sorahoshitsuki

家族が余命宣告を受けた。 ごちゃ混ぜの感情。葛藤。 そして明るい未来へ。

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家族が余命宣告を受けた。 ごちゃ混ぜの感情。葛藤。 そして明るい未来へ。

最近の記事

残酷な妹、それが私。

「なんで生きてるのよ。死んでよ」 姉にそう言ったことがある。 ソファに座り、姉はじっと絨毯の一点を見て、時々私の方を怪訝にちらっと見る。 その、私の様子を伺う視線が、私をさらにいらつかせた。 ソファのそばの、ダイニングテーブルの椅子に座った私は、姉を睨みつける。 「あんたがどんだけ私の人生をだめにしてるかわかってるの。 お願いだから死んでよ、ねえ」 姉はじっと一点を見ている。 「ねえ死んでよ、お願いだから」 何度もそう言った。 姉は黙っていた。 なんて残酷な妹なんだろう。

    • 思い出せない理由

      現実の生活が辛くなると、自分にする質問がある。             「人生を好きな時点からやり直せるとしたら、いつからやり直しますか」    j 人生を好きな時点からやり直せるとしたら?                「仕事に邁進していた時(もっと自分の私生活を優先していたら…)」    「就職する時(もっと良く考えて会社を選んでいたら…)」         「大学受験する時(もっと良く考えて学部を選んでいたら…)」        「中学生の時(もっと自分の将来を考えて

      • 母は私に何も言わないけれど。

        「もうだめかもしれないわね」 母が電話口で、力なくそう言った。 2、3日前にLINEで姉とビデオ通話した私。 元気ではないけれど、低め安定しているように見えた姉の様子に、 私は母の言葉を話半分で聞いていた。 でも、母がそう言った頃から、姉の体調が急変した。 子どもの母親に対して、お医者さんが良く言う言葉。 「お母さんが子どもを見て、”いつもと違うな”と思った時、発熱など具体的な症状がなくても病院に行った方が良い」 お医者さんの言葉の通り、子育てをしていると、「なんかこの子

        • 父と伯母が呼んでいるのかもしれない。

          旅立つ準備を静かに始めてしまった姉を見ていると、空に先にいっている父や伯母が早くこっちにおいでよ、と姉を呼んでいる気がしてならない。 この二人は、手放しで姉を可愛がっていた。この世で一番可愛がっていた。 母や私が時に自分の感情を抑えられなくなり、 残酷で厳しい言葉を姉に投げてしまうことがあっても、 この二人はそういったことはなく、深い愛情で姉を包んでいた。 姉も二人を非常に慕っていた。 父と伯母が呼んでいるのかもしれない。 姉の面倒を見ている母も高齢になってきたし、 妹の私

        残酷な妹、それが私。

          姉は静かに準備をしている。

          姉は静かにこの世を去る準備をしている。 最近はしゃべることもほとんどない。ソファに座り、テレビを眺めている。 あれだけ食いしん坊だったのに、今ではほとんど食欲もない。前は「何か食べたい?」と聞くと甘いものを何種類もあげていたが、「今は特にない」という返事が返ってくるだけだ。 ただ食欲がないことが苦痛ではないようで、本当に自然に身体が食べ物を欲していないように見える。 身体が、「もう食べる必要はないんだよ」「もうしゃべる必要はないのよ」「もう何も考える必要はないんだよ」とサイン

          姉は静かに準備をしている。

          この世で一番怖いもの。

          この世で一番怖いもの。 それは、プライベートアドレスに届く母からのメール。 メールボックスを開き、母からのメールが届いていると、 私の気持ちは重い鉛をつけられたかのように、どんよりとゆっくり沈んでいく。 姉の病状、そしてそれに対峙する自分がどれだけ辛いかが書かれたメール。 他人をも自分の辛い状況に引きずりこむような、読む人の気持ちを全く考えないメールに、私は返信する気力をなくす。母の気持ちを受け止めてあげられなくて、悪い娘だとは思うけれど。 悪い娘だと思う一方で、家族のことで

          この世で一番怖いもの。

          残酷で優しい父との約束。

          今はもうこの世にいない父が、私がこんなことを今でも思っていると知ったら、怒ったり困ったりするかもしれない。 父は姉に関して私に約束したことがある。母も、姉も知らない父と私だけの約束。でも父も最終的には忘れてしまったのかもしれない。その約束は守られることはなかったのだから。 私が死ぬ時は、さっちゃんも連れていくからね。 あなたはさっちゃんの心配をしたり、面倒をみなくて大丈夫。 父は(今思えば)、私のことをとても考えてくれ、優しい親だったと思う。約束を破られたと記憶も残って

          残酷で優しい父との約束。

          母はそう言うけれど。

          2022年3月2日(水) 会社からの帰り道。母に電話をかける。 母の精神状態が心配なのと、姉の様子を聞くために。 姉はますます食欲がなくなり、食べても吐きそうになってしまうらしい。 それは当然のことだよね、昨日医者に、あなたの余命は後少し、体が動かなくなってきて一日中寝ているようになる、他人に世話をしてもらわないとならなくなる、最後はどこで迎えたいですか、心臓が止まったら延命しますかしませんか、と言われたのだ。 私でさえ食欲がなくなっている。本人はもっと辛いよ、きっと。 さ

          母はそう言うけれど。