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私は、あなたのことが好きです。 休みの度に、会いに来てくれるあなたが好きです。 何の力もない私のことを、好きだと言ってくれるあなたが好きです。 あなたがどこに住んでいるのかは、知らないけれど。 あなたが普段何をしているかは、知らないけれど。 あなたがどんな姿をしているのか、知らないけれど。 あなたがどんな声をしているのかは、知らないけれど。 だから、無理だと思ったら、止めてもいい。 だから、疲れたと思ったら、休んでもいい。 だから、泣きたいと思ったら、泣いてもいい。
今日は中秋の名月。 空を見上げると快晴。雲はほとんどない。青い空のあちこちを飛行機が飛んでいた。数えると3機も。飛行機から下を見下ろしたとしても、まぁ、自分のことは見えないだろう。遮る雲がなかったとしても。 道の真ん中で、360度回ってみたが、月はまだ上がっていないのか、たまたま雲の後ろに隠れているのか、見つけることができなかった。風の強いのが気がかりだが、このままいけば、今日の夜は月見が楽しめるはず。 幸いというべきか、家族は仕事で帰りが遅いという。そういう日は自分で
イメージ:赤 目の前が真っ赤に塗り潰されている。何度瞬きしても、目に映るものは全て赤い。瞬きを我慢して、何とか涙を絞り出して、この赤を消そうとしてみた。でも、涙が出なかった。 「何なのこれ。」 そう呟いたつもりだったけど、声が出なかった。口は開くのに、なぜだろう。よくよく目を凝らすと、私の目に赤以外の物体が映っていないことに気づいた。私は空を見つめていた。本来は青いであろう空を。 私の背中は何か固いものに当たっている。つまり、私は寝転がっているんだ。起き上がろうと体を
今夜は満月。 6月の満月は、「ストロベリームーン」といって、好きな人と一緒に見ると、その恋が成就するらしい。 マンションのベランダから、端が朧な満月が見えた。雲が薄くかかっているのだろう。 僕の好きな人は、手の届かない遠くにいる。 最後に会った時、お互いこれからも頑張っていこうと理由をつけて、手を差し出した。彼女は戸惑っていたけれど、差し出した手を強く握ってくれた。 あのまま、掴んだ手を自分に向かって引き寄せていたら、君は僕の隣にいたのだろうか。 いくら月を見上げて問
【SS】ずっと側にいる。(チョウ) 「その肩に止まっているの何?」 「たぶん蝶。」 自宅に遊びに来た彼女に尋ねられ、僕はそう答えた。 僕の肩には、綺麗な揚羽蝶が、羽を閉じて休んでいる。 「いつから、いるの?」 「・・気づいた時にはいたとしか言えない。」 そう答えつつも、気になり始めたのはここ数日だ。 昼間は、自分の周りをふわふわと飛んでいることが多い。夜が近づくと、肩に止まって休み始める。風呂だったり、寝ている時は、いつの間にか消えている。 自分以外の人間が、蝶を認識し
「先にお飲み物お伺いしましょうか?」 店員が席に着いたスーツ姿の男女に向かって、問いかける。 2人はメニューを眺めた後、男が店員に向かって、口を開いた。 「水、麦芽などのデンプン源、酵母、ホップなどの香味料といった原料から作られ、主に大麦を発芽させた麦芽を、酵母によりアルコール発酵させて作る製法が一般的である飲み物をお願いします。」 次は女が店員に向かって言葉を紡ぐ。 「リキュールベースのカクテルで、クレーム・ド・カシスを30ml~45ml。オレンジジュースを適量。タ