思うかもしれないこの約束。
でもいくら残酷だと言われようと、これまでの私の人生の中に度々訪れた深い絶望の中で、この約束が一筋の光となった記憶がある。父が約束を破って、一人旅立つまでは。

この残酷な約束をしないで人生を生きれられるほど、私は優しく、強くなかった。それは私が悪いのだろうか、それとも生まれた環境が悪いのだろうか。誰もその答えはわからないし、私は死ぬまでこの問いに苦しむだろう。

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