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順心翁八十歳の頃の、私の日記

うれしい!!

たった今お帰りになったんですが、諏訪に伝承された甲陽の柔術を継承しておられる宮川順心翁が、数か月ぶりに当館を突然のご来訪!

………実は重病を患われて、去年の暮より入退院を繰り返されていた翁でしたが、病院の面会は謝絶、いつごろからお会いできるかもわからないまま時が過ぎておりました。
それだけに、玄関に迎えてびっくりしている私をよそに開口一番・・・

『渡していた覚書をもう一度戻してもらえないかね?入院中に一つの技の変化をいちいち思い返していたら、それを全部書き留めてあなたに残してゆかなくては、と思ったんでね。』

と仰って、『小手を返すこと一つとってみてもねえ・・・』
するりするりと10種類以上の大変に危険な実戦技法を、それも玄関の石畳で掛けまくって、『じゃあ、稽古を復活させるために一から丹田をこしらえているから、また再来週楽しみに待っているよ!』と、言い残すと嵐のように去って行かれました。

相も変わらない見事すぎる進退に、またしても先をとられながらも、山のほうまで続く一本道に車が消えるまで見送ると、一瞬於いて大笑いがこみ上げてくるのでした。

嗚呼!素晴らしき哉!八旬の老翁、病膏肓に入ると雖も、刻苦を娯楽となし遂には病を朋と成す。
病床にても刻まれし順心の技忘れ難く、痩身に覇気満てり。
娑婆に戻りて仏に会えば仏を捻り、松凬来れば手振り棚引き、八つの峰へと吹き飛ばすなり!!快哉!善哉!!

来月からまた生傷の絶えない日々が始まります(^◇^)ゞ

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