見出し画像

母は私に何も言わないけれど。

「もうだめかもしれないわね」
母が電話口で、力なくそう言った。
2、3日前にLINEで姉とビデオ通話した私。
元気ではないけれど、低め安定しているように見えた姉の様子に、
私は母の言葉を話半分で聞いていた。
でも、母がそう言った頃から、姉の体調が急変した。

子どもの母親に対して、お医者さんが良く言う言葉。
「お母さんが子どもを見て、”いつもと違うな”と思った時、発熱など具体的な症状がなくても病院に行った方が良い」

お医者さんの言葉の通り、子育てをしていると、「なんかこの子いつもと違うな」と嫌な予感がする時がある。そういう時はやっぱり後から熱が出た…なんてことも多い。
とはいえ、それも子どもが狭い世界で生きている期間だけで、
外の世界との関わりが強くなっていく成長の中で、母親の子どもに対する予感力は弱まって行くのでは、と感じていた。
でも実は、その予感力は親そして子が空に旅立ち、関係性がこの世から消滅する時まで続くものなのかもしれない。母の姉に対する予感にそう思った。

うちの母と姉にはその特別な関係性はもちろんあり、
姉には事情があったから、その関係性は複雑でややこしいものだったろう、と想像する。

母は私に何も言わないけれど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?