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【文語定型詩】変わり果てし故郷

「変わり果てし故郷」

懐かしき思い出積もるわが故郷
久方ぶりに帰りてみれば
どこもかしこも荒れ果てり
皆で集いし学び舎は
在りし日々の証さえ
ひとつ残らず消え去れり
帰り路にいつも寄りし駄菓子屋は
太陽を電気に換える無機質で
無骨な板となり果てつ
我住みし人生の春の黎明の
果てしなき日々の連なりの
思い出薫る我が家には
人気もなしに花さえ咲かず
なにゆえに我が故郷の風景は
かくも無惨に変わり果てりや
我ただ一人自問せり

時遡り
青雲を追いしあの頃は
この地をただただ離れまほしき
我が夢と
金と名誉と文明の
甘き果実をただ求め
何もなくただ生まれしのみの
この地など惜しまず去るに任せたり
親族の我引き留むる言葉にも
耳を貸さず旅立てり

都にて
我は科学を信奉せり
文明が必ず人を幸せに
すると信じて励みたり
退屈で不便で刺激もなき故郷
かの地を笑い蔑みて
我はひとり励みたり
ただひたすらに求めしは
誰も彼もが欲しがりし
光輝く
文明の利器なり

されど今
我の心に残るのは
胸刺す後悔の痛みなり
我が発明
暮らしを便利にしたれども
終に幸せ生まざりき
文明に頼りし人の心には
人を助くる優しさも
自然を愛する優しさも
どこ吹く風かと軽んじて
跡形なしに失われり

荒れ果てし
見るも無惨な
故郷よ
汝見捨てし
我を許せ
限りなく
生命湧き出づ
この森の
真の価値を知らずして
見限り金と名誉とを
求めし我を笑いたまえ
我は今
汝が宿す真の価値
ようやくここに見出だせり

歴史はいつも何度でも
同じ過ち繰り返し
果てなき円をぐるぐると
休むことなく廻りたり
さればこそ
我が今生の過ちを
ゆめゆめ忘れず記録して
かすかな記憶残りたる
我が学び舎が在りし場に
汝が真価を
深く刻めり


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